歳をとって気になる身体の変化
サマリーSummary
ゲンキリサーチャー:なすなかにし
ドクター:東京医科歯科大学 大学院 総合診療医学分野 教授 医学博士 竹村洋典 ほか
歳をとって気になる身体の変化①「若い子の顔が見分けられない」
アイドルの顔の区別がつかないなど、若い人の顔が見分けられなくなったという経験はありませんか?先生によると、これは若い人との交流が減り顔を見慣れていないためなのだとか。私たちは、よく見慣れた顔であればあるほどしっかりと識別できて、あまり見慣れていないものはなかなか見分けがつかないそうです。そのため、若い人の顔が見分けられないのは、歳をとれば誰にでも起こる事。健康に問題はないそうです。
<要注意!脳梗塞・脳出血が原因で顔の区別がつかない事も>
顔の認識に重要な役割を果たす脳の紡錘状回に脳出血や脳梗塞が起こると、顔の区別がつかなくなる事があるそうです。下記のような症状が現れたらすぐに病院を受診しましょう。
・急に顔の見分けがつかなくなった
・ぼっーとしたり、話が噛み合わなかったり、明らかに様子がおかしい
歳をとって気になる身体の変化②「絶叫マシーンが苦手になった」
先生によると、絶叫マシーンや高所などが苦手になるのは人生経験を積んだため。子どもの頃に比べて怖さなどを知っているので、恐怖心を抱くのはごく自然な事なのだとか。ただし、若い頃のように好奇心を持ち続ける事はとても大切。脳のためにも、新しい事に挑戦すると良いそうです。
歳をとって気になる身体の変化③「腕が後ろに回らない」
先生によると、歳を重ねて運動をする機会が減ったり、姿勢が悪い状態が続いたりすると、肩の筋肉の部分のファシアが固くなり動かしにくくなってしまうそうです。ファシアとは、全身の臓器・骨・筋肉などを覆う薄い膜のような組織の事。固くなっている場合は、体操などで改善が期待できるそうです。ただし、何かのきっかけで痛みが急に出た場合や、腕を上げた時に痛みがひどくなる場合は要注意!五十肩や肩の関節や腱板に問題がある可能性があるので、医師に相談してください。
<ドクターおすすめ体操①肩甲骨周りのファシアをほぐす方法>
▼両ひじを肩くらいの高さまで上げる
▼ひじを外へ広げて肩甲骨を寄せるようにする
▼寄ったところで5秒間キープする
上記を1日に2〜3回行うとより効果が期待できます。肩こりの方にもおすすめだそうです。痛みがある方は、無理のない範囲で行なってください。
<ドクターおすすめ体操②腕のファシアをほぐす方法>
▼両手を外に広げる
▼そのまま親指を上に向けて後ろにひねる
▼ひじを伸ばしたまま5秒キープする
▼今度は親指を下の方に向けて小指を前に出す
※このとき背中は軽く丸くすると良いそうです
▼小指を前に出した状態で5秒キープする
こちらの体操も1日2〜3回行うと効果的です。痛みがある方は、無理のない範囲で行なってください。
<治療時間わずか1分!肩こりの治療法>
肩こりがひどい人のなかには、体操だけではなかなか改善しない人もいます。そんな方のために「ハイドロリリース」という最新の治療法があるそうです。治療時間はわずか1分、ファシアの固くなった部分に痛みを緩和する薬を混ぜた生理食塩水を注射します。すると、重なり固くなった部分がはがれて、肩の動きがよくなり痛みも軽減するそうです。
歳をとって気になる身体の変化④「味の好みが変わった」
先生によると、嫌いなものが食べられるようになるのは歳とともに脳がその味を学習し、味の評価が変わってきたためとの事。健康への問題は特にないそうです。
<気をつけるべき味覚の変化>
年齢とともに、味を感じている舌の味蕾は数や感度が低下していきます。特に「塩辛い」という味覚が衰えていくそうです。味覚が変わると食が細くなって痩せてしまったり、より塩辛い味付けを好んで血圧が高くなったりする事もあるため、味噌汁などの味を薄く感じはじめたら注意が必要だそうです。
歳をとって気になる身体の変化⑤「独り言が増えた」
言葉には、頭の中で考える「内言語」と実際に口で話す「外言語」があります。先生によると、内言語の容量には限界があるため、年齢とともに記憶力が低下すると外言語として漏れてしまうのだとか。記憶で保てない言葉を確かめるために言語化しているので、特に心配はないそうです。
<こんな独り言は要注意!>
独り言のなかでも、下記のような独り言の場合は認知症などによる精神疾患が疑われるため注意が必要だそうです。
・場にそぐわない独り言
・マナーから外れた独り言
・人を不快にする独り言
歳をとって気になる身体の変化⑥「アレルギーになった」
私たちは、年齢とともにアレルゲンとなるさまざまな物に触れたり、吸い込んだりしています。すると、体内の免疫細胞が刺激され続け、人によってはアレルギーを起こしやすくなってしまうのだとか。実際にアレルギー性鼻炎や喘息は20歳以降、歳とともに増える傾向にあるそうです。
<日頃の身体の変化に注意を!>
アレルギー症状のなかには、血圧が急激に下がって意識がなくなるアナフィラキシーショックや呼吸不全など、命の危険があるものもあります。また、アレルギーによる喘息にも要注意。高齢者の多くは何らかの疾患を持っているので、例えば心臓病や慢性閉塞性肺疾患を患っている人が喘息を合併すると、非常に重篤な状況を起こす事があるそうです。決して楽観視する事なく、日頃の身体の変化に注意しましょう。