ドラゴンズ温故知新!08「遊撃手」編~京田よ、根尾の挑戦状にどう応える?

ドラゴンズ温故知新!08「遊撃手」編~京田よ、根尾の挑戦状にどう応える?

新しい年2020年、中日ドラゴンズは球団創設84年目を迎えた。伝統あるその球団史は数多のスター選手に彩られ、熱き戦いの記録と記憶をファンの心に刻みつけてきた。筆者が独断で選んだ歴代ベストナインと現役選手を比較しながら、7年続くBクラスからの脱出に向けて、新たなシーズンへの期待と応援を届ける連載企画である。
第8回のテーマは「遊撃手」。(敬称略)

竜の遊撃手は華麗なる顔ぶれ

ドラゴンズの歴代ショートを語ろうとする時、その顔ぶれの豊富さにあらためて驚かされる。「遊撃手」には他のポジション以上に、多くの名選手が次々と思い浮かぶ。球団初のリーグ優勝そして日本一を達成した1954年(昭和29年)、エース杉下茂の後ろでショートを守っていたのは牧野茂だった。引退後は讀賣ジャイアンツの川上哲治監督の名参謀として9連覇という常勝チームを支えた。セカンド高木守道と二遊間を組んだ一枝修平も名ショートだった。ドラゴンズは10連覇を阻止して1974年(昭和49年)に20年ぶりに優勝するが、その時のショートは広瀬宰。応援歌『燃えよドラゴンズ!』にも「8番広瀬」として登場し歌詞ではスクイズバントを決める。広瀬の後を継いだのは正岡真二だった。メジャー選手だったフェリックス・ミヤーンの打撃スタイルを真似てバットを短く持つ“ミヤーン打法”は正岡の代名詞。「守備の人」と見られがちだが、結構ヒットを打った印象がある。そして、宇野勝が登場する。フライをヘディングするエラーが「珍プレー」としてあまりに有名だが、334本のホームランはドラゴンズ在籍期間に限定すれば歴代トップである。1984(昭和59年)年には37本でホームラン王にも輝いた。

歴代ベストナインは「立浪和義」

そんな“遊撃手王国”ともいえるドラゴンズに、1987年ドラフト1位でPL学園高校から立浪和義が入団する。星野仙一監督が、前年の近藤真一(現・真市)に続き、見事に抽選でくじを引き当てた。思い切って若手選手を起用する星野監督によって、立浪は高卒ルーキーとしてはリーグ29年ぶりとなる開幕戦「2番ショート」でスタメン出場した。その3打席目でプロ初ヒットとなる二塁打を打った。後にプロ野球新記録となる487の二塁打を打ち「ミスター・ツーベース」とも呼ばれるが、その記念すべき1本目だった。
背番号「3」を背負って、22年間にわたってドラゴンズブルーの姿を輝かせた立浪。2019年には野球殿堂入りし、プロ野球界を代表するショートにもなった。チーム事情や体調面から、後にセカンドやサードなどの守備についたが、やはりドラゴンズ歴代ベストナインの「遊撃手」は立浪和義である。選考理由についてもはや説明する必要はないだろう。

忘れてはいけない井端弘和

歴代ベストナイン「二塁手」部門のコラムでも同じことを書いたが、「遊撃手」で迷ったもうひとりの選手がいる。井端弘和だ。歴代ベストナインに「二遊間」というコンビ項目があったのならば、セカンド荒木雅博とのコンビで、ショートは井端であろう。落合博満監督がドラゴンズを率いた8年間の黄金期、竜の二遊間はそろって6年連続でゴールデングラブ賞を取り続けた。「遊撃手」の球団史で、井端弘和は、記録にも記憶にも残る名ショートである。

真のゴールデングラブ賞は京田陽太

京田陽太は2019年シーズン、リーグNO.1の「遊撃手」だった。新人王を獲得した華やかなデビューから3年目、京田はシーズンを通してドラゴンズのショートストップを守り通した。139試合に出場し、失策は9。大切な守備率は.985と、高い数字でリーグトップだった。ちなみにショート部門では、2位が守備率.981の大和(横浜DeNAベイスターズ)、3位が坂本勇人(讀賣ジャイアンツ)で守備率.979。打撃含めてのベストナインならともかく、“守備の勲章”であるゴールデングラブ賞に3位の坂本が選ばれて京田が落選するという不思議な出来事も起きた。印象度の差であろうか。新人王を獲ったルーキー年は、長嶋茂雄さんの新人最多安打記録(当時)に迫るシーズン149本の安打を記録したが、その打棒は湿りがちで、126安打、打率.249だった。物足らない。特に二塁打14本、三塁打5本といずれも3年間で最も少なかった。そのスピードが売り物だっただけに、京田にはもう一度その原点に帰ってほしい。

2020年シーズン展望

高校球界のスーパースター根尾昂が「ショート1本で勝負したい」と入団したのが1年前。
その根尾は秋季キャンプでセカンド、そして肩の強さを生かした外野の練習もするなど、現時点での「遊撃手」は「京田vs根尾」という図式ではないのだろう。しかし、その根尾がシーズンオフのCBCテレビ『サンデードラゴンズ』で語った言葉が耳から離れない。
「ショートは打ってこそのポジション。守れるだけでレギュラーを獲れるとは思っていない。守れて打てないとドラゴンズのレギュラーにはなれない」
京田は、そして虎視眈々とスタメンを狙うベテラン堂上直倫は、この19歳の挑戦状をどう受け止めるのか。ドラゴンズの「遊撃手」から目が離せない。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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