日本版「ライドシェア」発進!タクシー会社主導からの“全面解禁”が今後の注目
この新たなサービスは、今後どう成長していくのだろうか?一般のドライバーが自家用車などを使って有料で客を運ぶシステム「ライドシェア」が、2024年4月から日本でも始まった。しかし、日本版「ライドシェア」の形は、まだ定まったわけではない。
ライドシェアが始まった!
「ライドシェア」は、英語の「Ride(乗る)」と「Share(共有する)」を合わせた言葉で、ストレートに訳すと「相乗り」。車関連での「シェア」というと、すっかりおなじみの「カーシェアリング」が思い浮かぶが、こちらが「車の共有」ならば、「ライドシェア」は「乗ることの共有」、言わば“タクシー替わり”と言えようか。国土交通省は、全国の4つの地区で、サービスを解禁した。
愛知県でもサービス開始
全国で最初にスタートしたのは東京都で、4月8日からサービスが始まった。エリアは、東京23区、武蔵野市、三鷹市。タクシーが不足する「曜日」「時間帯」に限って、サービスが認められているため、例えば、月曜日の午前7時台から午前10時台とか、土曜日の午前0時台から午前4時台とかが稼働時間となる。東京の他、神奈川県、京都府、そして愛知県でも運行が認められており、名古屋市と近隣の瀬戸市や日進市など17市町村でも、4月26日からサービスが始まる。
世界のライドシェア事情
実は、海外ではすでに多くの国が「ライドシェア」を導入している。ヨーロッパの英国やフランスでは、個人タクシーのように、ライドシェアの運転手に管理責任を負わせている。また、米国やカナダなどでは、アプリ事業者がライドシェアの運転手を管理している。アジアのシンガポールでも、配車アプリの大手会社がサービスを行っている。全世界での「ライドシェア」の市場規模は、日本円で7兆円とも言われるなど、日本での導入は、海外から見れば、むしろ遅いくらいだったかもしれない。
理由はタクシー不足
日本での導入の背景には、タクシードライバー不足がある。3年余りに及んだ新型コロナウイルス感染拡大によって、タクシーの仕事を辞める運転手が増えた。法人のタクシー運転手は、全国で2割も減ったそうだ。2023年に新型コロナが季節性インフルエンザ並みの「5類」となり、経済活動も戻り、日本を訪れる外国人旅行者も一気に増えた。観光地でのタクシー需要は増えているが、タクシー自体の数が圧倒的に足りない。筆者も、沖縄に行った時に体験したが、沖縄で目立つ高齢のドライバーでハンドルを手放す人は多く、タクシーはかなり早めに予約しないと確保できなかった。そこで「ライドシェア」によって、タクシー不足をフォローすることになった。
日本はタクシー会社が主導
日本版「ライドシェア」には大きな特徴がある。まったくの一般ドライバーが客を乗せるのではなく、タクシー会社が主体なのである。ドライバーの資格も、普通免許の取得後2年以上、または、二種免許を持つ20歳から64歳などと決まっているが、安全運行の教育など事前の研修もタクシー会社が担当する。利用客は、タクシーと同じ「配車アプリ」を利用しなければならない。その際にアプリ内で、ライドシェアの配車でもいいかどうかの意思表明をする。どこからどこまで乗るかという発着点と運賃を事前に確定し、原則、キャッシュレス決済での支払いとなる。料金も、通常のタクシーと同じである。使用する車両も自家用車の他、タクシー会社が用意した車を使う場合もあるなど、日本版「ライドシェア」の姿は“タクシー会社と一体”なのである。
「全面解禁」を求める声
スタートしたばかりの日本版「ライドシェア」だが、実はまだ“第1段階”で、この後に“第2段階”が待っているようだ。2025年に万博を開催する大阪府や大阪市は、時間指定ではない24時間の運行や、タクシー以外の配車アプリも認めるよう要望している。実際、海外では、タクシー会社以外でも「ライドシェア」に参入できている。現状では“足りないタクシー数の補填”とも言えるが、海外並みの「全面解禁」を求める意見も多く、国の規制緩和推進会議では、6月にも何らかの結論を出す見通しである。
タクシー業界は慎重な姿勢
しかし、タクシー業界は、「ライドシェア」の全面解禁には反対している。運転手不足は明らかだが、人手不足を解消するための「ライドシェア」によって、タクシー会社の経営が圧迫されてしまうことは絶対に避けたいからである。それも“負のスパイラル”と言える。国内の移動の手段を確保しながら、同時に、既存のタクシー会社の労働力も確保し続けることができるのか。そんな中、東京都や愛知県に続いて、北海道の札幌市、さいたま市、福岡市などさらに8つの地域でも、2024年5月からサービスが始まる。
海外に続いて日本でも新たに導入されたシステム。国はきちんと実態調査を進めて、プラス面とマイナス面、現状分析と課題を把握しながら、多くの人が納得できる日本版「ライドシェア」を作り上げることが期待される。
【東西南北論説風(490) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】