今年はメジャーがアツかった!なのになぜ?野球少年が増えない理由
12月26日、来年3月に開催される、第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する通称「侍ジャパン」メンバーの一部が発表されました。中でも注目は、3年連続4度目のメジャーリーグMVPに輝いたロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手大谷翔平選手。27日放送のCBCラジオ『石塚元章ニュースマン!!』では、スポーツライターの小林信也さんがこの1年の野球界を振り返るとともに、今後の野球を取り巻く環境についての懸念も併せて解説します。聞き手はCBC論説室の石塚元章特別解説委員です。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くメジャーの勢いが止まらない
2025年も締めくくりの時期に入りましたが、小林さんの視点で今年の野球を総括すると、どんな印象だったのでしょうか?
小林「『日本の野球がメジャーリーグのマイナー化する』という話はよく言われていましたが、完全にそうなりましたね」
それは実力や技能面でというよりも、日本メディアの野球に対する扱いがそうだったと感じているようです。スポーツ番組に限らず、とにかくメジャーリーグの報道が増えた年だったと振り返ります。
石塚「おっしゃる通りですよ」
メディアに携わる石塚も、その空気感をひしひしと感じている様子。以前はテレビのワイドショーや情報番組で野球が取り上げることは少なかったのに、大谷翔平選手の台頭以降はかなりメインで扱うようになったとか。
小林「メジャーに限らずテニスでもゴルフでも、国内だけでなく世界で活躍する選手に目が向くのは、この時代当然の流れなんですけどね」
少年時代や仕事を始めた頃を振り返ると、こんな風になるとは想像できなかったと小林さん。
小林「さすがにここまでとは」
加速するスポーツビジネス
スポーツが振興し、日本人選手が世界で活躍する反面、「どうしても気になることがある」と小林さん。
小林「ワールドシリーズを見るのに外野席で5万円だそうですよ」
なんとネット裏の席は200万円。極端な例えですが、夫婦が2人の子どもを連れて家族で観戦に行こうと思ったら、800万円かかります。
かつてドジャースのオーナーが「外野席は1ドルだ。これは国民の娯楽なんだから」というセリフを残したことも、いまや昔の話。
小林「もっと心を痛めているのは、大谷翔平選手のホームランボールが1億5,000万円で落札されたこと。日本のメディアは『やっぱり大谷人気はすごい!』と取り沙汰しますけど」
さらに危機感を抱いているのは、ボールひとつに異常な値が付くほどの過熱ぶり。
ホームランが飛び込んだ瞬間、一斉にボールの奪い合いが始まります。昔からよくある光景ですが、実際には1億5,000万を取り合っている姿に映るといいます。
小林「しかも取った大人がそれをこどもに渡したりもして。一見心温まるように思えますが、これって単なる美談じゃないですよね」
記念のボールを譲ってもらった、という話ではなくなっています。
小林「資本主義の原理と言えばそうなんですが、スポーツビジネスは本当にこれでいいのかなという気もしますね」
野球は今や身近なものではない
メジャーリーグがこれだけ盛り上がり、さらにWBCも控えており、今後いっそう人々が熱狂することが予想されますが、小林さんにはまだまだ別の懸念があるようです。
小林「仮にWBCで優勝したとしても、大谷選手や山本選手の活躍があったとしても、野球少年は増えないんじゃないかなと思うんです」
その理由は、こども達を取り巻く遊びの環境。
小林「野球する場所がないんですもん。野球どころかキャッチボールもできないし、公園にバットを持って行ったらそれだけで怒られちゃう。野球で遊ぶ環境が全く充実していないんです」
公園や空き地で野球をして遊ぶこどもたちの姿は、今やテレビや漫画の中にしかありません。たいていの公園は野球禁止となっているのが現状です。
野球に限らずサッカーでもテニスでも、スポーツに触れようと思うと専門的な場に足を踏み入れなければなりません。「ちょっとやってみよう」と気軽に始められない現状に危機感を抱いているようです。
小林「スポーツ界全体で、スポーツをもっと身近に感じられる環境を作る必要があると感じています」
こどもたちにとっての野球が「テレビで楽しむエンターテイメント」ではなく、遊びの延長として日常の中で当たり前に触れられるものになると、日本の野球もさらに盛り上がっていくのではないでしょうか。
(吉村)
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