サインプレーに井端・憲伸モノ申す!いったい“ブルドッグ”って何なんだ!~コーチ裏話前編
CBCテレビ野球中継「燃えよドラゴンズ」燃えドラch
川上・井端のすべらない話シリーズ コーチ裏話編
ドラゴンズ黄金時代を支えた投打の両輪でもあり、97年ドラフト同期でもある川上憲伸、井端弘和が、グラブからマイクに代え、イバケンコンビを結成!燃えドラchというフィールドで球界裏話や同僚、ライバル話を大放出!
大好評の川上・井端のすべらない話シリーズ、今回は井端さんがジャイアンツ時代に経験したコーチ時代のウラ話を語る前編!同級生監督の高橋由伸さん話からコーチあるあるまで、今回も笑いのオンパレードだ!
つい呼んでしまう“おい!ヨシノブ!”
今回のお題目はコーチ裏話。となれば経験者のイバチンという話になるわけで。
まずは同級生で監督となった高橋由伸さん話から口火を切った。
川上『同じタイミングでやめたよね』
井端『秋季練習から一緒に参加したけど、違和感アリアリでさ』
川上『ほんの少し前までは、“オイ!ヨシノブ!とか言っていたのがね(笑)』
ついつい呼んでしまう、慣れた感じで“ヨシノブ”と。
ただ呼ぶたびに当時の村田ヘッドとか尾花投手コーチら重鎮コーチたちがすかさず、イバチンの顔をにらんだそうだ。
井端『こっちとしては悪気があるわけではないじゃん。もう“監督”って言い慣れるまで必死だった。でもふと顔見た瞬間に“ヨシノブ!”って出ちゃうの!』
川上『なるなる!なるよ。ナゴヤドームに巨人が来た時かな、山本昌さんがおったんよ、ベンチ前に。敬語を交えながら、監督、監督と話してたのね。次にオレが話しかけて、“か、監督”って言ったら、“いいよ~、お前なんなんだよ!監督って”と、向こうも話しづらそうだった』
監督と呼び慣れるまで時間がかかったイバチン。
そんな姿を見て、高橋監督もついフォローをしてくれたようだ。
井端『監督って、呼ぶのに慣れてきて、そうすると“プライベートはいいよ”とか言うの。“グラウンドでユニホーム来ている時は監督でいいけど、食事とかの時は由伸でいいよ”と言うわけ。でもそこでまた言ったらグラウンドで出ちゃうから、もうずっと“監督”で行こうと。そう思ってからは、監督辞めた今も“監督”って言っちゃってるからね。またいつ監督するか分からないしね』
川上『またお呼びがかかるかもしれないしね』
井端『三年間“監督”と呼び続けて、いまさら由伸って言うのもめんどくさい。今も監督って言うと、向こうも“ハイ”って言うし。まあ、そんなのが最初は大変だったね』
立場変わればなんとやらで
井端『監督、コーチ就任前後の話なんだけど、就任前は二人で練習に対して、意見交換しても無駄なものは無駄だと話していたの。でもいざ監督、コーチの立場になったら、変わったね。意味ないよねと言っていた練習が、必要に変わったわけ』
立場が変われば言うことも変わるとはよく聞いたもので。
ドラゴンズでも闘将と呼ばれた方は現役時代、コーチに対し、“こんなに走れるかぁー!”と散々文句を言っていたにも関わらず、いざ監督になれば“走らんかぁーい!”とどやしまくったのは有名な話。
川上『コーチと監督がうまく歩みを取るっていうかね。やっぱり難しいんだろうな。オレが選手の時、ピッチングコーチは一軍に2人いて、たまに意見が違う時があったのね。これって選手からしてみれば一番困るわけじゃん。あのコーチはこんなこと言ってましたよって選手の立場からもう一人のコーチには言えないしね。どっちを選ぼうかなってなるわけ。そういう時コーチって気にはせずに自分の意見を述べていくわけ?』
井端『二人いるじゃん。野手のコーチもね。当時は大西コーチと走塁の方では、オレがこう、大西さんがこうってないように擦り合わせていたよね』
映像上では大西コーチのモノマネであーだこうだと笑いを振りまく憲伸さんですが、あえてその部分は割愛(笑)。
井端『擦り合わせないと選手が困っちゃう。投手コーチとかでも二人いて、どちらかがチーフ的な感じで、打撃コーチは吉村さん、二岡ふたりで左右うまくやっていたよね』
コーチの喜びとは?
川上『コーチをやっての喜びって何?』
井端『若い子たちが一皮剥けたと感じた時かな。脱皮できた時はホント嬉しかったね。吉川尚輝とか岡本和真もそうだし。坂本にはとにかく“脱力”しろと。難しい球ほど簡単に、優しいゴロほど難しく丁寧にと』
川上『(坂本は)ちょっと雑だったもんね。もしかしてコーチって学校の教師みたいなものかな?』
井端『試合で上手くできた時はめちゃくちゃ褒めた。あの時の感覚どうだった?とか聞いて。“それができたら次の段階に行けるから”って激励したよね』
川上『コーチ経験って今に活きている?』
井端『うん、がまん強くなったよね。選手に“やれよ”って言ったって、本人的にはやっぱりできないし、自分も遡ればプレーしていてミスはしたくないし、無理はできないと思う』
川上『選手からすれば、コーチから“なんでできないんだよ!”って言われるのはつらい。そういうのがなくなるってことでしょ?』
井端『そう、その気持ちが分かるから。さらにレベルが上がるのに、一回のミスで成長を止めてしまうのだけは避けたい』
川上『ただね、ここでのお題は裏話なんだよね』
おっ!川上さんナイスアシスト!すべらない話はこうでなくっちゃ!
コーチあるある
川上『コーチをして実はこの人とは本当は合わなかったとか、コーチになってこんなに大変かとは思わなかったとかないの?』
井端『大変だったのはね、物事がなかなか決まらない事かな。コーチ会議などで。こうも決まらないの?って思ったね』
川上『えっ、どういうこと?』
井端『キャンプのメニューを決める時などでも、“こうも時間かかんのかよ”とイライラ…』
川上『そんなことにイチイチとかね!』
井端『そう。それを二軍にも下ろさないといけない。たとえば決定事項とかあるじゃん。投内連携とか色々共有しないといけないことが。そして二軍で問題起きたら電話がかかってくるのよ。“えっ!なんでうまくいかないのよ!”って思ったよね』
せきを切ったように話し出すイバチン。
どうも、溜まっていたものがあったようで。
井端『投内連携とか決め事を丸投げされるのよ』
その言葉にビビっと感じるものがあった憲伸さん!
川上『投内ってさぁ、オレも言わせてもらうけど、現役時代からイチイチだよね』
井端『プロなんだから合わせるのはたまに一回やればいいわけでね』
川上『現役時代は一緒になって“有り得ないだろ、この練習”と、ブーイングしていた人がいざコーチになると同じことをやりだす。“めんどくさいなぁ~コイツ!”って思ったもん!あれだけ文句言ってたのに!』
さあ、憲伸さん乗ってきましたよ!
川上『キャンプ中にサインプレーというかバントシフトのノックってあるじゃない』
井端『そう!年に一回も使わないのに、キャンプでここまでやるかぐらいのね』
川上『以前、こういうことがあったのね。バントシフトで投げた瞬間ピッチャーマウンドから走り出すじゃない?そうしたらバッター役のコーチはバントせず打ってくるの!“何、お前バントって決めつけてダッシュして来るんだ!”って言われたことあったわ。そんな意地悪ってあるかぁと思ったよ。あなたの性格まで読まないとアカンのか!ってね』
井端『そういうのが多すぎてねぇ』
川上『他にもあったよ!送りバントの構えしていて、事前に“ファーストに転がすぞ“と言われていたから、こちらも投げたらファースト方向に走り出すじゃない。打つ瞬間にバットをこねて、三塁側へバントするわけよ。あの世界の川相さんでも、いきなり手首返してコツンなんてやれへんぞ!』
井端『ガハハ!いるいる!あとセカンド牽制とかね』
イバチンの問いかけに牽制サインの専門用語がポンポン飛び出しては懐かしむ川上さん。首を振ったり、どうのこうのでサインを伝達するとか。間やタイミングも確認するとか。しかしそのタイミングにも異を唱えるイバチン。
井端『そういうのって毎年同じタイミングじゃん。でも突然“今年からタイミングを長くしよう!”とか言いだす人がいるの。なんで今さら!と思うわけ。そして、長くしてやってみたら“いやいやそれ間が長すぎて相手にバレますよ”って、クレームが入って、結局また戻るみたいな』
そういうのを試してきたのがプロ野球。
経験則が成り立っておりません!
まさにキャンプあるある!
謎の名称変更、その名もブルドッグシフト!
川上『ドジャーズシフトってあったじゃない?』
ここで解説しておこう!
ドジャーズシフトとは、失点を防ぐためにバント対策でシフトを敷く際に外野手もカバーに走るというようなチームプレー。たとえば無死一塁の状態であれば、一三塁手が本塁へ猛ダッシュ。三塁のカバーへはショートが入り。二塁手は一塁カバーへ。センターは二塁カバーに走り、レフトもライトも前進してボールカバーに入るのだ。
川上『プロ一年目の時はたしかドジャーズシフトとか言っていたわけ。それがいきなり呼び方を変えようっていう話になって…なんだったかな?なんだっけ?』
井端『ブルドッグ!』
何故ブルドッグ?
ここもあえて触れておこう!
内野全体を犬の顔(本塁・二塁方向が上ね!)に見立てて、一塁手と三塁手が一気に前進してくる様をブルドッグの垂れ下がった頬になぞらえているという説あり!しかしこのネーミング、なんだかセンスを感じませんなぁ!
川上『突然シフトの名前が変わり、キャッチャーの出すサインも複雑になって、いい加減にしろよ!と思ったもん。わざと間違うサインも出したりしてね。イバもをコーチの時、やってたんとちゃうのー!キャッチャーに“ワザと間違うサイン出せ!”って言ったりとかさ』
井端『やってない!やってない!ジャイアンツでオレ2年やったし、ドラゴンズにもいたけど、そんなにサインプレーでバントシフトとか出たの見たことないもん。(憲伸に向かって)出たことある?』
川上『出たこと見たことない』
確かに春季キャンプの映像を見ていたら、永遠と投内連携のプレーを続けていた印象があるっ!
井端『でしょ!あるとすれば、無死1、2塁でピッチャーがバントして一回ファールした場合、そうしたらもう一回バントのケース。その時はシフトが仕掛けやすくなる。そういう時に…ブルドッグ!(笑)』
井端『一度、ドラゴンズの時に“ブルドッグ牽制”だったのかな。そうしたら河原投手がホームに投げて相手がバントしちゃったんだよ。その時、ブルドッグ牽制だから、誰もサードにカバーに行かず、バント処理して、河原さん誰もいないサードに投げて、サヨナラ負け(笑)』
川上『言うけどね、オレもアメリカとか色々プレーしてきたけど、ドラゴンズの投内連携の練習はさあ……世界一長いっ!』
井端『ねっ!』
川上『そして世界一長く野手よりも投手がノックを受けてる!』
憲伸さんらしくディスりでしめて、前編はここまで!
(竹内茂喜)