大学NO.1右腕の中西聖輝投手を単独指名!井上竜は2年連続の満点ドラフト
派手なガッツポーズの見せ場はなかったが、大成功のドラフトだった。ちょうど1年前、4球団競合の金丸夢斗投手の指名権を獲得し歓喜の井上一樹監督だったが、2025年(令和7年)も欲しかった即戦力投手の単独指名に成功した。(敬称略)
大学NO.1右腕を単独指名

ドラゴンズの作戦勝ちと言えようか。10月23日のドラフト会議では、青山学院大学の中西聖輝投手を1位指名し、他球団の指名がなかったため単独で交渉権を獲得した。「競合必至」と言われていた大学球界屈指の右腕、早くから指名候補にリストアップしていたドラゴンズにとっては「してやったり」だろう。
中西投手は、智弁和歌山高校時代はエースとして夏の甲子園で優勝。さらに青山学院大学では、2年と3年の時に全日本大学選手権で連覇。高校でも大学でも、エースとして日本一になった好投手である。「勝ち」を知っていると言えよう。それも「頂点」を。
指名選手は最後まで秘密

当初は、ドラフト会議前日までに、指名選手を公表したい意向を示していた井上監督だったが、結果的には「投手でいきます」と明かしただけで、ドラフト会議に臨んだ。それで正解である。今回は3つの球団が、事前に指名選手を公表したが、1位指名が入札制度になってから、ドラフトは“駆け引きの場”である。指名する選手を事前に公表することも、「どうしても欲しい」と潔い印象があるが、やはり他球団の情報収集などぎりぎりまで、水面下で競い合うべきだと考える。今回の井上ドラゴンズ、未公表で正解である。
必要な戦力補強はできたか?

今回のドラフトを2つの視点から見守っていた。まず「来季へ必要な戦力補強ができるか」。中西投手の単独指名に成功した後、2位では、東北福祉大学の櫻井頼之介投手を指名した。完成度の高いフォームから投げる変化球は多彩で、大学選手権でも名を馳せた。3位は、独立リーグである徳島インディゴソックスの速球派である篠崎国忠投手を指名した。
1位から3位は、先発型の右投手である。今季のドラゴンズは、先発ローテーションを守った右投手は高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)だけだった。4位以下では、高校生外野手、大学生内野手、そして大学生外野手を指名した。即戦力を期待できる選手が多い補強と言えよう。
フロント主導の指名だったか?
もうひとつの視点は「球団フロント主導でバランス良い指名ができるか」。ドラゴンズの過去のドラフト指名は、時に偏り(かたより)が散見された。2021年(令和3年)は、ブライト健太はじめ大学生の右打ち外野手を3人も獲得した。与田剛さんから立浪和義さんへ監督が交代した秋である。そして、立浪前監督になってからは、とにかく内野手の獲得が相次いだ。田中幹也のように、今季も活躍した選手もいる反面、なかなか殻を破れない内野手も多い。
時の監督は「勝つ」使命があるため“目先の戦力補強”に走りやすい。しかし、ドラフトで獲得する選手は、翌年だけではなく、5年先、10年先もチームを背負ってもらいたい人材であるはずだ。ようやく、金丸やキャッチャーの石伊雄太らを獲得した2024年(令和6年)ドラフトから、フロント主導へと軌道修正できた感がある。今回は育成枠でも、若い内野手と外野手を指名するなど、バランス良く、将来への布石もできたようだ。
佐々木麟太郎の指名に沸く
今年のドラフト会議は、阪神タイガースが抽選で指名権を得た創価大学の立石正広内野手が注目を集めてきたが、横浜DeNAベイスターズと福岡ソフトバンクホークスが、米国のスタンフォード大学の佐々木麟太郎内野手を1位指名したことには驚いた。佐々木選手は、花巻東高校時代に通算140本のホームランを打った超スラッガー。しかし、メジャー志向が強く、高校卒業と共に海を渡った。
MLBのドラフトが来年7月にあるため、それまで入団交渉できないかもしれないが、そのリスクを踏まえても1位指名した両球団。いずれも「自分たちの相手は日本のプロ野球ではない。世界と戦うチームを築く」などの志を抱く2チームである。期せずして、そんな大望の一環を見せられた思いだった。敬意を表したい。ソフトバンクホークスが指名権を獲得したが、佐々木選手は福岡へ来るのか。交渉の行方が注目される。
ドラゴンズ1位指名の中西投手は、背番号「11」を背負っている。ドラゴンズの「11」番は、今季で現役引退した岡田俊哉が付けていた。同じ智弁和歌山高校の先輩投手である。竜党の瞼には、すでに、ドラゴンズブルーの背番号「11」中西投手の凛々しいユニホーム姿が浮かんでいる。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。










