「育休を取っていい?」から「どう支える?」へ。“対話”でつくる働きやすい職場づくりとは
職場で育休を取りたいと思いながら、「迷惑をかけてしまうのではないか」と躊躇したことはありませんか?育休を取得する本人だけでなく、送り出す上司にとっても、「どう仕事を回していくか」は悩ましいテーマです。
株式会社デンソークリエイト(以下、デンソークリエイト)では、男性の育休取得も当たり前になりつつあります。斎藤一哉さんが室長を務める生産革新部 先進技法開発室でも、「子どもが生まれます」という報告と、「育休を取ります」という言葉がセットで届くようになってきたといいます。
ただ、最初からそうだったわけではありません。
斎藤さん自身、10年以上前は後輩の育休取得に対して「仕事上、ちょっと厳しいんじゃないか」と思ってしまい、男性育休に対して前向きになれない気持ちがあったそうです。
身近な「隣の女性」が持つリアルな本音を伝え、「今」を生きる女性たちを応援したい—— そんな思いからCBCテレビが立ち上げた「me:tone編集部」。部下の育休取得に関して室長としてどう感じているのか、斎藤さんに率直な想いを伺いました。
後輩の男性育休に前向きになれない気持ちがあった、あの頃の後悔

今でこそ、男性育休を前向きに受け止め、「職場としてどう支えるか」を考えている斎藤さん。その背景には、自身の後悔があります。
斎藤さん:「僕自身は育休を取ったことがありません。でも、あの時取ればよかったと、今はすごく思います」
今から10年以上前の当時は男性が育休を取得することに対して、今ほど受け入れられる雰囲気ではなかったといいます。
ある時後輩から育休を取りたいと相談を受けた際、「ちょっと厳しいのではないか」とそう思ってしまい、男性育休に対して前向きになれない気持ちがあったそうです。
斎藤さん:「後輩が育休を取りたいと話してくれたときに、前向きに背中を押せなかったことを、今でも後悔しています」
育休に対する考え方が変わった背景には、自身の経験もありました。第2子が生まれる前、家族の事情で、仕事と育児をほぼ一人で担う時期があったそうです。朝5時頃に起きて洗濯をし、子どもの準備をして保育園へ送る。仕事をしながら育児をこなす日々が続き、体調を崩してしまいました。
斎藤さん:「これは無理だと思って、結局家族に頼りました。本当に大変でした。短い期間でも育休を取っていれば、もっと楽だったなと、すごく思いますね」
自分自身が追い詰められた経験が、部下に対する見方を変えていきました。
育休取得を前提に、職場でどう支えるかを考える

かつては男性育休が取りづらかったと話す斎藤さんですが、現在は職場の空気も大きく変わりました。チームでも、今では格段と取りやすくなり、今年は男性社員2名が育休を取得する予定です。
斎藤さん:「もう、”取っていいか悪いか”という話ではないですね。取ることを前提に『どうしていこうか』と、取得後を見据えて話が始まる感じです」
一方で、育休取得によって業務調整が必要になる場面もあります。
半年近く育休を取得する社員がいれば、チーム内で仕事をどう分担するかを考えなければなりません。重要な役割を担う社員が抜ける場合は、調整が大変だと思うこともあるそうです。
me:tone編集部:「部下が育休を取得すると、業務面では大変さを感じることはありますか?」
斎藤さん:「正直、調整が大変な面もあります。でも、そこは見せないようにしています」
チーム内だけで調整が難しい場合は、部署やチームを越えて人員を融通し合うなど、会社全体で支え合う体制を取っています。300人規模の会社だからこそ、柔軟な助け合いができると斎藤さんは話します。
会社が「育休を取ること」を前提に動き、身近に取得者が増えていく。その積み重ねによって、「育休を取ってもいいんだ」という空気が少しずつ広がっていきました。
困ってからではなく、変化に早く気づくために

育休や働き方の話に限らず、斎藤さんが日頃から大切にしているのが、メンバーの小さな変化をいち早く気づくことです。
その取り組みの一つが、月1回、全社員を対象に実施しているアンケート。「楽しさ」や「やりがい」などについて回答するもので、自由にコメントも書き込めるようになっています。
斎藤さん:「スコアがガクンと落ちている人や、コメントに少しつらそうなことを書いている人がいたら、声をかけています」
このアンケートは上層部も確認しており、気になる変化があれば、「早めに声をかけてあげて」と連絡が来ることもあるそうです。
さらに、月1回の1on1面談も実施。業務上の困りごとだけでなく、キャリアの希望や、今後どのような仕事に挑戦したいかについて話す場にもなっています。
斎藤さん:「つらいと思っていることがあれば、できるだけ取り除いてあげたいと考えています。キャリアの希望を聞いて、配置や業務の役割を変えることもあります」
アンケートや面談は、あくまで”きっかけ”。
そこから声をかけ、話を聞き、必要があれば働き方や役割を見直していく。その丁寧な対話が、働き続けやすい職場づくりの土台になっています。
テレワーク時代だからこそ、顔が見える関係をつくる
コロナ禍をきっかけに、デンソークリエイトでも在宅勤務が広がりました。現在も多くの社員が、テレワークを取り入れながら働いています。
一方で、在宅勤務が増えることで、社員同士の関わりが薄くなりやすい側面もあります。
複数のプロジェクトが並行して動いているため、プロジェクトが異なると、同じチームでもほとんど会話をしないケースもあるそうです。
そんな環境だからこそ、斎藤さんは「基本的な関係づくり」を大切にしています。
斎藤さん:「本当に基本的なことですが、顔と名前、そして人となりを一致させることが、チームワークの一丁目一番地だと思っています」
誰がどんな仕事をしているのか。どのような人なのか。困ったときには誰に相談すればいいのか。それが分かっていれば、プロジェクトやチームを越えて相談しやすくなります。
300人規模の会社だからこそ、「全員が知り合い」くらいの感覚でいたい――。テレワークが進む今だからこそ、ヒトとのつながりをより大切にしているのです。
髙木さんの経験を、次の世代につなげる

働きやすい職場をつくるうえで、制度だけでなく、「人と人をつなぐこと」も大切です。斎藤さんは、若手女性社員へのサポートとして、前編に登場した髙木さんと話せる場を設けたことがあります。
斎藤さん:「ロールモデルとなる人の話を聞くことで、自身の将来を具体的に考えるきっかけになるかなと思って、髙木さんを招いて”女子会”のようなものを企画したことがあります。『実際、時短勤務ってどうなんですか?』みたいな話を、ざっくばらんにしてもらいました」
職場の先輩に気軽に相談できる場があるだけでも、「これからどう働きたいか」を考えるきっかけになるのかもしれません。
時短勤務やフレックス制度を活用しながら働き方を切り拓いてきた髙木さんの経験は、これから子育てやキャリアに向き合う社員たちにとって、大きな道しるべになっています。
また、斎藤さんが大切にしているのは、「誰か一人が頑張る」のではなく、「チームで支え合うこと」です。仕事を任せたいと思う人について尋ねると、2つのポイントを挙げてくれました。
斎藤さん:「主体性があること。そして、チームワークを大切にしてくれることですね。自分の仕事だけ終わらせて終わりじゃなくて、困っているメンバーがいたら声をかけられる人に、仕事を任せたいと思います」
自分の仕事に向き合いながら、周囲の状況にも目を向ける――。そうした一人ひとりの関わりが、チームの支え合いを育んでいます。
正解がないから、柔軟に変化していく

前半で紹介した髙木さんは、前例のない時短勤務を、上司や周囲と相談しながら形にしてきました。フレックス制度をどう使うのか、限られた時間の中でどう仕事を進めるのか。そうした試行錯誤の経験が、今では後輩たちにとってのロールモデルになっています。
斎藤さん自身も、少しずつ変化してきた一人です。
「ちょっと厳しいんじゃないか」と言ってしまった頃から、「育休を取るなら、どう支えようか」と考えるようになった背景には、自身が体調を崩した経験や、育休を取得する仲間が増えてきた環境がありました。
正解がないからこそ、対話を重ねながら柔軟に変化していく。
髙木さんも、斎藤さんも、その試行錯誤の中で今の働き方をつくってきました。
誰かが一歩踏み出し、周囲が受け止め、また次の誰かへとつながっていく。
そんな循環が、デンソークリエイトらしい”働きやすさ”を形づくっているのかもしれません。
番組紹介
働く女性のリアルな声を届けるWEBメディア『me:tone』。
名古屋を起点に、座談会や美容・キャリア・お金の話題まで、身近で共感できる情報を発信し、女性たちの「今」を応援します。
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