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高橋宏斗が開けた“再加速”への扉!立浪竜が首位カープに3連勝、残る課題は?

高橋宏斗が開けた“再加速”への扉!立浪竜が首位カープに3連勝、残る課題は?

週末の名古屋は、連日35度を超す猛暑に襲われた。しかし、ドラゴンズファンにとっては、そんな暑さも心地よく感じられたのではないだろうか。本拠地バンテリンドームを舞台に、首位を走る広島東洋カープに3連勝したのである。(敬称略)

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知っていますか「マダックス」

「マダックス」という言葉が飛び交った。2024年7月5日の夜である。いつの頃からか「キャリアハイ」とか「スイープ」とか、プロ野球にも英語表現が使われるようになった。普通に「自己最高」とか「同一カード連勝」とかでいいと思うのだが、この「マダックス」は少々説明が必要だろう。

「100球未満で完封すること」であり、メジャーリーグ殿堂入りを果たした投手に由来する。生涯にその快挙を13度も達成したグレッグ・マダックス投手、その名前から付けられたのである。そして、ドラゴンズの高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)が初めて達成した。

“エース級”宏斗の熱投

「サンデードラゴンズ」より高橋宏斗投手(C)CBCテレビ

開幕ローテーション入りこそ逃したものの、高橋宏斗は安定したピッチングを続けている。ストレートの伸びもよく、スプリットの切れもいい。大きく崩れることはなく、そのマウンドは見ていて安心できる。首位カープとの初戦、初回にいきなり先頭の秋山翔吾にヒットを許したものの、その後は危なげない投球が続く。8回を終えたところで、投げた球数は85球だった。

本人も「意識した」と言うが、「マダックス」という意味を知っていたファンも、それを楽しみにして9回を迎えた。得点は2対0でリード、9回を三者凡退に抑え完封したところで99球。まさに「100球未満」ぎりぎりの“マダックス”達成だった。このところカード初戦をまかされている高橋宏斗、「エース」と呼ぶのは早いが“エース級”の活躍であることは間違いない。

福永は打撃でも守備でも・・・

福永裕基選手(C)CBCテレビ

高橋宏斗力投の翌日は、2年目の福永裕基が躍動した。3回裏には、先発の梅津晃大からの3連打で迎えた1死満塁のチャンスに、きっちりと犠牲フライを打って先制点。福永はとにかくバットの振りが力強く潔い。さらに、その福永が魅せたのは守備だった。

2対1で迎えた9回裏、ライデル・マルティネスが背負った1死2、3塁の大ピンチに、代打の松山竜平が打ち上げた3塁ファールフライを、背中を向けながらもスライディングキャッチ。それだけでも上手かったのだが、タッチアップで本塁を狙った3塁ランナーの俊足・羽月隆太郎を送球で刺した。このダブルプレーで試合終了。ランナーの背中を意識しながらも「ここしかない」というコースで投げた、そんなプロの技を見せてもらった。これで2連勝。

戦力外から復活した板山

板山祐太郎選手(C)CBCテレビ

7月7日の3戦目は、板山祐太郎が試合を決めた。板山は、前日も貴重な2点目となる移籍後初ホームランを打っていたが、この試合はベンチスタートだった。1対1で迎えた9回裏、カープ抑えの栗林良吏は、制球が定まらずに2つの四球と、5番のオルランド・カリステに対する申告敬遠で1死満塁となった。石川昂弥の代打として立ったのが板山だった。栗林の4球目を振り抜いた打球はライト前へ、自身初のサヨナラヒットとなった。

阪神タイガースを戦力外となりドラゴンズに育成選手として入団した板山が、いつのまにか竜ナインの歓喜の輪の真ん中にいた。感動的な3連勝達成となった。その努力と精進には心からの拍手を送りたい。これで最大8ゲームあった首位カープとの差は3.5ゲームと縮まった。

打てない打線の悩み続く

暑さを忘れさせる快適な3連勝なのだが、忘れてはいけないのは3試合の得点である。2点、2点、そして2点と、ドラゴンズ打線は毎試合「2点」しか取っていない。先発とリリーフ、投手陣の頑張りで手にした連勝である。少し前に「10試合連続で2得点以内」という淋しい試合が続いたが、実は、再び2得点以内は5試合連続になっている。連勝はチームに勢いをつけるが、まだまだ油断大敵である。「あと1本が出ない」という課題は、何も解決されていない。

4月に6連勝して単独首位に立ったドラゴンズだが、そこで打順や守備を変更したり、ローテーションを変えたり、見る見るうちに“失速”した記憶がよみがえる。田中幹也とクリスチャン・ロドリゲスの二遊間も、福永のサードも、今はしっくりきている。どうかここは勢いを手放さないために、落ち着いた顔ぶれで、落ち着いた野球を続けてほしい。広島カープに3連勝した七夕の夜、次の対戦相手となる横浜DeNAベイスターズに“勝ち星”を奪われないようにと、まだ梅雨の夜空に願った。                        
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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