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『科学』と『学習』の思い出~魅力ある付録たちに胸をときめかせた小学生時代

『科学』と『学習』の思い出~魅力ある付録たちに胸をときめかせた小学生時代
「リコーダー(学習の付録)」:筆者所有

新年度がスタートしたこの時期に懐かしく思い出すのは、学研(学習研究社、現・株式会社学研ホールディングス)の雑誌『科学』と『学習』である。発刊は『学習』が先で、会社創立の1946年(昭和21年)、その後『科学』が発刊されて、2つの学習雑誌が並び立った。

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購読どちらを選ぶ?

『科学』と『学習』は、小学生向けの学習雑誌だった。『〇年の科学』『〇年の学習』と各学年別に出版された。「科学」は理科系、「学習」は文科系の内容で、小学生にとっては本の内容もさることながら、その付録がお目当てだった。

筆者が小学生だった時代、1960年代後半から70年代前半(昭和40年代)には、学校を通して購読の申し込みをして、来校した業者から授業後に受け取っていた。『〇年の科学』にするか『〇年の学習』にするか、両方というのは贅沢でもあり、新年度の最初には選択に迷った記憶がある。

『科学』の付録~アリの観察セット

どちらかと言えば『科学』の方が、その付録に魅力があってか、クラスでも購読する友が多かった。理科の実験や実習に関わるような、小学生にとって胸をときめかす付録が多かったからだ。真っ先に思い出すのは「アリを観察する」セットである。厚さが薄いプラスチックのケースに土を入れて、つかまえてきたアリを入れて飼い始める。餌も用意する。日が経つとアリが土の中に巣を作る姿が日々観察できるというものだった。ただ、透明のケースに光が入って明るいためか、肝心の巣作りはあまり進まなかった思い出がある。

手元に残る「植物採集セット」

「植物採集セット(科学の付録)」:筆者所有

筆者の手元には、付録のひとつ、植物採集に使う細長いスコップが現在も残っている。普通の幅のスコップと違い、植物の根っこを掘り起こすのに適した形状をしていて、半世紀以上たった今でも十分に“現役”である。この他、「昆虫採集セット」や「鉱石セット」もあった。色とりどりのインキを混ぜていく実験セットにもワクワクした。小さなドーム型の「プラネタリウム」が付録だった時は驚いた。天球の形をしたセルロイドの上に星座が描かれていて、そこの“星”に針で穴を開けていく。台座には豆電球が付いていて、電池を使って点灯させると周りを囲った紙製のドームに星座が浮かび上がるという仕掛けだった。

『学習』の付録~楽器の数々

「高学年では横笛も登場(学習の付録)」:筆者所有

『学習』の付録は、いかにも文科系だった。社会科に関連したものでは「地図記号セット」や「マップメーター」、国語系では「ことば辞典」などがあった。筆者が所有しているものは「リコーダー」である。ケースには『4年の学習』と書かれている。もうひとつ「横ぶえ」も手元に残っている。『6年の学習』の「進級お祝い号」と表示があるから、上級生になると付録もレベルアップしていたことがうかがえる。こちらも半世紀以上たっても、その音色は健在である。吹いてみると“昭和時代の笛の音”が流れてくるようだ。

そして歴史は幕を閉じた

『科学』と『学習』には、授業で使う教科書とは違った楽しさがあった。株式会社学研ホールディングスのホームページによると、1979年(昭和54年)には2冊の合計発行部数が670万部になった。その後は少子化の影響もあったのだろうか、2009年(平成21年)に休刊となって、歴史にピリオドが打たれた。

復活!大人向けの『科学』

しかし、そんな頃に『科学』が大人向けになって出版された。その名も『大人の科学マガジン』。付録は本格的で、ピンホールのカメラ現像セットや万華鏡など多彩だった。2005年(平成17年)に発売された「プラネタリウム」の号を書店で見つけ、思わず購入した。値段は2,000円余りしたが、子どもの頃に小さなプラネタリウムを作った“大人”としては見過ごすことはできなかった。

組み立てた投影機は、街にあるプラネタリウムを小型にしたような本格的なもので、自宅の部屋を暗くして、天井や壁に映し出してみた。真っ暗にならない環境もあって、すべての星座が鮮明とはいかなかったが、“大人心”にもワクワクさせられた。

『科学』と『学習』というシンプルなネーミング、そして魅力的な付録たち。戦後ニッポンの子どもたちの歩みに、確かな足跡を刻んだ学習雑誌の代表格だった。懐かしい“記憶遺産”である。そして、それを手にした時のワクワク感は大人になった今なお続いている。

【東西南北論説風(577)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※『北辻利寿のニッポン記憶遺産』
昭和、平成、令和と時代が移りゆく中で、姿を消したもの、数が少なくなったもの、形を変えたもの、でも、心に留めておきたいものを、独自の視点で「ニッポン記憶遺産」として紹介するコラムです。

<参考>株式会社学研ホールディングス公式ホームページ「科学のふろく」「学習のふろく」

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