AIリスクを考える。ノーベル物理学賞受賞者の不安とは?
2024年のノーベル賞の発表が、10月7日から始まっています。人類の発展に貢献した人たちを賞賛するとともに、未来への可能性と期待をあらわす世界で最も権威のある賞として、受賞者が誰になるかが注目されています。10月9日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、つボイノリオと小高直子アナウンサーがノーベル物理学賞について取り上げました。人類のさらなる進歩と飛躍に胸が躍る一方で、輝かしい功績を収めた受賞者には懸念もあるようです。
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10月8日に発表された2024年のノーベル物理学賞は、米プリンストン大学のホップフィールド名誉教授と、カナダのトロント大学のヒントン名誉教授に授与されました。
その内容は、「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明」というものです。
「人工ニューラルネットワーク」とは脳の神経細胞の刺激が伝わる仕組みをもとに、コンピュータ内に情報処理のネットワークを構築したものなのだそうです。
専門的な話の内容に「?」をいっぱい浮かべるつボイと小高。
「簡単に言うと、人間の脳の機能をまねした機械を開発したということです」(Aさん)
小高「わかりやすっ!」
昨今様々な分野でみられるようになった「生成AI」の、元の元となった研究です。
この人工ニューラルネットワークを利用してAIに学習をさせることによって、AIは爆発的な能力向上を果たしました。
画像認識や機械翻訳、自動運転の物体認識や対話型AIなどなど、実は私たちの生活の周りには人工ニューラルネットワークによって便利になったものが溢れています。
ノーベル賞を受賞したふたりの研究は、すでに大きな利益をもたらしていると言えます。
「AIの父」の懸念
その功績から、「AIの父」と言われているヒントン教授。
彼の発明は世の中のあらゆるものをより便利に、より快適に使うことができる可能性を秘めた素晴らしいものです。
しかし教授は、インタビューの中でこう答えているそうです。
「この技術は人々の知的能力を超えることになるでしょう。ほぼすべての産業で効率化がなされるでしょうが、私たちは自分たちよりも賢いものを手にした経験がなく、制御不能なAIの脅威など、いくつかの悪影響についても心配しなければなりません」
ノーベル賞を受賞したことも、研究が世に広まっていくことも嬉しく思うと同時に、自分たちよりも賢いシステムがコントロールを獲得することを懸念しており、複雑な心中を明かしたようです。
「結局使うのは人間」
つボイ「これ、科学者がいつも思うことです。古く言えばダイナマイトや原子爆弾を発見した人も同じ気持ちを持っているのではないでしょうか。
『これはとんでもないことに使われてしまうのではないだろうか』というのは、開発した科学者が自分の発明品について常に思うことなのではないでしょうか?」
このつボイの意見を受けて、小高もこう語ります。
小高「研究として素晴らしいものを作るんだけど、それが世の中に悪い影響を与えてしまうということもある。もちろん悪いことだけじゃなくて、いい面があるから研究するんだけど。
でも結局使うのは人間なので、本当はいいことに使ってほしいんだけど悪い方向に使われてしまうこともある。そうすると後悔に代わっていくんでしょうね」
こうした心中の複雑さが、ヒントン教授のインタビューに懸念として表れているのかもしれません。
小高「ただ今回のノーベル賞のこうした研究をもとに、より新しく、より世の中のためになってみんなが喜ぶ使い方ができるよう研究している人もたくさんいるので、そういったところにも注目して応援することも必要になってきますよね」
素晴らしい発明や技術が人々の幸福の追求のために活用されることが、ノーベル賞を受賞した方にとっては一番の誉れなのかもしれません。
理性ある人間として、AIを賢く使う立場でありたいものです。
(吉村)