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カオス×ユーモア×不条理!高校生パーソナリティが語る「一條次郎」ワールド

カオス×ユーモア×不条理!高校生パーソナリティが語る「一條次郎」ワールド

CBCラジオ『たっちゃん部』は、愛知・岐阜・三重の3県の高校生たちによるラジオ番組コンテスト「トーク甲子園2024」優勝者にして現役高校2年生のたっちゃんが、「たっちゃん部」部長として自由気ままに活動する放課後青春バラエティ番組です。2月18日の放送では、たっちゃんが好きな小説家・一條次郎さんの魅力について語りました。

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伊坂幸太郎さん推薦の一冊

たっちゃんが一條次郎さんの作品を初めて手に取ったのは中学2年生の頃。それが『レプリカたちの夜』でした。

書店の文庫本コーナーで目に留まったのは、青い表紙に白クマが描かれた平積みの一冊。帯には伊坂幸太郎さんによる「とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました」という絶賛の推薦文が記されていました。

「こんなに有名な人が褒めているのだから面白いだろう」と思い読み始めたところ、その内容は衝撃的だったといいます。

意味不明なのに引き込まれる!

新潮社の書籍紹介ページにある、『レプリカたちの夜』のあらすじはこうです。

「動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。『シロクマを殺せ』と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む」

一見シリアスな物語に思えますが、実際には予想もつかない展開が次々と繰り広げられる、まさにカオスともいえる作品です。

たっちゃんは「意味は分からないけれど、妙に生々しく、小気味よいテンポのある物語の世界に引き込まれた」と語ります。

「わからない」楽しさ

『レプリカたちの夜』は「新潮ミステリー大賞」受賞作で、ジャンルとしてはミステリーに分類されます。

しかし最後まで謎が解き明かされることはなく、むしろ謎が深まっていくような展開が続きます。ただ、その謎が解けないことすら気にならなくなるほど、作品の持つ力に引き込まれていくのだと、たっちゃんは語ります。

「わからないことがこんなに楽しいなんて」という新鮮な読書体験を味わえる作品。ただし、一條次郎作品の中では特に難解な部類に入るため、「わからなくてもいいや」という気持ちで読み進められる方におすすめだといいます。

リアルとファンタジーのバランス

一條次郎作品の魅力について、たっちゃんは独特の世界観を挙げます。

「現実に近いような世界があるのに、どこか決定的に違うところがあるのではないか」と読者に感じさせる特徴的な描写。そうした表現によって生まれるリアリティと滑稽さの絶妙なバランスに、たっちゃんは強く魅了されています。

具体的で細かな描写を丁寧に積み重ねることで、存在しないものにも確かな生々しさが宿る。そんな表現技法にも深い関心を寄せています。

「知らないはずなのにわかる気がして、次へ進める」という不思議な感覚も作品の魅力のひとつ。その独特の違和感が、たっちゃんの心を掴んで離さないのです。

動物たちが織りなす異世界

一條次郎作品において、ファンタジー的要素を担うのが「動物」の存在です。書籍化された4冊すべてで、動物が重要な登場者として物語を展開させる役割を果たしています。特に短編集『動物たちのまーまー』ではタイトルにも動物が登場するほどです。

各作品の文庫版の表紙に、動物と機械的なモチーフが描かれているのが一條次郎作品の特徴。「動物が重要なキーになることを意識して読むと、より作品を楽しめるはず」とたっちゃんは語ります。

例えば『ざんねんなスパイ』に登場する巨大なリス「キョリス」(巨大の「キョ」とリスを組み合わせた名前)について。作中では、その名前が提示された後、まるで当然のように「キョリス」という前提で物語が進みます。一條次郎のそんな大胆な表現力に、たっちゃんは心を奪われています。

衝撃のキャラクター・キョリス

物語の序盤、巨大怪獣のような敵として登場したキョリスは、後半で一転、田舎のチンピラのような口調で会話を始めます。「なんだこいつは!」と驚きながらも、読者はわずか数ページでその設定を受け入れてしまう。そんな不思議な存在感を持つキャラクターです。

こういった意外性のある動物描写が、一條次郎作品ならでは。「可愛くないリス」という意外な外し方にも魅力を感じたと、たっちゃんは語ります。

そんなキョリスが登場する『ざんねんなスパイ』は、たっちゃんが「最も好きで、かつ最も万人におすすめできる」一冊です。ハートフルでありながら、コミカルな要素や風刺も含まれ、「読んでいて楽しい遊園地のような作品」だと表現します。

至高の娯楽がここにある

長編3作目の『チェレンコフの眠り』では、表紙のアザラシがメインキャラクターとして登場します。

「また変なのを見せてくれるんだろう」と期待して読み始めたたっちゃんでしたが、予想外の「ええ話」で、思わずジーンとしてしまいました。「こんな表現もできるんだ」と新たな一面を発見した、ハートフルな物語を好む人におすすめの一冊です。

一條次郎は才能あふれる作家で、現在までに発表された作品は、長編3冊と短編集1冊の計4冊です。全作品が文庫化されており入手しやすく、分量も手頃なため、今から読み始めるのにちょうどいいとたっちゃんは提案します。

たっちゃんが強調するのは「結局のところ、これは娯楽小説」ということ。

特別な学びを得られる作品ではないかもしれませんが、その世界に浸ることで質の高い現実逃避が味わえる。そんな楽しさを多くの人に知ってほしいと、たっちゃんは考えています。
(minto)

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