いったんコメ不足は解消、しかし今後も不安要素が…
最近暑さも和らぐ日が増えてきて、ようやく秋らしく感じるようになり、田んぼでは稲刈り作業も見られてきました。ただ、この8月から9月にかけては「令和の米騒動」と呼ばれるほど、コメ不足が叫ばれました。10月22日放送『つボイノリオの聞けば聞くほど』(CBCラジオ)では、あらためてコメ不足とは何だったのか、パーソナリティのつボイノリオと小高直子アナウンサーとともに振り返ってみました。
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昨年の米の作況指数は新潟や秋田などの米どころで平年を下回っていましたが、他の地域ではほぼ平年並み。
ではなぜ米不足が起きたのかといいますとさまざまな要因があり、インバウンドによる需要が増えたことや、南海トラフ地震臨時情報で防災備蓄が呼びかけられたことによる買い溜めも重なって、店頭で品薄となりました。
農林水産省が発表した2024年産のお米における9月の相対取引価格は2万2千700円と、過去最高を更新し、2万円を超えたのは初めてとのこと。
2023年産のお米では9月の相対取引価格は1万5千291円と、1年でかなり価格が上がったことがわかります。
コメ不足の予兆はあった
まずは、知多半島でお米の生産販売を行なっている50代の方のご意見です。
「米騒動や米不足に関して昨シーズンの収穫量は少なかったが、今まで米余りと聞いていたので、まさかスーパーが欠品するまでとは思わなかった。
ただ、(2023年の)年末ぐらいから今までお付き合いのなかった米卸業者から販売してくれないかという話が来たりしていたので、米卸業者のほうではある程度想定していたのかもしれませんね。
ただ、卸の買取価格はずっと右肩下がりで来ていたので、昨シーズン分もかなり安い値段で販売していました。
今回の米不足は業務用のお米はストックがあったのですが、スーパーに並ぶ一般消費者向けのお米が在庫切れを起こしたんじゃないかと思います。
外食チェーンでお米がないというのは聞いたことがないし、お米を使った惣菜は売っていたので、たぶん、そういう状況だったと思いますよ」(Aさん)
農家にとってプラス?
実は今年の初めには米不足の予兆があったようです。
次に生産者としてのご意見を伺いました。
「消費者はお米の価格が上がると困ると思いますが、資材や機械がずっと値上がりしているので、お米の価格だけが現状維持というのは農家にとっては厳しい状況です。
これを機に販売価格をおよそ8%上げました、20年ぶりの値上げです。
今後どうなるかわかりませんが、値段が上がったことで米農家の経営が少し楽になったと思います」(Bさん)
コメの見方が変わった
次に三重県で稲作を中心とした農園を営む30代男性のご意見。
「テレビなどの情報によって、かなりみなさん揺さぶられたように感じる。稲刈り前に米が少なくなるのはふつうのことだし、お米がまったくゼロになることはないはず。
野菜とお米がスーパーから消えただけじゃないかな?
これを機会にわれわれのような生産者から直接消費者へ販売しているような、スーパーより少し高いうちのような米を知ってくれた。
米を選ぶようになると、しっかり情報発信やブランディングをしてきた農家の方が、比較検討をした際に勝てるので良い機会でした。
今まで米は買ってあげるというか、どこにも米があるので消費者の方が強い印象でした。
しかし今回、買わせてくださいという状況になったので、初めてお米について興味を持ったり見え方が変わった印象を感じます」(Cさん)
コスト上昇の問題
では、今回の米不足で農家の方は収入が良くなったのでしょうか?
「直接消費者へ販売しているケースでも、そこそこしか儲からない。結局、他の事業(農作体験や農泊など)と複合化して収益化しています」(Dさん)
予想以上に儲からないのは、コストがかかっていることが原因のようです。
神奈川県で果樹と稲作の兼業農家を営む両親の仕事を休日に手伝っているという50代の方のご意見です。
「我が家に稲を刈り取る農機はありません。JAなどに借りたり、刈り取り作業をしてくれる人を頼んで収穫しています。
数年前までは1セット1千万円ぐらいだった値段が、今は2千万円ぐらいしないと買えません。お米を作るために全部揃えるのは割に合いません」(Eさん)
実は米作りは赤字だそうですが、この方は代々続けている米作りを自分の代で終わらせるわけにはいかないと思い、続けられているとのことです。
農機具が高価な要因
なぜこんなに農機具が高価なのでしょうか?
その理由は、一般的な消費財とは異なり、需要が一定ではない上に季節が偏っているために年間を通じて大量製造ができないため。
そもそも農機具を必要とする農家も減少しているため、国内向けの出荷数が減ることで価格が上がるという悪循環となっています。
米不足は消費者にとっては大変な問題でしたが、米の必要性を感じることで、農家の減少や後継者問題などの問題をあらためて認識する機会となったようです。
(岡本)