M&Aで詐欺に遭うケースが増加中!トラブル事例と回避するための手段とは

昨今、少子高齢化で中小企業・小規模事業者の後継者難が大きな経営課題の一つとなっています。「人生100年時代」の今だからこそ、元気なうちに資産の管理やスムーズな承継について考えていく必要性が高まっているのです。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。8月27日の放送では、「非営利法人の承継支援」について北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援 植田駿一郎さんに伺いました。
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今回は、不適切な買い手をめぐるトラブル事例について。
北野「トラブルって結構あるんですか?」
植田「昨今、不適切な買い手をめぐるトラブルが多発しているんです。 今までは不適切な買い手というと、経営能力がない・情報の抜き取り目的・リストラ前提、といったイメージを持たれていましたが、 いま事件になっている内容は、詐欺と言っても過言ではない、信じがたい事件が起きているんです。」
北野「詐欺? そんなにたくさん起きているんですか」
植田「実際に2021年頃から、約100社近い中小企業様が買収され、数十社が営業停止、倒産に追い込まれていると言われています」
都合の良いことだけを言って、何の精査もなく企業をお金目当てで買収していく手口です。
会社が倒産危機!おかしいと思ったポイントは
具体的にどんな事件があったのでしょうか?
植田「ひとつの事例をご紹介すると、売り手企業さんは、北関東地区で食品製造業を営んでいました。
個人資本でやっていくことに限界を感じM&Aを検討し仲介会社に依頼。
『相乗効果がある』とか『会社を成長させることができる』など、過去の買収実績をアピールされ、話はとんとん拍子に進み、非常に短期間で株式譲渡契約を締結しました」
北野「ここまで聞くと、何も問題なさそうですね?」
しかし、株式譲渡実行後すぐに以下の異変を感じることに。それは…
・株式譲渡代金の支払いを一部先延ばしにすることを打診された
・従業員の給与が支払われていなかった
・会社の現金が何千万も抜かれていた
・経営者保証が解除されなかった
植田「また買い手企業から新たな経営者が派遣されることはなく、売り手企業は危機的な状況に追い込まれてしまいました」
今回のケースは、契約不履行を理由に買い手企業から株式を買い戻すことができたため、最悪の事態は免れました。もし、少しでも判断が遅れていれば、会社は倒産になっていたと可能性が高いそうです。
国も注意すべきポイントを挙げて注意喚起
国は何か対策をしていないんでしょうか??
植田「M&Aの仲介ビジネスは許認可が不要で、参入障壁が低いんです。ほとんどのM&A仲介会社が、個人の売上インセンティブ性を導入しており、そのような体質に問題があると言われています」
このような事態を受けて、中小企業庁も「中小M&Aガイドライン」というものを制定し、再発防止に努めるようM&A仲介事業者へ呼びかけを行っています。
北野「具体的にはどのようなことを?」
植田「M&Aにおけるリスク事項の説明、売り手側の経営者保証の取り扱いについて、早期に金融機関に相談を行うこと、不適切な買い手を排除すべく、買い手企業の調査や同業同士での情報共有の仕組みの構築等、策が講じられています」
ただ適切に買収を行っていた買い手企業さんにとっては、確認される項目が増えたり、 不注意で契約履行が漏れていたことを理由に不適切な買い手として登録されるリスクを負うことになってしまいました。
売り手企業さんが詐欺前提のM&Aに遭遇しないため、植田さんがまとめたポイントです。
①M&Aを依頼する会社、担当者の実績、経験、姿勢を調査すること
②買い手企業の調査を行うこと
③専門家(弁護士や税理士など)に相談をすることやセカンドオピニオンを求めること
北野「M&Aをご検討されている方は、いま一度お気をつけください!」
もし、今M&Aや事業承継など、何か相談や質問がある場合は、ぜひ一度問い合わせしてほしいと締めくくりました。
(葉月智世)
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