世界で増える「難聴」日常生活に支障も...予防・進行を抑える食材とは?難聴の意外な原因や予防法
サマリーSummary
ドクター:JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科 診療部長 医学博士 石井正則
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターはJCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科 診療部長 医学博士 石井正則先生です。
今回のテーマは「〜加齢だけが原因じゃない!〜世界で増える難聴の落とし穴」
日常生活に支障をきたす「難聴」。年を取ればある程度仕方のない事だと思ってしまいますが、実はWHOが世界11億人の若者に難聴の恐れがあると発表しているそうです。そこで今回は、難聴を引き起こす意外な原因や予防法について専門医に教えてもらいました。
聞こえの仕組み
音は鼓膜を振動させ、その振動が耳の奥にある「蝸牛(かぎゅう)」という器官に伝わります。蝸牛の中には「有毛細胞」と言われる毛の生えた細胞があり、振動を電気信号に変換し、脳で音として感じる事ができるのだとか。しかし、何らかの原因で脱毛したり傷がついたりすると、音の振動を正確に脳へ伝えられず難聴になってしまうそうです。
避けては通れない難聴の原因「加齢性難聴」
<「加齢性難聴」について>
体温計の「ピピッ」という音など、高い音が聞こえにくくなるのは加齢性難聴の特徴の1つだそうです。有毛細胞は、場所によって認識する音の高さが異なります。高い周波数帯は、常に音が入ってくる蝸牛の入り口にあるため、傷つきやすく有毛細胞の脱毛も起きやすいのだとか。実際に、70代が近づくにつれて高い音は大きな音でないと聞き取りにくくなるというデータもあるそうです。
<加齢性難聴の兆候>
先生によると、男性は40歳過ぎから、女性は40代半ばから更年期にかけて加齢性難聴の兆候が出てくるそうです。
<コミュニケーションに支障がある場合は耳鼻咽喉科へ>
加齢性難聴は、カ行・サ行・タ行・ハ行の言葉が聞き取りにくくなるという特徴もあるそうです。そのため、聞き間違えが多くなってしまうのだとか。難聴が進行しコミュニケーションに支障が出ている場合は、一度耳鼻咽喉科で聴力検査を受けてみましょう。
難聴を引き起こす意外な原因
<難聴を引き起こす意外な原因(1)疲れ・ストレス>
先生によると、疲れやストレスが溜まっていると、内耳のむくみから難聴になる事があるそうです。内耳とは音を脳に伝える蝸牛と、身体の平衡感覚や速度を司る器官がある場所。この中には、一定量のリンパ液が維持されていますが、身体が疲れていたりストレスが溜まっていたりすると、自律神経が乱れてリンパ液が過剰に溜まってしまうのだとか。すると、内耳全体がむくんで有毛細胞が脳に音を伝えにくくなってしまうそうです。朝と夜で聞こえ方が違う、疲れると聞こえにくい、などの症状がある場合は一度耳鼻咽喉科を受診するのがお勧めだそうです。
<難聴を引き起こす意外な原因(2)メタボ>
耳の中には、多くの血管が通っています。メタボが原因でそこに動脈硬化が起きると酸素や栄養が届かず、健康な人より有毛細胞の機能が早く落ちてしまう可能性があるのだとか。難聴を防ぐためにも、早い段階でメタボ対策を行う事が大切だそうです。
世界中の若者を襲う難聴の原因「イヤホン難聴」
<「イヤホン難聴」について>
イヤホンやヘッドホンをつけ続けていると、やがて難聴が起こる事が報告されているそうです。これを「ヘッドホン難聴」や「イヤホン難聴」と呼びます。イヤホンやヘッドホンをつけたときは、音の振動を直接耳の中に入れているため、長い時間つけていると有毛細胞が徐々に傷つき、脱毛しやすくなるのだとか。しかも、少しずつ進行するため初期には自覚しにくく、気づいた時にはすでに難聴になっている可能性があるそうです。
<「イヤホン難聴」の対策法>
1時間以上聞き続ける場合は、10〜15分の休憩をはさむと良いそうです。また、音量も難聴を進行させる原因の1つなのだとか。メーカーによって差はありますが、60%以下の音量に設定するよう心がけると良いそうです。
難聴を引き起こす病気「中耳炎」
中耳炎とは、耳の中にある中耳という部分が炎症を起こしている状態。耳が詰まった感覚に陥り、難聴のような症状が現れるのだとか。ほとんどの場合ウイルス感染が主な原因だそうですが、耳掃除のし過ぎで中耳炎になる事もあるそうです。先生によると、耳垢は自然に鼓膜の方から外側へ出るので耳掃除はしない方が良いとの事。やりすぎると血や水が出て中耳炎になるリスクが高まるのだとか。どうしても耳垢が気になる人は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
難聴が「認知症」のリスクに!?
聞こえが悪くなると、認知症のリスクを高める事がわかっているそうです。先生曰く、人間にはコミュニケーションがとても重要。聞こえが悪くなると、音が脳に入ってこないのでだんだん脳のネットワークが萎縮していき認知症になると考えられているそうです。
いつでもどこでも超簡単!難聴予防に期待ができる体操
先生考案の耳の筋膜を和らげるオリジナル体操をご紹介します。身体には筋肉を包む「筋膜」という膜があり、特に密集しているのが耳のまわり。筋膜は血管と密接に繋がっているため、筋膜を和らげる事で血流が良くなり身体が温まってくるそうです。すると、有毛細胞に酸素や栄養が届きやすくなり、難聴予防が期待できるのだとか。また、リラックス効果も得られるため、ストレスの緩和や疲れの回復にもつながるそうです。
<先生考案!超簡単「耳の筋膜プリプリ体操」>
▼親指が耳の後ろになるように耳を掴み外へ軽く引っ張る
▼親指の腹が上を向くように耳を捻りさらに外へ引っ張る
▼この状態をキープしながら ひじを後ろ 下へ順番に引っ張る
▼1日3回 耳の上中下それぞれで行う
先生オススメ!難聴予防・進行を抑える食材
先生によると、難聴の予防や進行を抑えるには下記の食材がオススメ。日々の食事にバランス良く取り入れる事が大切だそうです。
<ビタミンB群>
緑色の野菜・魚・玄米・豚レバーなどが多く含むビタミンB群は、末梢神経の代謝を促し、内耳の神経の働きを良くすると言われているそうです。
<マグネシウム>
そば、バナナ、海苔、豆乳が含むマグネシウムは、有毛細胞の代謝を良くするため、難聴の予防・抑制に効果が期待できるそうです。(※腎臓疾患の方がマグネシウムを摂取する際は主治医に相談してください)
(2023年12月3日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)