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ドラゴンズ新監督に“切り札”立浪和義が残してしまった5つの宿題

ドラゴンズ新監督に“切り札”立浪和義が残してしまった5つの宿題
「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督(C)CBCテレビ

“ミスター・ドラゴンズ”が竜を率いた3年間が終わる。退任が決まると、どうしても別れを惜しんで優しい声が多くなりがちだが、長年の低迷を続ける中日ドラゴンズが復活するためにも、立浪和義監督時代の3年間をきちんと総括しておく必要がある。浮き彫りになった課題の中から5つを挙げる。(敬称略)

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(1)日替わりオーダーが続いた

残念ながら、立浪監督のチーム作りは失敗したと言わざるを得ない。監督1年目が最下位、上昇への足がかりをつかもうとした2年目も最下位と、球団史上初の2年連続最下位となった。3年目の2024年も5位以下が確定した。その事実から明らかである。

象徴的なことは、打順である。固定できなかったとも言えるが、あえて固定しなかったとも言える。立浪監督独自の勝負勘による起用なのだろうが、スタメンは毎試合のように替わり、打順どころか守備位置まで変更され続けた。

8月末、久しぶりにサードの守備に入った石川昂弥が「球場に来て知った。驚いた」と話していたことが印象的である。選手たちにも戸惑いはあっただろう。打線は“線”にならなかった。「守り勝つ野球」を標榜しながらも送りバントをあまり使わず、「打ち勝つ野球」をめざした矛盾も目立った。

(2)二遊間は決まらなかった

監督就任以来、最重要課題としてめざした“今後10年はドラゴンズを支える二遊間”の確立もできなかった。特に立浪監督自らが守ったショート、1年目の開幕スタメンだった京田陽太はトレードで移籍、2年目の開幕スタメンだった龍空も2試合目にスタメン落ち、3年目のクリスチャン・ロドリゲスもしばらくしてから2軍落ちと、さまよい続けた。

ようやくシーズン後半に、村松開人がレギュラーとなりつつあるが、他球団を戦力外になったベテラン選手のスタメン起用も目立つなど、悩ましい未解決テーマとなった。

(3)正捕手は誰になるのか

二遊間の固定は“センターライン”の強化につながる。「センター岡林勇希」は立浪監督による大きな実りなのだが、要(かなめ)となる正捕手は決まらなかった。実は二遊間の問題以上に深刻なのは、キャッチャーである。

2024年シーズンは、主に、木下拓哉、宇佐見真吾、そして加藤匠馬の3人がスタメンマスクをかぶったが、全員が30代である。次世代の“正捕手”候補として期待される石橋康太を、腰を据えて育てることもなく、シーズンを終えようとしている。今後、ドラフト指名においても、即戦力レベルの捕手の獲得は重要な課題となるだろう。

(4)先発投手の再整備

先発投手の整備も必要だ。開幕前は揃っているように見えたローテーション投手も、大野雄大、柳裕也、そして涌井秀章ら30代が相次いで調子を崩し、小笠原慎之介も援護点が少なく大きく負け越した。夏が来た頃には「(高橋)宏斗でしか勝てない」などと揶揄された(※「高」は「はしごだか」)。

12球団で最も有利な指名順だった昨年のドラフトで、多くの即戦力投手を指名しておくべきだった。このドラフトも、立浪監督の意向があってか内野手の指名が目立った。広いバンテリンドームを本拠地とする限り、投手力の整備は他球団以上に必要であり、屋外球場が多いセ・リーグの敵地での試合に勝つためにも、先発投手の頭数は多いほどいい。

(5)チームリーダーの不在

東京ヤクルトスワローズの青木宣親選手が、今季限りでの現役引退を発表したが、その記者会見場に花束を持ってやって来た村上宗隆が、惜別の涙を流した。ドラゴンズに置き換えた時、このように若い後輩選手に泣いてもらえる選手には誰がいるだろうか。

立浪監督の3年間、「ドラゴンズを変える」という方針の下で、生え抜きの中堅やベテラン選手の起用は減った。監督1年目はキャプテン制を入れて、大野雄大と大島洋平がそれぞれ投打のリーダーに指名されたが、わずか1年で終わった。大島、高橋周平、そしてダヤン・ビシエドらは、立浪監督が退任を表明した時、1軍のベンチにはいなかった。

世代交代は必要であり、「勝負弱い」と言われ続けたチームは大きく変わる必要がある。しかし、ドラゴンズという“風土”を知る選手たちは、球団の歴史を刻む上で不可欠な存在でもある。チームの支柱となれるリーダーが欲しい。「ミスター・ドラゴンズ」には“後任”を作ってほしかった。

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督(C)CBCテレビ

ドラゴンズと同じように2年連続のリーグ最下位から、一気にクライマックスシリーズ出場を決めた“新庄ファイターズ”とは何が違っていたのか。監督の采配だけでなく、球団全体としての取り組みに足りない部分はなかったのか。“切り札”の監督が去るという大きな傷を負ったドラゴンズ、フロントが中心になって徹底検証する必要がある。それなくして、新たな監督による逆襲の道も開けないだろう。宿題は山積している。
                          
  
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。

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