立浪監督の退任を斬る!ミスター・ドラゴンズはなぜ方針を“貫けなかった”のか

立浪監督の退任を斬る!ミスター・ドラゴンズはなぜ方針を“貫けなかった”のか 「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督(C)CBCテレビ

その日がやって来た。中日ドラゴンズの立浪和義監督が今季限りの辞任を表明した。強き竜の再建へ、期待を一身に背負っての3年間だったが、残念ながら結果は出ず、現役時代から親しんできたドラゴンズブルーのユニホームを脱ぐ。(敬称略)

期待~打撃向上と規律徹底

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督©CBCテレビ

待望久しかった3代目「ミスター・ドラゴンズ」の監督登板には、期待しかなかった。他球団からの誘いも断って、12年間ドラゴンズからのオファーを待っていてくれた立浪和義。2011年(平成23年)を最後にリーグ優勝から遠ざかっているチームを立て直す“切り札”だった。

監督就任会見での「打つ方は必ず何とかします」と言い切った言葉にファンは喜び、「茶髪やひげの禁止」という厳しい方針にファンまでもが緊張した。しかし、監督だった3年間、得点力が上向くことはなく、規律のルールも、チームに復帰したソイロ・アルモンテの“名物ひげ”を認めたことから、なし崩し的に崩壊した。

暗雲~コーチ配置転換

多くの期待を一身に受けてスタートした立浪ドラゴンズだったが、監督1年目の2022年(令和4年)5月に驚きの出来事があった。中村紀洋1軍打撃コーチの2軍への配置転換である。立浪監督自らがコーチとして招致しただけに、開幕わずか2か月での異常事態に「チーム内に何かあったのか?」と不安を覚えた。

その直前には「戦う顔をしていない」と、選手会長の京田陽太が遠征先から強制送還されたが、それは厳しさの延長線上のこととして納得だった。しかし、ペナントレースを戦う上でベンチの一体感は不可欠だけに、中村コーチの“人事異動”は、最初に歯車が狂った瞬間だったのかもしれない。

疑問~若手の起用は続かず

新監督の1年目はリーグ最下位だった。しかし、最多安打のタイトルを獲った岡林勇希を筆頭に、石川昂弥や土田龍空(現・龍空)ら、多くの若い力が芽吹いた。「強い二遊間を作りたい」という方針の下、ドラフトでは内野手を多く指名した。しかし、そんな彼らがなぜか次第に目立たなくなった。采配には継続的な起用がなく、1軍と2軍を行ったり来たりする若手も多かった。

次の2023年ドラフトでは、即戦力投手よりも、またしても内野手の補強が優先された。このころから、ファンの間でも立浪采配に対して「なぜ?」という数々の疑問が芽生え始めた。戦績は2年連続の最下位だった。長いドラゴンズ球団史で初めての屈辱だった。

失望~4番・中田の大誤算

「サンデードラゴンズ」より中田翔選手©CBCテレビ

3年目の2024年は「待ったなし」のシーズンとなった。立浪監督は、逆襲への中心選手として、スラッガーである中田翔を獲得し、さらに、他球団を戦力外になった選手を続々と集めた。一方で、22歳のクリスチャン・ロドリゲスを育成から支配下登録し、開幕スタメンのショートで起用するなど、独自の采配を見せた。4月には単独首位に立ち、ファンも狂喜乱舞。しかし長くは続かなかった。

4番を期待した中田は休養を与えながら起用されつつも体調不良が目立ち、ロドリゲスは若さを露呈した。移籍してきたベテランのスタメン起用が増える一方で、生え抜きの若手選手の出番は減った。スタメンは、打順どころか守備位置までも毎試合のように替わった。打線が“線”になるはずがなく、得点力は上がらなかった。

それでも勝利が積み重なればよかったが、成績は次第に下降線をたどり、交流戦が終わり、暑い夏が来た頃には、またもBクラスにどっぷりと浸かっていた。

崩壊~貫けなかった方針

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督©CBCテレビ

立浪和義が監督としてめざした野球は、一体どんな野球だったのだろうか?3年目の途中から「守り勝つ野球」という言葉も出始めたが、これは決して監督自らの口から出たものではない。立浪野球とは何か、その答えは最後まで分からなかった。そして、それこそが3年連続して低迷した原因を表しているのではないだろうか。

就任直後の身だしなみ方針、若手を起用してチームを変える方針、コーチ陣の配置、そしてスタメンの組み方、すべてにおいて“貫くことができなかった”、そんな「ミスター・ドラゴンズ」の3年間だったように思う。

希望~強きドラゴンズへの光

それでも、確かな希望の光はあった。監督就任と同時にレギュラーとして起用した岡林勇希、現役ドラフトで獲得した細川成也、先発ローテーションに組み込んだ高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)、そして清水達也と松山晋也という若きリリーフ陣。他球団がうらやむ多くの若き人材は、立浪監督の下で頭角を現した。この若竜たちを束ねて、モチベーションを高めて、そしてグラウンドで生き生きと動かす采配、これが次期監督に求められる最も重要な課題であろう。

指揮官としては結果を出せなかったが、立浪和義監督が現役選手時代にドラゴンズで残した数々の偉業は、これからも私たちファンの心に残っていく。シーズンの残り試合では、明日のドラゴンズの姿を披露する、そんな“竜愛”あふれる立浪采配を見せてほしいと願う。
                          
  
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。

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