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「俺が好きな選手になれ!」ドラゴンズ井上一樹新監督を待つ投打の重要課題

「俺が好きな選手になれ!」ドラゴンズ井上一樹新監督を待つ投打の重要課題
井上一樹新監督(C)CBCテレビ

その第一声に注目していた。3年連続の最下位を受けて、中日ドラゴンズの再建を担うことになった井上一樹新監督が、選手たちにどんなメッセージを発するのか。就任会見でも語った同じ言葉が出た。「俺が好きな選手になってくれ」。(敬称略)

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50年前の歓喜の舞台で・・・

あれからちょうど半世紀、ドラゴンズにとっては記憶に残る大切な日である。井上監督が1軍の監督に就任してから初めて選手たちの前にお目見えしたのは、秋季練習が始まった2024年(令和6年)10月12日の土曜日、ナゴヤ球場だった。

くしくもちょうど50年前のこの日も同じ土曜日で、当時は「中日球場(中日スタジアム)」と呼ばれていた同じ球場で、当時の与那嶺要監督が宙に舞った。ドラゴンズが讀賣ジャイアンツの10連覇を阻止して、20年ぶりにリーグ優勝を成し遂げたのだった。球団史に輝く歓喜の胴上げがあった同じグラウンドに、竜の新しい指揮官はユニホーム姿で、選手たちの前に立った。

新監督の熱きメッセージ

井上一樹新監督(C)CBCテレビ

言葉の力を持つ井上監督らしく「長くなるかもしれないから」と、まず選手たちを芝生の上に座らせた。なかなか珍しい風景だった。
「俺が好きな選手になってほしい」

こう切り出した井上監督は「目標がみんな一緒でないとチームは勝てない」と、一体感の大切さを説き、こう檄を飛ばした。
「和を乱すな」
選手への熱いメッセージは10分以上続き、ようやく訪れた秋の日差しがそれを見守った。

与田監督の重き言葉

2019年(令和元年)から3年間指揮を取った与田剛監督は、就任直後、同じくナゴヤ球場の秋季練習で、こう呼びかけた。
「自分が今のカープに入ったとき、レギュラーになれるのか」

当時リーグ優勝をした広島東洋カープというチームを引き合いに出しての呼びかけ。「レギュラーになれるのか」という、選手にとっては何とも切実な具体的な意識を持たせての、とても重い新監督メッセージだった。

立浪監督の厳しい檄

立浪和義前監督(C)CBCテレビ

「ヘラヘラ笑いながらやってる選手は外すよ」
こう語りかけたのは、立浪和義前監督だった。2022年(令和4年)春季キャンプ初日だった。就任と共に、当時は「茶髪とひげの禁止」という方針を打ち出していただけに、この言葉には、我々ドラゴンズファンまでも背筋がピリッとしたことを覚えている。

そんな与田監督、そして立浪監督を、新人選手としてドラゴンズに獲得して重用した星野仙一監督の選手への第一声「覚悟しとけ!」は有名だが、新しいリーダーが発する最初のメッセージはとても大切である。もちろん、それを貫くことがもっと大切なのだが。

打の課題~得点力のアップ

井上一樹新監督(C)CBCテレビ

そんな井上新監督を待つのは、3年連続最下位という厳しい現状と投打の課題である。まず長年の課題であり、現役時代“天才打者”として名を馳せた立浪監督にしても打破できなかったのが“打”である。立浪監督3年目の2024年は、チーム打率2割4分3厘でリーグ3位、本塁打数は68本でリーグ4位、前の年はそれぞれリーグ最下位だったことからすれば、大きく改善された。

しかし、問題は得点数である。チーム全体での373点は前年よりも少なくなり、リーグ最少であることは変わらなかった。要するに「ヒットやホームランは出るが、点が入らない」のである。シーズンを通して、毎日のようにオーダーが変わり、スタメンを固定できなかった“日替わり打線”だった。はたして井上新監督は、どんな打線を組むのだろうか。

投の課題~先発投手の確立

“投手王国”と言われていた言葉が、いつのまにか影を潜めてしまった。松山晋也が最優秀中継ぎ、ライデル・マルティネスが最多セーブ、それぞれタイトルを獲得するなど、リリーフ陣はシーズンを通して安定していたが、豊富と見られていた先発陣は、最優秀防御率を達成した高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)の存在のみが際立った。

高橋宏斗投手(C)CBCテレビ

広いバンテリンドームを本拠地とするチームの“命綱”とも言えるチーム防御率も、前年のリーグ2位から4位へと落ち込んだ。先発ローテーションの再整備も重要な課題である。新監督を待つ舞台は、実は厳しいものであることは間違いない。

それでも、一般企業でもそうなのだが“新しい風”は組織の空気を変える。大切なことは、その風にどのように乗っていくのか。残念ながら、クライマックスシリーズも日本シリーズも縁がない淋しい秋。しかし、秋季練習、コーチ陣の組閣、ドラフト会議、そして2年ぶりに沖縄の北谷町も舞台になる秋季キャンプと、井上新監督が持ち込む“新風”の行方を見守る秋である。「俺が好きな選手」が一人でも多く育つことを楽しみにしている。

【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。

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