キケンと隣り合わせ!命綱なしで約35mの木を登る!?三重県・尾鷲市「御山祭り」で300年以上続く“ご神木登り”
三重県尾鷲市・三木里町で毎年行われる「御山(おやま)祭り」。約300年の歴史を持つこの祭りでは、高さ約35mの木に命綱なしで頂上に登ったり、早朝から真夜中までひたすら身を清めたり、雨の中竹を伐採したりと超過酷な神事が行われます。
朝から夜中まで身を清める「垢離掻き」とは
2024年7月1日(月)、「御山祭り」の本祭が行われました。午前2時、ろうそくが灯る建物から出てきた男性に、祭りについて尋ねると…。
(祭りのまとめ役“先達”・西川達人さん)
「先ほど夜中垢離(こり)。垢離を掻いてきたところ。垢離を掻く=海水で体を清める。今は休息中」
本番前に建物内で爆睡している氏子(うじこ)たちは、既にお疲れの様子。実は、海で身を清める「垢離搔き」という儀式を、朝から夜中を通して6回も行っていました。さらに、早朝にも1回あり、合計7回も行います。
(祭りのまとめ役“先達”・西川達人さん)
「お神酒や御祝儀を上げてくれた町の人、全員の名前を呼んで海に飛び込む。それが大事」
垢離掻きは、御祝儀や献酒をしてくれた人全員の名前を読むことで、町の人の厄を清める儀式。さらに町中も清めながら練り歩くため、垢離掻きは毎回1時間かかります。
裸足&命綱なし!ご神木の先端へ竹を奉納
午前4時、氏子たちは最後の「垢離掻き」に出発。海岸に着くと、砂浜には4本の竹が刺さっていました。その中から特別な竹1本を神社に奉納します。
竹は、氏子たちが前日に尾鷲の山にて伐採。どしゃ降りの雨にもかかわらず、竹藪も裸足で歩き、よりまっすぐな竹を吟味します。神社へ向かう直前も「垢離掻き」で徹底的に身を清め、特別な竹を担いで、神社がある山の頂上へ奉納に向かいます。
急勾配で足場の悪い山道を裸足で登ります。神様を祀る祠(ほこら)へ竹を奉納するかと思いきや…。
(祭りのまとめ役“先達”・西川達人さん)
「大杉の木のてっぺんに、八本竹を縛り付ける。木に登って」
奉納するのは祠ではなく、高さ約35mのご神木・大杉の先端。神様の捧げもの「御幣」を付けた「八本竹」と呼ばれる竹を頂上に掲げます。その際、氏子たちは命綱なしで木に登ります。
富士山の山開きにあわせて開催する「御山祭り」のルーツ
「御山祭り」について、先達の西川さんに伺いました。
(祭りのまとめ役“先達”・西川達人さん)
「三木里町の『富士浅間神社』に登る。富士山の山開き7月1日に合わせた祭り」
「御山祭り」は、全国1300社以上ある富士山を信仰した浅間祭りの一つ。町を見下ろす山を富士山に見立て、その頂上にある浅間神社のご神木に竹の御幣を掲げて、町民の無病息災と五穀豊穣を願います。
氏子たちは、町の人の願いを背負って命がけの神事に挑戦。まずは、ご神木の頂上に行く氏子が先陣を切って登ります。
しかし氏子が登っていたのは、ご神木の隣にある椎の木でした。ご神木を傷つけないように、まず椎の木に縄梯子を吊るし、ご神木にはロープで渡ります。そして、手渡しで竹を渡して頂上まで運びます。ご神木の一番頂上に登る平山裕久さんに、祭りへの意気込みを尋ねました。
(頂上に竹の御幣を付ける・平山裕久さん)
「祭りがあってありがたいねってみんなが言ってくれて、『続けてほしい』。それが僕は大事。できるだけつないでいきたい」
50年ほど前までは150人以上いた氏子も、高齢化などで近年は10人前後に。町の人のためにも祭りを続けようと命がけで臨んでいます。
無事竹を奉納できるか?いよいよ最大の難関の綱渡り
いよいよ、最大の難関である椎の木からご神木へ渡るときが。足元がぐらつきながらも、急勾配の木と木の間を無事渡り切りました。木の下から順番に竹の御幣を手渡して、ご神木にいる氏子に託します。
山の麓から見守っていると、ご神木の頂上に高々と竹の御幣が掲げられました。4日間に渡った「御山祭り」も無事に終了。竹の御幣は、来年の祭りまで三木里町を見守ります。
(祭りのまとめ役“先達”・西川達人さん)
「実は緊張している、(祭りが始まる)28日から。木に登った子たちの足が地面に着いた瞬間にホッとした」
300年続く祭りの裏には、過酷でも命がけでも、祭りを守っていきたい男たちの姿がありました。
CBCテレビ「チャント!」7月17日放送より