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ビールを美味しく飲んでいますか?

ビールを美味しく飲んでいますか?

ビールの美味しい季節がやってきた

実は汗だくになる暑い真夏よりも、さわやかで乾いた風が吹く初夏のこの時期が、実はビールが一番美味しいのではないかとビール党なりに分析している。

この春、日本のビールに大きな変革の波が押し寄せた。
2018年4月からの酒税法改正に伴い「ビール」の定義が大きく広がったのである。
これまで麦芽が占める割合について67%以上と定められていたが、「50%以上」に引き下げられた。また米やトウモロコシに限られていた副材料が、これも範囲が広がった。
果実、野菜、蕎麦、味噌、茶、コーヒー、かつお節、ワカメ、そしてコショウなどの香辛料など「ビールを名乗ることができる顔ぶれ」がそれこそ一気に増えたのである。
ビール各社は早速、次々と新たな“ビール”を発売している。

これまでの人生でおそらく一番美味しいビールを飲んだのは、沖縄県名護市にあるオリオンビール工場においてのこと、もう10年以上前になる。
沖縄の空気の中で飲む地元のオリオンビールはもともと大好きだったが、そのビールができる工程を是非見てみたいと工場見学に訪れた。何よりの楽しみは出来たてビールの試飲であったことは言うまでもない。
見学の後、大きなラウンジへ通された。ジョッキにつがれた生ビール登場かと思いきや、目の前に置かれたのは栓の抜かれた瓶ビールと冷えた小さなコップ。生ジョッキではないのか。しかし、この瓶ビールを飲んだ瞬間に言葉をなくした。「美味い!美味すぎる!」。強い苦味、円熟したコク、そしてホップの見事なキレ。昔、酒好きな先輩から「ビールの基本は瓶」と聞かされたが、まさにその通りだった。瓶詰めして栓をする前のビールをそのまま運んで下さったのだ。
その味が忘れられずに、しばらく後に再訪した際は、グラスに注ぐ生ビールに変わっていたが、今でもあの瓶ビールの味は忘れられない。

そんなビールだが、実は厳しい環境に置かれている。

大手5社が発表した2017年のビール類国内総出荷量は、前年比マイナス2.6%。
この集計が始まった1992年以降での最低記録を更新した。13年連続のマイナス更新と言うから、「ビール離れ」は深刻だ。これは、発泡酒、そして発泡酒に蒸留酒を加えた「第3のビール」も同様で、要するにチューハイはじめ他のアルコールに客が流れてしまっているのである。
かつて宴会となれば「まずビール」と言われたものだが、たしかに最近、最初からビールを敬遠する人も増えてきたように感じる。「ビールはお腹が膨れる」という言葉も聞くが、炭酸のハイボールはよく飲まれているようだ。ビールという存在自体が幅広い支持を集める存在ではなくなりつつあるのか・・・。

ビールの魅力とは何だろうか?

大手5社で作る「ビール酒造組合」ホームページには、紀元前8千年から4千年にさかのぼるビールの起源が紹介されている。古代人の生活でも「神の恵みである神聖な飲み物」であったようだが、「乾きを癒し、健康に感謝し、明日へのエネルギーを蓄える役割」と続く。「まずビール」と言う習慣も、ビールが「明日へのエネルギー」すなわち「勢い」をもたらす飲み物だからなのだろう。

開会中の通常国会を揺るがす森友文書・自衛隊メモ・加計問題、そして官僚のセクハラ問題・・・いずれも泡と消えてもらっては困ることばかり。そんな「苦い味」の空気と共に今年も初夏を迎えているが、法律の大変革でビールのファンが増えて、薫風の中で明日への勢いとなる美味しい泡を楽しんでほしいとビール党として願うばかりである。

【東西南北論説風(40) by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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