子どもが安全に通えるように手掘りで造られた隧道!?新潟・旧山古志村の山中に眠る90年前に生まれた廃通学路とは
ミキの昴生と亜生がMCを務める、全国の道に特化したバラエティ番組『道との遭遇』。今回は、全国800か所以上の道を巡ってきた道マニアの石井あつこさんが、新潟県にある“廃隧道”を巡ります。※廃道は危険ですので、むやみに立ち入らないでください。
日本一長い手掘りの隧道「中山隧道」

石井さんが訪れたのは、新潟県長岡市。「ここは、かつて『山古志村(やまこしむら)』と言われていた場所。平成16年(2004年)の中越地震で甚大な被害を受けた場所でもあり、その爪痕が今も残る山域」と石井さん。
(道マニア・石井あつこさん)
「この場所から町に出るには大きな山を越えなければいけない。さらに、豪雪エリアだったということもあり、峠越えが長年の課題。そこで、安心安全な道を求めて、明治以降に何本も隧道が開削された」

長岡市の南部に位置する旧山古志村は、かつて村内に商店や病院がなく、険しい峠越えを強いられ、冬には4mを超える雪が積もり、雪崩の脅威と隣り合わせでした。そんな暮らしを変えたのが、一年を通して安全かつ安定して行き来できる“隧道”。今回は、人々の暮らしを支えた廃隧道を巡り、豪雪と戦ってきた旧山古志村と道の歴史を紐解きます。
まずは、石井さんが紹介したいという隧道へ。

長い手掘り隧道”を完成させました。
(道マニア・石井あつこさん)
「国道291号の中山トンネルが現役。その隣の中山隧道は、今は市道になっていて見学施設として公開されている」

この中山隧道の完成までの苦闘は、ドキュメンタリー映画として制作されるほど、地元の人達にとっては悲願の隧道でした。その歴史的価値から、土木遺産として保存されています。
今も使われる、150年前に造られた“水路隧道”
続いては、中山隧道の北へ。石井さん曰く、山古志の道の歴史を語る上で欠かせないという隧道を目指します。

現れたのは、明治時代に造られた“水路隧道”。山古志では棚田へ水を引く際、雪崩や落石による寸断を防ぐため、山を穿つ“山中の水路”が造られました。
その一つが、明治6年(1873年)に地元住民が完成させた、長さ250mのこの水路隧道。ここで培われた技術と経験が、877mの中山隧道の難工事を可能にしました。
厳しい自然の中で培われたこの知恵こそ、山古志独自の土木文化を支える礎となったトンネル造りの原点。この水路隧道は、新潟県中越地震でも崩落することなく、使われ続けています。実際に水路隧道の中を歩いてみると…

(道マニア・石井あつこさん)
「かつて山の向こう側にも田んぼがあり、そこで収穫された作物を運ぶために人も通った、水路兼人道の隧道」

隧道を抜けた先には滝のように山から水が流れ落ちており、「パイプで水を水路へ誘導している」と石井さん。「滝の水を150年前から上手に使っていたなんて。集落の方がここの水を守り、水路隧道を守っているのは愛だと思う」と言います。
雪崩から子どもたちを守るため造られた「廃通学路」

最後は、水路隧道の西に位置する梶金(かじがね)集落へ。13年前に石井さんが山古志を訪れた際、特に印象に残ったという廃隧道に向かいます。草木が生い茂る道をかき分けながら進むと…

(道マニア・石井あつこさん)
「藪に埋もれているが、子どもたちが小学校に行くために造られた『東(あずま)隧道』」

姿を現したのは、かつての廃通学路。梶金集落の子どもたちは、木籠(こごも)集落との間の谷底にある梶木小学校へ通うため、雪崩の危険と隣り合わせの険しい山道を越えていました。
そこで集落の人たちは、子どもたちが安全に学校へ通えるようにと山を穿ち、新たな通学路を造ることに。梶金だけでなく周辺の集落の人達が力を合わせて掘り進め、昭和10年(1935年)、峠越えに代わる「東隧道」を2年ほどで完成させました。
梶木小学校は昭和52年(1977年)に閉校し、震災によって跡地さえも失われてしまいましたが、東隧道は今もその姿を残しています。高さ1.8m×幅1.8mで造られたこの東隧道は、珍しい技術を使って掘られたそうで…

(道マニア・石井あつこさん)
「真っ直ぐ掘るため、鏡を使ったそう。隧道の入口に台を置いてその上に鏡を置き、自然光を反射させて奥を照らした。照らした場所を掘っていけば真っ直ぐになる」
高度な技術がない時代に、太陽の光と鏡を使って真っ直ぐに掘り進めた集落の人たちの知恵と工夫が感じられます。

隧道に入ると、内部には「昭和十年四月竣工」と書かれた扁額が。「今から約90年前。中山隧道と同時期、もしくはちょっと後に工事が始まったと思う」と石井さんは言います。

さらに、隧道の途中には謎の横穴があり、「倉庫みたい」と石井さん。「安心して通れるように蛍光灯が付いていたよう」と続けます。
地元の方によると、隧道を出た先の道は狭く、積雪時の通学は大変だったそう。

また、隧道内で見つけた謎の横穴は、隧道内の温度がほぼ一定であることから、冬場野菜などを保管する倉庫にしていたそう。他にもミツバチを越冬させるための飼育場所として使われたときもあったとのこと。
隧道のひとつひとつに込められた、山古志で暮らしてきた人々の想い。豪雪を生き抜いた知恵と歴史は、廃隧道となった今もこの地に確かに刻まれています。
CBCテレビ「道との遭遇」2026年8月25日(火)午後11時56分放送より





