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沖縄県議選で玉城デニー知事の与党が敗北、辺野古そして経済問題の行方は?

沖縄県議選で玉城デニー知事の与党が敗北、辺野古そして経済問題の行方は?
CBCテレビ:画像「石垣島」

今年も「沖縄慰霊の日」がやって来る。2024年(令和6年)、戦後79年目となる。太平洋戦争の沖縄戦が終結した6月23日を「慰霊の日」に定めたのは、本土に復帰する前のことだが、毎年この日が近づくと、遠く離れていても沖縄への思いが募る。

知事の与党が敗北

それを目前に、沖縄県政に大きな変化が生じた。沖縄にとっては梅雨明け間近、6月16日の日曜日、任期満了に伴う沖縄県議選の投開票が行われ、玉城デニー知事を支える与党が、自民党などの野党に大敗を喫したのである。沖縄県議会は全部で48の議席があり、これまで県政与党は24議席で、かろうじて過半数を守っていた。しかし、今回の選挙結果で、与党は議席を4つも減らして20議席となった。自民党も20議席、しかし野党系の無所属や中立の公明党を含めると過半数となった。自公が多数派勢力になるのは16年ぶりのこと。今後は「少数与党」体制となり、玉城デニー知事は厳しい立場に追い込まれることになった。

支持率低迷の自民が勝った

CBCテレビ:画像「沖縄県庁」

いわゆる“裏金”問題を抱えている自民党の支持率低迷は続き、全国的に選挙では軒並み苦戦している。しかし、今回の沖縄県議選では勝利した。なぜか? ひとことで言えば、「国政」というより「沖縄独特の理由」によるものであろう。まさに“地域選挙”の姿だった。逆に、沖縄県議選で自民党が勝ったからと言っても、全国的に支持率が上がるものでもないだろう。そんな今回の選挙結果については、沖縄県が抱える2つの理由が浮かび上がる。

辺野古をめぐる変化

ひとつは、辺野古埋め立て問題に対する県民の受け止め方である。玉城デニー知事は、故・翁長雄志前知事の後継として、2018年(平成30年)に知事になった。現在2期目である。翁長前知事と同じく、米軍普天間飛行場の辺野古沖への移設に反対してきた。しかし、移設を進める国は、その年の暮れに埋め立て工事を始めた。その後、県は工事を差し止める裁判でも負け続けた。2024年1月からは、“マヨネーズ並み”と言われる軟弱な海底地盤を補強する工事も始まった。その間、2019年には辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票が行われ、7割を超える人が「埋め立て反対」の意思を示した。しかし、政府の主導による工事は着々と進んだ。そんな状況から、県民の中には「工事はもう止まらない」という諦めムードが出てきている。

経済問題への強い思い

CBCテレビ:画像「新型コロナ禍当時の那覇市・国際通り」

もうひとつは、沖縄県の抱える経済問題がある。新型コロナウイルス感染拡大の影響による観光業の大きな打撃、さらにそれに続く物価高などが沖縄の経済を直撃した。那覇市の中心にある国際通りでも、長年営んできた店を閉める人の姿も多く見られた。政府からの沖縄振興予算も減らされるなど、県民の間では「経済こそ大切。辺野古だけが問題ではない」と不満の声も出ていた。有権者の中には、若い世代を中心に「基地問題より暮らし」という考えも増えている。今回の選挙戦、自民党の候補たちが訴えたのは「地域振興」だったそうだ。

知事の支持母体も揺らぐ

辺野古問題と経済問題に加えて、翁長前知事、そして玉城デニー知事を支える「オール沖縄」という勢力にも変化があった。当初は沖縄経済界のトップらが、保守も革新も関係なく、その名の通り“すべて1つの沖縄”としてまとまっていたが、辺野古問題が動かず、経済が衰退する中で、次第に離脱する人が増え始めた。そのため「オール沖縄」の勢いにも翳りが見られるようになった。それも今回の敗北の一因であろう。

沖縄を取り巻く動きが加速?

CBCテレビ:画像「石垣島の中心街」

少数与党となった玉城デニー県政、今後の行方は厳しくなりそうだ。「求心力が落ちる」というより、まず目の前のハードルは「議会との向き合い」である。予算をはじめ、様々な政策が認められない可能性があり、玉城知事にとって、自分がやりたい政策にも、手かせ足かせが加わる。辺野古問題だけではなく、今、沖縄県は、台湾で有事があった時に備える自衛隊の配備問題も抱えている。与那国島から始まり、石垣島など南西諸島への自衛隊の配備は、着々と進められているが、今回の選挙結果を受けて、政府にとってはこうした計画も進めやすくなると見られる。

忘れてはならないこと

今後の焦点は、2年後の2026年にある沖縄知事選。それに向けて、玉城知事はどう県政をリードしていくのか。これからの2年間も、辺野古の埋め立て工事は進められるし、自衛隊の配備も進んでいく。先日も政府は、台湾有事などの際の住民たちの避難先を明らかにした。沖縄県政が落ち着かない状態が続く中、沖縄を取り巻く環境は大きく変わっていこうとしている。しかし、これらは沖縄県民だけの問題ではなく、国民全体が見つめ、考え続けなければならない重要な課題であることに変わりはない。
                     
          
【東西南北論説風(501)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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