根尾昂は中継ぎと代打の“二刀流”でこそ輝く!立浪ドラゴンズに直球提言

根尾昂は中継ぎと代打の“二刀流”でこそ輝く!立浪ドラゴンズに直球提言 「サンデードラゴンズ」より根尾昂投手(C)CBCテレビ

背番号「7」根尾昂の中日ドラゴンズでの居場所はどこなのか?竜のユニホームを着て6年目を迎えた根尾。しかし、ドラゴンズファンが期待する活躍がなかなか見られない。(敬称略)

待望の今季1軍登板へ

「サンデードラゴンズ」より根尾昂投手©CBCテレビ

根尾の2024年シーズン、沖縄での春季キャンプは2軍の読谷スタートだった。先発投手として長いイニングを投げてゲームを作ること。チーム方針も根尾自身も、その目標に向けて歩んでいた。オープン戦にも3試合に登板し「開幕1軍か」と期待を持たせる時期もあった。最終的には2軍スタートとなったが、ウエスタン・リーグでも5試合に登板して、初勝利も挙げた。

そんな根尾に1軍からお呼びがかかったのは、ゴールデンウイーク中の5月5日だった。最初の登板は5日後の広島マツダスタジアム、8回裏のピンチだった。押し出しを含む2四球、しかし三振も2つ取った。

わずか2試合で再び2軍

「サンデードラゴンズ」より根尾昂投手©CBCテレビ

2度目の登板は、5月16日の本拠地バンテリンドームでの阪神タイガース戦だった。先発の梅津晃大が早々に打ち込まれ、大量リードの中での“敗戦処理”的なリリーフだった。スタンドの応援席は、根尾の登板を見られる喜びと同時に、こうした局面でしか出番が来ない現実にどこか戸惑う空気もあった。根尾は3ランホームランを打たれるなど3失点、しかし、6回から9回までの4イニングを投げ、ロングリリーフの役目は果たした。その後、5月23日に1軍登録を抹消されて、再び2軍に戻った。

立浪和義監督は「上(1軍)では登板機会が少ない。もう1回、下でローテーションをしっかり投げてほしい」とコメントしたが、ファンとしては、どうもストンと腹に落ちてこない。監督に命じられてずっと「先発投手」としての練習を続けてきた根尾。しかし、1軍で与えられたのはわずか2回、それも「リリーフ」であったからだ。

社会現象だった「根尾昂」

2018年(平成30年)ドラフト1位で、ドラゴンズは4球団の競合に勝って根尾を獲得した。投手として、そして打者として“二刀流”で大活躍した甲子園のスター選手、春夏連覇を成し遂げた全国区の人気者だった。

読書家の根尾が読んだという『論語と算盤』(渋沢栄一著)や『思考の整理学』(外山滋比古著)が名古屋市内の書店の特設コーナーに並ぶなど、ドラゴンズファンはもちろん、地元の多くの人が「ドラゴンズ根尾昂」を大歓迎した。社会現象にもなったほどだった。

さまよい続けたポジション

しかし、根尾のプロ野球選手としての道は“紆余曲折”と言える。「ショートをやりたい」という本人の希望もあって、1年目は「内野手」のショート。しかし、2年目の2020年シーズン途中から、強肩を活かして外野手に転向した。3年目は「8番レフト」で開幕戦にもスタメン出場した。

4年目は新しく就任した立浪監督が当初「外野手1本」と明言したが、シーズンに入って一時ショートも守り、まもなく今度は「投手」に転向した。中継ぎとして登板するも、シーズン最後には先発登板、そこからは「先発投手」としてローテーション入りをめざしてきた。「投打ともにセンスがあるからこそ」と言える一方で、「どちらも秀でていない」という厳しい見方もある。

球場の空気を変える男

「サンデードラゴンズ」より根尾昂投手©CBCテレビ

2024年ペナントレース、セ・パ交流戦を前に、1軍を離れて2軍で再調整を始めた根尾。5月26日のナゴヤ球場では、ほぼ1か月ぶりに2軍の先発マウンドに上がったが、8安打2失点で6回の途中に降板した。

4イニングを投げたタイガース戦での“ある場面”が浮かぶ。それは、8回裏のことだった。続投中の根尾に打席が回ってきた時である。ワンサイドゲームに元気のなかった応援席から、この日一番とも言える大きな歓声と拍手が巻き起こった。結果は空振り三振だったが、リリーフ登板を場内コールされた時と同じように、根尾昂という存在は一瞬にして球場の空気を変える。

それは誰もが持っているものではなく、根尾だけが持つ“宝物”でもある。この能力を活かすために「リリーフの中継ぎ」そして「代打」、この“二刀流”という道はないのだろうか。この試合、打席に立った時の根尾の表情は、マウンドに立つ時と同様に、いやそれ以上に輝いていた。高校時代のように「投げて打って」という両方をこなしていくことが、実は根尾という選手のエネルギー源になるのではないだろうか。そんなユニークな選手も中にはいるのではないだろうか。

根尾をどう活かしていくのか?

「根尾のことを一番見ているのは自分だ」と、かつて立浪監督は筆者へのインタビューで語った。その言葉を信じたいと思う一方で、実際の起用方法に、竜党として淋しい思いを否めない。ドラゴンズにとって待望久しい全国区のスター候補の輝きも、歳月と共に色あせていく。それがプロの世界である。

根尾をどう活かすのか、これは時の監督ひとりが背負うのではなく、獲得したドラゴンズ球団が背負うべき課題である。もちろん、根尾本人が誰もが認める実力を発揮することが第一義なのだが、すでに入団6年目、24歳となった根尾昂を愛するがこそ、ファンとしてヤキモキする日々が続く。
                         
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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