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ドラゴンズ温故知新!06「二塁手」編~モリミチの勝負強さを後継だ!

ドラゴンズ温故知新!06「二塁手」編~モリミチの勝負強さを後継だ!

中日ドラゴンズは2020年に球団創設84年目を迎える。伝統あるその球団史は数多のスター選手に彩られ、熱き戦いの記録と記憶をファンの心に刻みつけてきた。筆者が独断で選んだ歴代ベストナインと現役選手を比較しながら、7年続くBクラスからの脱出に向けて、新たなシーズンへの期待と応援を届ける連載企画である。
2019年の締めくくりとなる第6回のテーマは「二塁手」。(敬称略)

歴代ベストナインは「高木守道」

ドラゴンズの歴代ベストナインどころか、日本プロ野球界の歴代ベストナインでも二塁手はこの人だろう。高木守道。背番号「1」を背負って、ドラゴンズというチームを引っ張ったリードオフマンだった。そのデビューは鮮烈だった。1960年(昭和35年)5月7日の大洋ホエールズ戦で代走としてプロ初出場を果たすと、直後に初盗塁を決める。さらに初打席でホームランを打ち、初打席・初ホームラン・初打点を記録した。その3年後には50盗塁で初の盗塁王に輝いた。通算21年の現役生活はドラゴンズ一筋、2274安打、236本塁打、813打点、369盗塁、という輝かしい成績を残した。
高木守道の凄さを語る上で、その華麗なる守備は欠かせない。セカンドでゴロを取り、ランナーを見ずしてすかさずボールを投げる「バックトス」。二塁手としてベストナインに選ばれること7回。今では西沢道夫に続く二代目「ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれるが、長年のドラゴンズファンには「モリミチ」という呼称がしっくりくる。竜党は選手「モリミチ」を愛していた。

ベストナイン選考理由

高木守道の魅力を語る上で、無類の勝負強さが挙げられる。「この1打席」を選ぶのならば、1974年(昭和49年)10月11日、20年ぶりの優勝までマジック「3」となった神宮球場でのヤクルトスワローズ戦であろう。このゲームを落とすとマジックは消滅し、10連覇をめざす讀賣ジャイアンツが迫ってくるという大事な試合だったが、1点リードされて9回表を迎えた。ツーアウト2塁の絶体絶命の打席、高木はレフト前に同点タイムリーを打つ。このゲームを引き分けたドラゴンズはマジックを1つ減らして「2」として、翌日に歓喜の瞬間を迎えることになる。ここという勝負どころで、必ず打ってくれた選手だった。

忘れてはいけない荒木雅博

ただ歴代ベストナインの「二塁手」を選ぶ上で迷ったもうひとりの選手がいる。荒木雅博だ。歴代ベストナインに「二遊間」というコンビ項目を設けるのならば、間違いなくセカンドは荒木、そしてショートは井端弘和であろう。「アライバ」と呼ばれた二遊間コンビ。
落合博満監督がドラゴンズを率いた8年間の黄金期、この2人は6年連続でゴールデングラブ賞を取り続け、度々のリーグ優勝と53年ぶりの日本一を達成した。「二塁手」を語る上で、荒木雅博の名前を忘れてはいけないことを記したい。

“マスター”阿部の覚醒

2019年ドラゴンズの「二塁手」というポジションは開幕前には空いていた。前のシーズンにセカンドを守って、初めての規定打席にも達した高橋周平は、与田剛新監督の方針から古巣であるサードに戻っていた。代わって台頭してきたのが4年目の阿部寿樹だった。正直に言うと、阿部が背番号「5」を背負い続けていることに違和感を持っていたファンは多かった。背番号「5」は、最近ではスラッガー和田一浩、古くは“一発長打”が代名詞だった大島康徳、そして二軍監督としてドラゴンズに戻ってきた仁村徹。高木守道が大活躍してペナントを勝ち取った時代にさかのぼるならば、背番号「5」はジミー・ウィリアムの名前が浮かぶ。いずれもドラゴンズファンの記憶に刻まれたレギュラー選手だったからである。
しかし、与田体制の新しいステージで阿部は覚醒した。その風貌から、バーカウンターの中に立っているのが似合うと「マスター」というニックネームもついた。ナゴヤドーム開幕となった広島東洋カープ戦の試合を決めたタイムリーに代表されるように、勝負強い打撃を発揮し、シーズンは終わってみれば、129試合に出場して打率.291で、セ・リーグの打撃ベストテン10位に堂々と名を連ねた。もう誰も背番号「5」が重いとは言わないだろう。

2020年シーズン展望

阿部寿樹というレギュラー「二塁手」が誕生した2019年シーズンだったが、現状で満足してはいけない。打撃10傑に阿部を含めてドラゴンズから4人も入り、にもかかわらずリーグ5位だったのだ。30歳で2020年シーズンを迎える阿部には、遅ればせの「2年目のジンクス」などあってほしくないし、さらに巧打を積み重ねて、歴代背番号「5」のレギュラー選手たちに並ぶよう精進してほしい。リーグ1位だった二塁の守備率だが、春季キャンプでさらに徹底的に鍛えて、よりしなやかな動きへと磨きをかけてほしい。そこに割り込んでくるのは誰か?堂上直倫、三ツ俣大樹、溝脇隼人か?あるいは秋季キャンプで外野と共に二塁の守備練習もした2年目の根尾昂か?
ドラゴンズの二塁レギュラーの座は「まだ決まっていない」という緊張感を持って、2020年シーズンを迎えてほしい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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