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米軍がイラン核施設を空爆。ホルムズ海峡封鎖なら日本経済に打撃も

米軍がイラン核施設を空爆。ホルムズ海峡封鎖なら日本経済に打撃も

アメリカ軍が日本時間の6月22日、イランの核施設3カ所を攻撃しました。アメリカのドナルド・トランプ大統領は核施設の完全破壊と作戦成功を主張しています。イスラエルがイランに先制攻撃を行なってから1週間あまり。アメリカが軍事行動に踏み切ったことで、中東情勢は一段と緊張感を増しています。6月23日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が、トランプ大統領の判断と今後の中東情勢について詳しく解説しました。

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2週間の猶予から2日での決断

アメリカは以前、イランに対する攻撃について2週間以内に決めるという方針を示していました。

トランプ大統領は攻撃の是非について悩んでいたとされていますが、その発言からわずか2日後に攻撃が実行されました。このタイミングでの決断は予想外といえます。

激化する中東情勢に対して、アメリカがどう介入するか、あるいは介入しないのかが大きなポイントとされていました。結果的にアメリカは、このような形で軍事行動に踏み切ったのです。

実はアメリカは、イランと協議の場を設けていました。ところが協議中にイスラエルが攻撃を開始し、それが予想以上の成果を収めたことがトランプ大統領の判断に影響を与えました。
 

トランプ大統領のジレンマ

トランプ大統領の岩盤支持層は、アメリカが外国に軍事介入することに反対しており、アメリカ第一で国内問題に注力することを求めています。

一方、トランプ大統領は関税問題やガザやウクライナ情勢への対応では思うような成果を上げられずにいました。

そんな中、イスラエルは「モサド」という秘密情報機関の工作員を事前に送り込み、イラン側の重要人物の居所を把握し、そこをピンポイントで攻撃。イランの最高指導者・ハメネイ師の側近と言われる人物を次々に殺害し、大きな成果を上げました。

イスラエルの攻撃が予想以上の成果を収めている状況を目の当たりにし、今なら自分も参加して政治的成果を得られるタイミングだと判断したのではないか。石塚委員はこう分析します。

バンカーバスターによる精密攻撃

今回の攻撃では、地下深くまで潜って爆発する「バンカーバスター」という特殊な爆弾が使用されました。これはアメリカ軍だけができる技術で、50~60メートルの地下まで潜って爆発させることができるものです。

バンカーバスターを運搬できるステルス爆撃機B-2もアメリカだけが保有しており、2発ずつ搭載した7機がアメリカ本土から出撃しました。空中給油を行ないながら、どこにも着陸することなく長距離飛行を続け、秘密裏に攻撃を実行しました。

攻撃対象となったフォルドゥの核施設は地下深くに設置されていましたが、濃縮ウランなど核兵器転用が可能な物質は事前に他の場所に移送されていたとみられます。そのため実際の損害状況は明らかになっていません。

イランの多様な報復選択肢

イランは当然、全力で抵抗するという姿勢を示しています。

最も可能性が高いのはイスラエルへの報復攻撃で、実際にすでに開始されています。イスラエル側はイランのミサイル施設を相当破壊したと主張していますが、依然としてイランからのミサイル攻撃が続いていることから、完全には叩けていないことがわかります。

イスラエル側は防空システムを構築しており、大概のミサイルは撃墜できるとしていました。しかし、若干着弾するミサイルもあるため、イスラエルもそれなりの被害を受けている状況です。

もうひとつの選択肢は、アメリカを対象にした攻撃です。中東にはアメリカ軍の施設や基地が数多くあり、ここに報復攻撃をするようなことがあれば、いよいよ大きな戦争に発展する可能性もあります。

しかし、サウジアラビアなど中東諸国には多数のアメリカ軍基地がありますが、これらの国は将来的にイランの協力国となる可能性もあります。これらの国内にあるアメリカ軍基地を攻撃すれば、その国の領土を攻撃することになるため、イランにとって難しい判断となります。

間接攻撃とホルムズ海峡封鎖

もうひとつ考えられるのは、イランが「ハマス」や「ヒズボラ」といったイスラム教系の支援組織を利用した間接攻撃です。イランは従来から、自国が直接軍事行動を取るのではなく、支援する組織に攻撃を実行させるという手法を使ってきました。

しかし現在、これらはガザでの戦闘などによりイスラエルから大きな打撃を受け、相当に弱体化しています。

最も世界経済に大きな影響を与える可能性があるのが、ホルムズ海峡封鎖です。ペルシャ湾の出口であるこの海峡が封鎖されれば、原油輸送が停止し、世界経済に深刻な影響を与えることになります。

封鎖を実行しなくても、その可能性を示唆するだけで十分な効果があります。

また、現在は攻撃用ドローンが普及しているため、この海域を通過するアメリカ系のタンカーや船舶に対してドローン攻撃を仕掛けるという選択肢も考えられます。

日本の原油輸入の大部分がホルムズ海峡を通過するため、この地域の情勢悪化は日本経済に直接的かつ深刻な打撃を与える可能性があります。

中東情勢激化でウクライナ問題に影響

この状況を受けて、ロシアのプーチン大統領が仲介を申し出ていますが、ロシア自体がウクライナ問題を抱える中で、その実効性には疑問が残ります。

また、中東情勢の激化により、世界の注目がウクライナ問題から逸れる懸念もあります。

中東情勢は今後どのような展開を見せるのか、イランの出方次第では世界経済にも深刻な影響を与えることになりそうです。
(minto)
 

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