立浪ドラゴンズ甲子園で10連敗、竜党が思い出す後楽園球場“人工芝”の悪夢

立浪ドラゴンズ甲子園で10連敗、竜党が思い出す後楽園球場“人工芝”の悪夢 「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督(C)CBCテレビ

阪神甲子園球場が誕生100年という記念すべき歴史を刻む中、中日ドラゴンズは、2024年シーズンこの球場で1度も勝つことができなかった。こちらは何とも淋しい歴史を刻んでしまった。(敬称略)

屈辱の甲子園10連敗

台風10号が過ぎ去った9月3日からの阪神タイガース3連戦、初戦の先発投手は、今や最も勝利を期待できる高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)だった。しかし、タイガース打線の攻撃によって、7イニングで3失点。試合は作ったものの、0点台だった防御率も今季初めて1点台になり、敗戦投手となった。

翌4日は、夏の甲子園優勝投手である小笠原慎之介が先発した。竜打線が初回に2点を先制するも、その裏に6点の大量点を奪われて逆転され、そのまま負けた。甲子園での最終戦となった3戦目は、大野雄大が粘投を見せたが1対2で敗れて、ついに0勝10敗1分となった。甲子園で勝ち越したシーズンは、2018年(平成30年)森繁和監督時代が最後となった。苦手な球場になっている。

後楽園で勝てない竜

記憶は半世紀近くさかのぼる。そして、当時のことを知る竜党の脳裏に浮かぶキーワードは「人工芝」である。1976年(昭和51年)讀賣ジャイアンツの本拠地である後楽園球場がグラウンドを人工芝にした。日本の球場では初めてのことだった。そしてこのシーズン、ドラゴンズは後楽園球場での巨人戦で勝てない日々が続く。

筆者は当時から日記にドラゴンズの戦いを綴っているが、読み返してみた。夏ぐらいからこんな記述が増えていく。

「堂上照が好投、田尾タイムリー、しかし人工芝で何と9連敗」(8月22日)
「田尾がプロ初ホームランの2ラン、しかしタカマサ(鈴木孝政)打たれて12連敗、後楽園で今シーズン無勝」(9月19日)

結局、後楽園球場では0勝12敗1分という成績で、一度も勝てなかったのである。

決して弱いチームではなかった

1976年のドラゴンズが弱かったのかと言えば、決してそんなことはない。与那嶺要監督の5年目。2年前には20年ぶりのリーグ優勝を果たし、前の年にも広島東洋カープと最後まで優勝を争っての2位。戦力としては、そのメンバーがほとんど残っていて、開幕前は優勝候補に挙がっていた。

打線には、高木守道(※「高」は「はしごだか」)、井上弘昭、トーマス・マーチン、島谷金二、木俣達彦らが並び、その中で、谷沢健一が初の首位打者に輝いた。ドラフト1位ルーキーの田尾安志も後半に向けてレギュラーとなり、新人王に選ばれた。

投げる方では、鈴木孝政が2年連続の最優秀救援投手に、最優秀防御率のタイトルも獲得した。左腕の松本幸行15勝、星野仙一10勝、そして三沢淳9勝と先発陣も揃っていた。

「人工芝に弱い」イメージ

苦手な球場を作ることは、やはりチーム成績には大きく影響する。130試合を戦って、54勝66敗10分で、シーズン4位に終わった。一方、本拠地でドラゴンズ相手に“貯金12”を手にしたジャイアンツは、前年の最下位から一気にリーグ優勝に駆け上がった。長嶋茂雄監督が初めて、胴上げで宙に舞った。ドラゴンズはその引き立て役だった。「人工芝に弱い」というイメージは定着し、巨人ファンの友人から「ナゴヤ球場も人工芝に替えたら?」とからかわれた苦い思い出もある。

19連敗でストップした夜

ドラゴンズが、人工芝の後楽園球場で勝ったのは、翌1977年9月13日だった。連敗は19にまで伸びていた。6対5の辛勝だったが「ついに後楽園球場連敗19でストップ!」と日記の文字も躍っている。

「最後の9回裏、タカマサが投げたピンチはもうドキドキで、部屋中をソワソワしていた」(9月13日)

セーブを挙げた鈴木孝政を迎える与那嶺監督には、まったく笑顔がなかった。それほど19連敗は重かったのだ。しかし、こうして2年越しに勝利して連敗を止めると、翌日も後楽園球場で打線が爆発して、8点を取って大勝した。それまでの勝てない日々が嘘のように、ジャイアンツに連勝した。

人工芝はゴロの球足が速いとか、バウンドが大きいとか、いろいろ理由を言われていた。しかし、最も大きかったのは「人工芝で勝てない」という“呪縛”だったのではないだろうか。

CBCテレビ:画像『写真AC』より「阪神甲子園球場」

2024年シーズン、甲子園球場でのリベンジの機会はもうない。しかし、1本のホームラン、1球の決め球で、ゲームは動く。1勝すれば、その瞬間、大型連敗もあっという間に過去のものとなるはず。応援するドラゴンズファンとしては、むしろ楽しみな思いで来季の甲子園初戦を待ってみたい。

【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。

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