下積みに1年 華やかなイルカショートレーナーの舞台裏
水しぶきと、鳴りやまない歓声が響く水族館の花形イベント、イルカショー。見る人の心を打つのはイルカだけではありません、エスコートするトレーナーが必要です。東海地方で人気の水族館に入社した、新人イルカトレーナー三好寧々(みよし・ねね)さん(20歳)は、一人前になるため日々努力中です。華やかなショーの裏側にある新人の日常を取材しました。
人気のイルカショーの新人担当が登場
三好さんが入社した愛知県美浜町の「南知多ビーチランド」は、およそ270種、15,000匹の海の生き物が展示されています。中でも人気なのはペンギン、アザラシに、アシカなど、
さまざまな動物との「触れ合い」がウリの体験型水族館です。
年間来場者数はおよそ45万人。そのほとんどがお目当てにしているイベントがイルカショーです。1980年の開園初日から現在まで続いています。
南知多ビーチランドのイルカショーは、観客との距離が近いのが特徴で、最前列の席は、なんと柵の目の前という近さ。
特に先着順で座ることができる最前列から手前3列のオレンジシートと呼ばれる席はイルカが跳ねた水しぶきでずぶぬれになりますが、子どもたちに大人気の特等席となっています。そんな南知多ビーチランドにイルカ担当スタッフとして入って来たのが三好さんです。
下積みに1年かかるイルカトレーナー
三好さんは、現在10人となったイルカ担当スタッフの新人として朝8時過ぎには一番乗りで準備。現在飼育しているイルカ14頭分のエサ、およそ180キロの魚をバケツに分けて1階倉庫から、イルカプールがある2階まで階段で運びます。バケツは重いもので8.5kg。時にはバケツ4個を持って階段を駆け上がります。
朝イチのエサの準備が終わった後は、先輩たちがイルカの体温測定などを行っているのを後ろで観察しています。
イルカの体重は300kgくらい。イルカにとっての遊びの行動が一歩間違えば大きな事故につながることがあります。イルカを扱えるようになるには観察からスタートして、徐々に関りを持っていき1年程度のしっかりした下積みが必要とのこと。そのため三好さんは、イルカショーの音響担当やふれあいイベントのお客さんの誘導・写真撮影係をしています。イルカに触る仕事はまださせてもらえません。
三好さん「早く先輩達みたいに(イルカと)一緒にやりたい」
昼休みに自主的にイルカに会いに行っては、特徴や性格などを覚え、ノートにまとめる毎日です。
ひとつずつ壁を越えて一人前を目指す
ある日、先輩から「イルカショーが始まる前の案内をやって欲しい」と新たな仕事を任されることになりました。
ショーの注意事項を伝え、プールに近い席のお客さんに水がかからないためのポンチョなどを販売する重要な役目です。先輩からは4日でマスターすることを目標として課されます。
先輩のお手本を見て練習し、台本を言いやすいようにアレンジして手書き。先輩たちにアドバイスを求めて広い会場全体に思いを伝えるための「立ち振る舞い」や「話し方」を学びます。
4日間の猛特訓を終えて迎えた本番。注意事項の連絡はスムーズに完了し、お客さんをシートに誘導、ポンチョも笑顔と元気で販売できました。
三好さんにとっての理想のトレーナーを聞いてみると、
三好さん「動物話すことができないので、しぐさなどをしっかり観察して動物が伝えていることに気づいてあげられるトレーナーになりたい」
念願だったイルカトレーナーになるために走り出した三好さんは、笑顔でしっかり前を見据え答えてくれました。
CBCテレビ「チャント!」4月11日の放送より。