夜の“灯(ともしび)”を絶やさないために。「夜泣きカフェオリヅロウ」を地域で支える人たち
「夜泣きカフェオリヅロウ」は、夜泣きに悩む親子が一緒に夜を過ごせる場所です。前半では、「オリヅロウ」が「今夜を乗り越えるための“灯(ともしび)”」として、親子にどのような場を届けているのかを紹介しました。
しかし、その活動は、思いだけで続けられるものではありません。夜間に母親と赤ちゃんを迎えるからこそ、場所の選び方や防犯面など、確認すべきことがひとつひとつあります。そして、その周りには、自分にできる形で活動を支える人たちがいます。
身近な「隣の女性」が持つリアルな本音を伝え、「今」を生きる女性たちを応援したい——そんな思いからCBCテレビが立ち上げた「me:tone編集部」が、夜泣きカフェを運営する朝倉博巳さんと荒井智子さん、そして活動を支える人たちに話を伺いました。
活動を広げるために、安心できる形を大切に

夜間に親子を迎える以上、運営には責任が伴います。たくさんの人に来てもらうことよりも、まずは安心して過ごせる場所にすることを、2人は大切にしています。
荒井さん:「本当は、夜泣きに悩む親子全員を助けたいんです。でも、人員は限られているので、まずは自分たちの動ける範囲で開催しています」
会場は、協賛先や協力者から提供された場所です。ただし、「使っていい」と言われた場所なら、どこでもよいわけではありません。広さは十分か。赤ちゃんが過ごすうえで危険はないか。ベビーカーで来やすいか。2人は実際に足を運び、環境を確認してから開催を決めています。
また、「オリヅロウ」は託児所でも宿泊施設でもありません。母親と赤ちゃんは同じ空間で過ごし、宿泊ではなく、必要に応じて仮眠を取る場です。飲食のルールも含め、関係する決まりをそれぞれ調べながら、運営の形を整えてきました。

「オリヅロウ」の活動がメディアで紹介されたこともあり、夜泣きカフェへの関心が広がっていると感じる一方で、2人には気がかりもあるといいます。
荒井さん:「『場所があれば簡単にできそうだ』と思って、安易に広がってしまうのは怖いんです」
活動が各地に広がることは、2人とも願っています。ただ、住所の伝え方、赤ちゃんへの関わり方、場所の安全性や運営方法など、親子の安全を守るための確認は欠かせません。安心して活動を広げるためには、運営上の基準やガイドラインも必要ではないかと考えています。
朝倉さん:「夜泣きカフェを広く知ってもらうことと、安全に運営することをどう両立させるか、今も模索しています」
夜泣きだけではない不安を、次の支援につなぐ

「オリヅロウ」に来る母親が抱えているのは、夜泣きの悩みだけとは限りません。眠れない日が続く中で、育児の不安、体調のつらさ、預け先の悩み、気持ちの落ち込みなどが重なっていることもあります。
だからこそ、「オリヅロウ」はその場だけで完結する支援ではなく、産婦人科や産後ケア、託児など、必要な支援につなぐ入り口にもなりたいと2人は考えています。
荒井さん:「『少し子どもを預けて、美容院に行ってみたら』と、託児の情報を伝えることもあります」
自分のために時間を使うことも、大切な選択肢の一つです。荒井さんは、夜泣きカフェを「架け橋」にしたいと話します。すべてを抱え込まないために、必要な支援先へつなぐことも、「オリヅロウ」の役割です。
それぞれの「得意」を持ち寄って、活動を支える

「オリヅロウ」の活動は、思いに共感した人たちの協賛に支えられています。関わり方はさまざまですが、共通しているのは、それぞれが自分の経験や得意なことを、無理のない形で持ち寄っていることです。
おむつや粉ミルクなどを提供している「有限会社サンハイム」の西山裕子さんは、自身も子どもの夜泣きに3年間悩んだ経験があります。眠れない日が続き、感情のコントロールがきかなくなったこともあったそうです。つらい夜に誰かがそばにいてくれることの大切さが分かるからこそ、「頼れる場所があれば、どんどん頼って、息抜きしながら過ごしてほしい」という思いを物品に込めています。
歯ブラシセットを提供する「こどもGROWオーラルセラピークリニック」の細川史磨子院長は、子どもの歯磨きに悩む親が「一度相談してみようかな」と思えるきっかけになればと考えて協賛を決めました。「子育て世代が孤立しないよう、企業が子育て支援の場に関わって継続的にサポートしていくことが大切」だと話します。
「ココカラウィメンズクリニック」の伊藤加奈子院長は、利用する母親の相談に応じています。子育てのいちばん大変な時期に、夜泣きカフェのような頼り先が増えることは、産後うつの予防にもつながると、医師の立場から感じているそうです。
伊藤院長:「子どもは社会で育てるもの。支援の輪が広がって、みんなで汗をかけるといいですね」
朝倉さんの友人でもあり、フォトスタジオの設計などを手掛ける「AZ antiques japan」の才原かずきさんは、困ったときに力を貸せるよう、そばで活動を見守っています。協賛の理由を尋ねると、返ってきたのは「運営者が本気だからです」という一言でした。
才原さん:「子どもは宝と言いますが、母も宝です」
かつて同じ夜を過ごした人。専門性を持つ人。友人として見守る人。さまざまな人が運営を支えています。産後の夜のつらさは、渦中を過ぎると少しずつ忘れられていくものかもしれません。それでも、思い出して手を差し出す人たちがいて、その一つひとつが、活動を続ける力になっています。

子育て支援は、まず知ることから始められる
「地域で子育てを支える」と聞くと、特別な制度や大きな支援を思い浮かべ、自分にはできることがないと感じる人もいるかもしれません。しかし、「オリヅロウ」を支えているのは、「うちも大変だったから」という記憶や、「これならできる」という小さな力の持ち寄りです。
協賛者の才原さんは、子育て支援に関心を持つ企業へ、こう伝えます。
「まずは知ることから。そして、知ろうとすることから」
「いつか終わる」と分かっていても、つらいのは今夜です。その気持ちを知ろうとすることが、支援の入り口になるのかもしれません。
「オリヅロウ」の“灯(ともしび)”は、誰か一人の大きな力ではなく、それぞれが差し出した小さな力によって支えられています。

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