首里城からの便り~火災から6年ぶりによみがえった赤色の正殿お目見え
沖縄ばかりでなく、国内でも多くの人たちが涙した首里城の火災消失から、6年の歳月が流れた。2026年の秋の完成に向けて、着々と進む再建工事の中、首里城の象徴でもある正殿が、いよいよ色鮮やかな姿を見せた。
正殿などを焼失した大火

首里城で火災が起きたのは、2019年(令和元年)10月31日の未明だった。那覇市首里の高台にある首里城が紅蓮の炎に包まれて、正殿など7棟が全焼した。琉球の歴史や文化を継承してきた美術工芸品など400点も焼失した。その後の再建への動きは迅速だった。沖縄県だけでなく国も予算を計上し、同時に国内外から多額の寄付金も集まり、正殿の復元を中心とする、再建工事が進められてきた。
素屋根が取られ姿を現す

2025年(令和7年)10月末、復元が進められている正殿を工事中に覆っていた「素屋根(すやね)」と呼ばれる仮設の建物が取り払われた。それによって、焼失から6年、ついに鮮やかな赤色の正殿がお目見えした。すでに外観の工事は完了していて、内部での復元作業が続けられている。
首里城からの便りが届く

首里の友人から、そんな首里城の現在の様子について、名古屋で暮らす筆者の元にスマホで撮影した31枚の写真と共にメールでの便りが届いた。写真が撮影されたのは師走に入った午後、首里城の正殿は、雨上がりの中、真新しくも深みのある朱色の姿を見せている。首里城では、再建への歩みを一般公開する「見せる復興」を進めてきた。城が火災からよみがえる様子を、日々多くの人に見てもらい、琉球の歩んだ歴史や文化をあらためて知ってもらおうという画期的な試みだった。見学デッキの向こうに姿を見せた新しい正殿に、訪れた人たちがスマホで撮影する風景の写真もある。
赤い色が海に映える

赤瓦が美しい屋根の上には、竜の装飾や、獅子が描かれた鬼瓦も設置されているそうだ。首里城公園で最も眺望がいい「東のアザナ」からの写真では、バックに沖縄の海を背負って、正殿が誇らしげに全貌を見せている。筆者自身も、正殿の焼失後に度々訪れて、この場所に立ったが、よみがえった正殿の姿には、写真とは言え、とても感慨深いものがある。城の周囲にある門の向こうに、正殿の赤い色の屋根が見える写真もあり、首里城全体の風景が“主役”の登場によって、一段と存在感を増しているようだ。
防火設備も充実へ

新しい首里城には、火災の教訓から初めてスプリンクラーが設置された。琉球王国だった1429年に、時の王によって建てられた首里城は、政治、経済、そして文化が営まれていく琉球の象徴だった。しかし、1945年(昭和20年)太平洋戦争の沖縄戦や6年前の火災など、これまで5回も焼失している。「もう二度と惨禍は繰り返さない」と、この秋も再建中の建物などで、消火訓練が行われた。
今後は、2026年秋に向けて、正殿内部の装飾や周辺の整備が続いていく。首里城の「見せる復興」のゴールも近づいている。“首里城からの便り”を読みながら、今すぐにでも沖縄に飛んでいきたくなる師走である。
【東西南北論説風(650) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】



