CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

正捕手は?代打の切り札は?宿題は来季へ~ドラゴンズ2019総括(後編)

正捕手は?代打の切り札は?宿題は来季へ~ドラゴンズ2019総括(後編)

与田剛新監督の下、「昇竜復活」を掲げて戦った2019年シーズンは、3年連続の5位に終わった。2013年から続くBクラスは、7年連続に伸びた。
シーズン直前に出版した拙著の中で、長年続くBクラスについて検証したが、その5つのポイントに沿って、ドラゴンズの2019年を総括したい。

(1)ドラフト戦略と新戦力起用

「サンデードラゴンズ」より梅津晃大投手(C)CBCテレビ

「120%の成功」と2018年ドラフト会議は評価された。
地元のスーパールーキー根尾昂選手を4球団競合の末に引き当てたことはもちろんだが、2位以下にも逸材ぞろいだった。2位の梅津晃大、3位の勝野昌慶、両投手は1年目から早々にプロ初勝利を挙げた。特に梅津投手は初登板初先発から3連勝と、32年ぶりに球団記録に並ぶ活躍だった。4位の石橋康太捕手も1軍デビューし、堂々のマスクぶりを披露するなど、ドラフト指名は結果的にも成功だった。
与田采配は新戦力の起用にも積極的だった。2年目の清水達也と山本拓実、両投手は先発で堂々の初勝利を挙げた。同じく2年目の俊足・高松渡選手もシーズン最後に根尾選手と共に1軍デビューするなど、ここ最近のドラゴンズにはなかった、若手の積極的な起用が目立ったシーズンだった。

(2)投手王国の復活は?

「サンデードラゴンズ」より大野雄大投手と大野奨太捕手(C)CBCテレビ

確かな手応えがあった1年だった。
シーズン前半は3年目の柳裕也投手が先発の柱としてチームを引っ張った。入団以来の過去2年間で通算わずか3勝だった柳投手だが、前半戦だけで9勝を挙げ、オールスターゲームにも選ばれた。セ・パ交流戦では3試合に先発して3勝、防御率も1.17という見事な成績で、優勝したパ・リーグ最優秀選手に次ぐ「日本生命賞」も獲得した。
もうひとり、大野雄大投手の活躍は見事だった。これが昨シーズン無勝利の投手かと思うほどの堂々としたマウンドさばきと力強い投球。新しい指揮官の采配とぴったり合ったのであろう。9月のノーヒットノーランはドラゴンズ12人目の快挙、球団史にその名を刻むと共に、最終戦で最優秀防御率のタイトルも初めて手にした。
この左右の柱だけでなく、先発陣はケガから復活した小笠原慎之介投手をはじめ、梅津、清水、山本ら若い戦力が続々と台頭。中継ぎ陣は、ジョエリー・ロドリゲスとライデル・マルチネスの“ロド・マルコンビ”、福敬登、藤嶋健人らの投手が活躍し、抑えも10年目左腕の岡田俊哉がシーズン前半の鈴木博志投手に代わって重責を十分に担うなど、投手王国復活への形がたしかに見えたシーズンだった。

(3)正捕手は今季も誕生せず

中日・中村武志バッテリコーチと加藤匠馬捕手©CBCテレビ

2019年シーズンもドラゴンズに正捕手は誕生しなかった。
球界屈指の強肩をかつての名捕手・伊東勤ヘッドコーチに見いだされ、「加藤バズーカ」と称された加藤匠馬選手もシーズン半ばに長期間の2軍調整となり、日替わりでの捕手起用が最後まで続いた。かつて監督だった谷繁元信さんやコーチだった達川光男さんがいながらにして、正捕手を育ててこられなかったドラゴンズ。今季も伊東ヘッドコーチ、そして星野仙一監督時代にホームベースを守り続けた中村武志バッテリーコーチ、この指導者2人への期待は高かったが、やはり「正捕手」を育てるということはむずかしいことを証明した1年だった。
リーグ連覇した西武ライオンズには首位打者となった森友哉という捕手がいる。ドラゴンズファンからすれば何ともまばゆい存在であるが、“竜の正捕手”を2020年には是非見たいものだ。

(4)代打の切り札は来季こそ

中日・堂上直倫選手(C)CBCテレビ

ドラゴンズから「代打の切り札」という存在が姿を消して久しい。それは同時に、選手層の薄さを表している。2019年シーズンは堂上直倫選手の代打満塁ホームランが飛び出すなど、ここ数年に比べれば今季は代打陣の活躍が印象に残った。ソイロ・アルモンテ選手、井領雅貴選手、藤井淳志選手らも、代打でヒットを打ってきた。それでも「切り札」ではなかった。1974年(昭和49年)に発売された『燃えよドラゴンズ!』で「代打男」と歌われた江藤省三選手のように。そして1980年代から90年代にかけて活躍した川又米利選手のように。それにはレギュラー選手を脅かす選手がどれだけ沢山チームに存在するかにかかっている。その選手の名前がコールされるだけで、スタンド応援席から地鳴りのような歓声が巻き起こる。そんな「代打男」の登場も2020年に持ち越された宿題であろう。

(5)ナゴヤドームに観客は戻りつつ

ナゴヤドームの観戦風景(C)CBCテレビ

沖縄での春季キャンプで人気を二分した根尾昂選手と松坂大輔投手。この2人が活躍することによって、ナゴヤドームの観客数は増えることが見込まれたシーズンだった。しかしふたを開けてみれば、松坂投手が2試合、根尾選手にいたっては本拠地にはオープン戦だけで1軍公式戦にはお目見えせずという結果であった。
2017年に1試合平均が2万8619人と1997年(平成9年)開場以来の最低を記録した観客数は、2018年“平成の怪物”松坂投手入団の効果もあって前年比8.7%、1試合平均3万1115人と増加していた。そして2019年、ナゴヤドーム71試合での平均入場者数は3万1741人とさらに増えた。シーズン前の2大スターなしでも「なぜ?」。それは今季のドラゴンズの戦いぶりがファンの心に刺さったからであろう。数々のドームイベントにも工夫が見られた。

「サンデードラゴンズ」より阿部寿樹選手(C)CBCテレビ

観客増加の最大の要因は、過去6年間のBクラス時代には活躍しなかった選手たちの台頭。
象徴的なゲームはいきなりやって来た。ナゴヤドーム開幕戦となった4月2日の広島カープ戦。2塁スタメンを勝ち取っていた阿部寿樹選手のクリーンヒットで勝ちを決めた時のドームを揺るがした大歓声は忘れられない。スタンドで思った「今年は違うぞ!」。
それでもシーズンを通して、ナゴヤドームにはまだまだ空席が目立った。ドラゴンズファンの心を熱くさせて“現場”に連れてくることができるか。「野球は知らないけれど根尾選手は見てみたい」という新たなファンを呼ぶことができるか。球団とナゴヤドームが一体となったさらなる取り組みが必要だ。ナゴヤドーム最初のシーズンの1試合平均の観客数は3万9414人、今季はまだそれに1試合平均8000人近く及ばないのだから。

終わってみれば前年と同じリーグ5位。しかし、守備率はリーグ新記録を更新し、昨シーズンは12球団最下位だった防御率も大きく改善した。チーム打率も堂々のリーグトップだ。「力が足りなかった」と与田監督は総括したが、来季への手応えを感じているファンは多いのではないだろうか。
9月30日のシーズン最終戦、ゲームセットと同時に始まったものがある。それは来季への戦い、やり残した「昇竜復活」だ。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP