低迷ドラゴンズに叫びたい!後半戦3つのテーマ「勝利」「感動」そして「明日の姿」
何とも言いようのない疲労感に包まれている。怒りすら覚える。2021年ペナントレースは前半戦を終えたが、中日ドラゴンズは直前の3連敗で、オールスターゲームそして東京五輪での長き中断期間に入った。梅雨が明けてもファンの気持ちは晴れない。竜党として、今のドラゴンズに求めたい思いを綴る。
Bクラスに低迷し続ける竜
86試合を戦い終えた与田ドラゴンズ。前半戦終了と言いながら、すでにシーズンの6割が過ぎている。ここまで32勝42敗12分、負け越し10で4位、3位とは10ゲーム差という大差である。球団創設85周年のシーズン、記念ロゴをユニホームに付けた与田剛監督が「目標は優勝しかない」と宣言した言葉が遠い過去のように感じられる。3年目の与田ドラゴンズは3年連続で開幕ダッシュに失敗。12球団トップとも言える投手陣を持ちながら、一方で「あと1本が出ない」ことに象徴される勝負弱い打撃陣。チームは狂った歯車の軋む音と共に、順位を落としBクラスに低迷し続けている。
勝利を手放し「潮目が変わった」
セ・パ交流戦の最初、日本一チームの福岡ソフトバンクホークスを撃破し快進撃が始まった。しかし、ほんの一瞬のスキなのか、勝てる試合を勝ち切れなかったことによって、交流戦後半には失速、そのまま再開したペナントレースに突入した。象徴的なのはシーズン前半戦最終盤の7月11日バンテリンドームでの試合だろう。先発の勝野昌慶投手が好投、ダヤン・ビシエド選手が豪快な3ラン、5対1とリードした瞬間「今日は勝った」と信じた。しかし結果は追いつかれての引き分け。9回裏の1死満塁というサヨナラ勝ちのチャンスもダブルプレーでつぶした。翌日からの広島での3連戦は、沢村賞エース(大野雄大)、開幕投手(福谷浩司)、奪三振王(柳裕也)という3投手を先発に立てながらの3連敗。「潮目が変わった」という言葉が浮かんだ。勝負は波を手放したら負けである。ドラゴンズの乱高下は激しい、激しすぎる。応援するファンの疲労感は正直、半端ない。
「勝利」のために必要な厳しさ
これから1か月続く“今年限定”のブレイクタイムを機に、あらためて今後のドラゴンズに求めたいものを整理してみた。まず言わずもがな「勝利」である。とにかく、応援するチームには勝ってほしい、強くあってほしい。10年前までは落合博満監督が率いた黄金期だったこともあって「日本シリーズに出場して当然」と、シーズン前から予定表にスケジュールを書き込んでいた。今となっては懐かしい日々。現在は、ひたすら勝利に飢えている。久しくサヨナラ勝ちゲームも見ていない。2021年シーズン、ファンとして心から喜んだドラゴンズの快勝、一体いくつあったのだろうか?与田監督は「五輪期間はキャンプのように鍛える」と話したが、キャンプの練習は十分だったのか。「キャンプ以上に鍛える」くらい厳しい言葉を求めたい。1軍と2軍すべての戦力を今こそ見つめてほしい。
ドラゴンズに足りない「感動」
次に「感動」である。ここまでの戦いで心に残る場面もある。根尾昂選手のプロ入り初ホームランの満塁弾。背番号「0」高松渡選手の快走。ダヤン・ビシエド選手の起死回生強力弾。柳裕也投手の快刀乱麻奪三振ショー。又吉克樹投手のキレ味鋭い決め球。そして右ひじの再建手術から復活した“タジマジン”田島慎二投手の背番号と同じ12球。しかし、まだまだ足りない。米メジャーリーグで躍動する大谷翔平選手が、全米を熱狂させている風景を横目で見ながら、ドラゴンズがファンに届けてくれる「感動」が少ないと感じる。ホームランダービーと史上初の“二刀流”が登場したオールスターゲーム、そのワクワク感。「レベルも土俵も違う」という声は承知の上で、心底うらやましいと思った。
竜の「明日」を見せてくれ!
そして最後は「明日の姿」である。今のドラゴンズは“明日”を見せてくれていない。根尾昂、高松渡、郡司裕也ら若い野手たちも出場するが、正直その機会は不十分だ。他球団に目を向ける時、あまりの落差にため息が出る。前半戦終了直前の相手は広島東洋カープ、スタメンで登場する小園海斗選手と林晃汰選手は、ドラゴンズ根尾選手と同じ3年目。なんて若く力強い三遊間なのだろう。その前の相手だった横浜DeNAベイスターズ、ドラゴンズでは骨折治療中である石川昂弥選手と同じ2年目の森敬斗選手が、いつのまにかスタメンで活躍中。首位の阪神タイガースはもちろんだが、セ・リーグではドラゴンズ以外の5球団で若い選手たちの躍動が目立つ。パ・リーグでも首位を走るオリックスバファローズでは、高卒ルーキー来田涼斗選手が初打席初球ホームランという派手なデビューを飾った。ファンは常にチームの将来を夢見ていたい。
神様からの“ラストチャンス”
監督やコーチ、そして球団フロントもいつかは任期を終えて交代する。その仕事期間には期限がある。しかし、ファンは違う。子どもの頃に好きになったチームを死ぬまで応援し続けるファンは多い。期限なしのファン道は続く。だからこそ勝っていても負けていても「明日の姿」にこだわりたいし、チームには常にそれを見せていく姿勢が求められる。2021年だけにしかない五輪中断の1か月という時間は、神様が与えてくれた特別な時間、いわば“最後のチャンス”である。ここで何をするか、何をすべきか。それは残りのペナントレースだけでなく、中日ドラゴンズの将来にも大きく影響するはずだ。
「勝利」「感動」そして「明日の姿」。今こそ、ベンチそしてフロント球団一丸となって、この3つのテーマと徹底的に向き合ってほしい。竜党として熱いエールは送り続けるが、同時にそれを見つめる目はますます厳しくなっていることをどうか忘れないでほしい。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。