立浪監督が辞すればドラゴンズは変わるのか?誤算と苦難続きの3シーズンを振り返る
【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)
志半ばの辞任
それは突然だった。唐突にテレビ画面上に速報として流れた“中日ドラゴンズ立浪監督辞任”の文字。9月18日、タイガース戦に敗れた試合後の会見で「結果が全ての世界。監督が責任を取るのは当然」と、退任する意向を明かした。2021年オフ、低迷が続くチーム再建の切り札として竜の舵取りを任された立浪監督。しかし志半ばにしてユニホームを脱ぐ結果に。今週のサンドラは思い通りにチームを変革できなかった立浪竜、誤算と苦難続きの3年間を振り返った。
課題と手ごたえを感じた就任1年目
2022年、満を持して誕生した立浪ドラゴンズ。監督就任会見で“勝つ野球”を標榜。その為には一切妥協はしないとまで言い切り、得点力不足解消には絶対的な自信を見せていた。積極的に若手起用を行い、将来チームの主砲へと期待を込め、当時入団3年目の石川昂弥選手を開幕スタメンに抜擢。この年、4月を終えた時点では前年の2021年と比較し、チーム打率は.225から.251へ、ホームラン数も8本から17本へと改善。成績も13勝13敗と5割をキープするなど、上々の船出となった。
しかし交流戦が始まった5月下旬、石川昂選手が左膝を痛めリタイアすると、成績は下降線をたどった。それでも石川昂選手同様、開幕から使い続けた岡林勇希選手が高卒3年目ではイチロー選手以来となる最多安打のタイトルを獲得。高卒2年目の高橋宏斗投手(※「高」は「はしごだか」)も先発で6勝を挙げ、侍ジャパンに選出された。最終順位は最下位ではあったが、3位までのゲーム差はわずかに3。課題は残したものの確かなる手ごたえを感じた監督1年目となった。
誤算続きの2年目
2年目の2023年。このチームは大きく変わらないと勝てないと感じた立浪監督は大きく自分の色を出し始めた。二遊間のレギュラーだった阿部寿樹選手と京田陽太選手をトレードで放出。ドラスティックな血の入れ替えを敢行した。しかし開幕前から想定外の事態がチームを襲う。
守護神ライデル・マルティネス投手へとつなぐセットアッパーとして期待していたジャリエル・ロドリゲス投手がワールドベースボールクラシック出場後に亡命すると、開幕セカンド起用が有力視されていたルーキー田中幹也選手は右肩の脱臼で1年を棒に振った。若手に活路を求めた二遊間は経験不足が露呈し、勝利の波に乗り切れないチームは早々にして優勝争いから脱落していった。
現役ドラフトでベイスターズから移籍した細川成也選手がひとり気を吐いたものの、立浪監督が自らドミニカまで足を運び、獲得に動いた大砲候補のアリスティデス・アキーノ選手は日本の野球にまったく対応することができず、1試合あたりの平均得点は改善するどころか、むしろ悪化。球団史上初の2年連続最下位に沈んだ。
最後まで改善しなかった得点力
勝負をかけた3年目の2024年。ジャイアンツから中田翔選手、中島宏之選手を獲得。上林誠知選手、山本泰寛選手、板山祐太郎選手らレギュラーの座を脅かす力を持つ中堅クラスの面々がドラゴンズブルーのユニホームに袖を通した。戦力に厚みを増した立浪竜はオープン戦を首位でフィニッシュ。開幕ダッシュにも成功し、4月9日には8年ぶりとなる単独首位に躍り出た。しかし至福の日々は長く続かなかった。中田選手は度重なるケガで満足にプレーすることができず、リードオフマンとして期待された岡林選手も前半戦終了時、打率.189と低迷。日替わり打線は機能せず、ビジターで13連敗と不名誉な記録を残した。エース高橋宏投手や万全なるリリーフ陣は奮闘したものの、1試合の平均得点は2022年2.90点、2023年2.73点、そして2024年は2.65点(9月21日現在)と一向に改善することなく時は過ぎ、課題の得点力不足は最後まで改善することはなかった。
志半ばでチームを去ることとなったミスタードラゴンズ立浪和義。無念にもチーム再生は次の監督に託すこととなった。
監督が辞すれば、ドラゴンズは変わるのか?
成績が伴わなければ、監督を辞するのがプロ野球界の常。ただ2011年に優勝して以来、13年も栄冠から遠ざかっているのはただ単に監督だけの責任だけなのだろうか。
野球はいわずもがな個人競技ではなく団体競技。1人の選手がいくら活躍しても、毎試合チームを勝利に導くのは難しい。そう考えると今、ドラゴンズに必要なのは危機管理体制の確立、そして中長期計画の立案実行だ。
監督の首を挿げ替えるばかりで果たしてチームは強くなるのか?監督が連れてきたコーチでチーム力は増すのか?時に監督へ助言し、コーチ陣をまとめ上げるヘッドコーチは監督以上に重要なのではないか等々、チーム状態が悪い場合、ただ指を咥えて眺めているのではなく、先手、先手で状況並びに戦力分析を行い、都度軌道修正できる危機管理体制作りはドラゴンズに必要不可欠であり、早急に構築しなければならない案件である。
また常勝復活となるためには、チームをどう立て直すべきか、そして戦力をどう維持していくべきか。5年後の先発スタッフの顔ぶれは?センターラインは誰が務めるのか?戦力の礎となるドラフト戦略はいかに?それらの多くは現場が考えることではなく球団が中長期計画として立案し、実行すべきものばかり。高卒選手育成プランなどはその時々の監督・コーチ陣がプランニングせず、球団主導でバイブルを作成するのも不変の指導を可能とするはずだ。このあたりメジャーリーグであれば当たり前に行われている話だ。
とにもかくにも現状のドラゴンズには変革が必要だ。変え改めることが山ほどあることを直視すべきだ。なおかつチーム状態が重症であることも痛感してもらいたい。立浪監督だけが責任を取る話では決してない。今こそ球団一丸となり、山積する問題点を一掃するぐらいのパワーとアイデアを絞り出してもらいたいものである。
やればできるはず。
期待して花開く来春を待つ。
がんばれドラゴンズ!
燃えよドラゴンズ!
竹内 茂喜