CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

これは便利!コインランドリー驚異の成長に見る、戦後ニッポン暮らしの歴史

これは便利!コインランドリー驚異の成長に見る、戦後ニッポン暮らしの歴史
「ふとんランドリー併設型」提供:株式会社ソリッド

コインランドリーは米国で生まれた。1934年、テキサス州にコインを入れて使う洗濯機を並べたお店が登場した。当時は世界大恐慌の真っ只中、個人で洗濯機を買うことのできない人たちで人気を集めたと伝えられる。それが世界最初の「コインランドリー」と言われている。

「100円コインランドリー・1976年」提供:全国コインランドリー連合会

日本では、戦後の1953年(昭和28年)に、東京都品川区に、当時発行されたばかりの10円コインを使って“1回10円”で洗濯機を使用できる店が開店した。テレビ、冷蔵庫、そして洗濯機の電化製品「三種の神器」が一般家庭に普及し始める以前のことで、この有料洗濯機は多くの人に重宝された。この時に置かれていた洗濯機はまだ輸入物だった。

1970年代に入ると、日本でも「コイン式洗濯機」や「コイン式乾燥機」が開発されるようになって、町の公衆浴場にも置かれた。人々は銭湯にやって来るついでに洗濯物を抱えてきて、入浴時間を利用してコイン式の洗濯機で服などを洗った。これをきっかけに“外で”“お金を出して”“自分で”洗濯をするという、新しい生活習慣が日本の暮らしに入ってきた。やがて、この有料の洗濯機コーナーは独立した店舗になった。これが現在に通じる「コインランドリー」の始まりだった。

「郊外型コインランドリー・1994年」提供:株式会社ソリッド

最初は都市部が中心だったコインランドリー、ひとり暮らしや下宿の学生など、自前で電気洗濯機を持っていない若者たちが中心に利用した。その後、ふとんや毛布など大きなものも洗うことができる洗濯機がお目見えすると、それを設置した郊外型のコインランドリーが増えていった。大きな駐車場も完備された。スペースの事情もあって、大きな洗濯機を置くことはできなかったり、アパートやマンションだとモーターの音がうるさく、夜間には洗濯機を使いづらかったり、当時の住宅事情もあった。

「現在のコインランドリー」提供:株式会社ソリッド

そんな日本で、コインランドリーが飛躍的に成長した背景としては、お風呂文化でも見られるきれい好きな国民性と共に、洗濯機自体の技術革新があった。「洗濯乾燥機」の開発である。1回100円の単位で、家庭にはない強い火力のガスを使った乾燥機が使用できる。仕上げまで1時間ほどとあまり時間もかからない上、そのフワフワした仕上がり具合は、家庭ではなかなか出すことができない、コインランドリーならではの満足がいくものだった。人々は自宅に洗濯機がなくて利用するのではなく、コインランドリーを“選んで”利用するようになっていった。

「乾燥機が並ぶ現在のコインランドリー」提供:株式会社ソリッド

コインランドリーは日本でどんどん進化している。洗濯の待ち時間を楽しんでもらおうと、カフェを併設するランドリーも増えた。美味しいコーヒーと、有名ベーカリーのパンも用意されている。またペットの入浴サービスをするコインランドリーも登場した。洗濯物もペットも、帰る頃にはどちらもすっかりきれいになっている。洗濯が終わる少し前には、メールでお知らせが来るサービスもある。さらに専用のコールセンターも作られ、防犯対策も強化された。こうして洗濯の間に、コインランドリーを離れても大丈夫のように、サービスは向上されている。洗濯機や乾燥機のクオリティも、より快適に、より使いやすく開発が進んでいる。今や洗濯は自宅でするものではなく、コインランドリーで楽しみながらするものという時代が訪れた。

全国コインランドリー連合会によると、四半世紀ほど前の1997年(平成9年)には、およそ1万店舗ほどだった国内のコインランドリーの数は、2022年(令和4年)では2万5000店舗を超えたと見られている。

「令和スタイリッシュ」提供:株式会社ソリッド

コインランドリーは、ニッポンの住宅事情や家族事情を背景に、世界に誇るサービス向上によって飛躍的な進化を続けている。「コインランドリーはじめて物語」のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが“いつも洗い立て、フワフワの姿で”刻まれている。
          
【東西南北論説風(376)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。

この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP