防御率67.50から見事なV字回復で15試合連続無失点!竜の松山晋也を支えた“ある言葉”とは?
【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)
ここが踏ん張り時!がんばれ立浪竜
先週末、敵地ハマスタでのベイスターズ戦を終え、5連敗は免れたものの、9カード連続勝ち越しから遠ざかった我らのドラゴンズ。借金も5/19時点で4を数え、まだまだ5月とはいえども、これ以上増やすことは許されない状況だ。ただ悪い話ばかりではない。開幕からチームを引っ張り続けていた中田翔内野手の戦線離脱は痛いが、その代わりに満を持して一軍昇格したダヤン・ビシエド内野手の元気な姿がなんとも心強いし、右ふくらはぎ肉離れから一軍ベンチから外れている高橋周平内野手の実戦復帰話も聞こえてきた。投の大野雄大投手を含め、一日でも早く戦力が整うことを祈るばかりだ。ここをしっかり踏みとどまり、勝率5割以上を目指し、チーム状態を立て直してもらいたい。
さて今週のサンドラは守護神ライデル・マルティネス投手へつなぐセットアッパーとして活躍する松山晋也投手の特集。19日のベイスターズ戦で16試合ぶりの失点を許したが、勝ちパターンの一角として大奮投!悪夢となった開幕2試合、その後何を学び、何を考え、そしてどう立て直したのか。今まで明かさなかった心境を語った。
悪夢の開幕二戦
2023年6月、育成から支配下登録を勝ち取った松山投手。同月17日、バンテリンドームで行われたファイターズとの交流戦において3点ビハインドの9回に5番手として登板。最速154キロのストレートと鋭く落ちるフォークを武器に三者連続三振という鮮烈なるデビューを飾ると、シーズン終盤にはセットアッパーに定着。36試合に登板し1勝1敗、防御率1.27と好成績を収めた。そして2024年3月、開幕直前には侍ジャパンのメンバーに選出されるなど、その活躍ぶりはまさにシンデレラボーイとして注目を浴びた。
そして迎えた開幕戦。1点リードの8回、今シーズン初登板となる出番がやって来た。
松山投手「いろいろと起きた試合だったと思うので、そこの部分に関しては自分の技術がまだ足りなかったのかと思っています」
まさかの出来事に集中しきれなかった自分がいた。先頭バッターはスワローズの主砲・村上宗隆内野手。打ち取ったはずのフライをクリスチャン・ロドリゲス内野手が目測を誤り捕球できず、その後ドミンゴ・サンタナ選手に同点タイムリーを許すと、最後は痛恨のワイルドピッチ。松山投手は1アウトも取れず、無念の降板となり、チームも開幕戦を落とす結果となった。
メジャー経験者2人からの助言
プロ入り初めてとなるアウトひとつも取れずの降板。落胆した気持ちを奮い立たせるために、松山投手はその夜、オフに自主トレをともにしたオリックス・バファローズの平野佳寿投手へ電話をかけたという。
松山投手「やれる事をやっていく事が大事。1日1日を大切にやったうえで、悔いのないように野球をし、結果を出す。リリーフはそういう仕事」
積み上げていったものが結果に表れる。メジャーリーグという激戦の場でも結果を残した経験豊富なベテラン投手だからこその言葉。言葉を代えれば、打たれても次は結果を出すよう、しっかり準備する。経験の浅い松山投手へそう伝えたかったのだろう。
しかし翌日の開幕2戦目も悪夢は続いた。前日と同じ1点リードの8回、ホセ・オスナ内野手にタイムリーヒットを打たれ、即汚名返上とはならなかった。ゲーム後バスまで歩く間、大塚投手コーチから“ちょっと楽な場所で投げるか?”と言われ、すんなりと“そうですね”と答えた松山投手。大塚投手コーチはその返答を不満に思った。
松山なら松山らしくなれ!と。
大塚投手コーチ「ちょっと弱気やなぁと思ってね。彼は気持ちで投げるタイプ。開幕2戦でかなり落ち込んでいたし、とにかく自信を取り戻すために、自分の発する言葉から変えていこうと、良い言葉を出させるように働きかけました」
大塚投手コーチの助言も平野投手同様、いたってシンプルなものだった。失った自信を取り戻すため、“ある言葉”を言わせ続けた。
大塚投手コーチ「アイツは素直なので、(なんでも)絶好調と言っとけとね」
それからというもの、松山投手は誰からも調子を聞かれる度、迷わず“絶好調です!”と答え続けた。
ライデルを超えるクローザーになりたい
ポジティブな言葉を発することで、自分自身をだましていくメンタル作り。セットアッパーたる者、勝ちゲームであれば毎試合でも登板しなければならない。その状況下で気持ちが弱くては猛者ぞろいのプロ野球では対峙できない。平野投手同様、プロ野球の世界そして、メジャーリーグの場でもリリーバーとして実績を残した大塚コーチは松山投手にとってこれ以上ない心強いアドバイスとなった。
成績に一喜一憂しない。良い時も悪い時もあるが、気持ちは“どんな時でも絶好調!”という気持ちでマウンドへ上がる。一時67.50まで跳ね上がった防御率は3.24まで回復(5/19終了時点)。手放した勝ちパターンの座を取り戻した。絶好調の松山投手には8回のマウンドが良く似合う。
松山投手「マウンドでやり返さないと意味がない」
今では祖父江投手を超えるほどの眼光ビームを放ち、打者を圧倒する松山投手。以前から“絶好調”という言葉のほか、自分自身に発破をかける意味でも言い続けているのが、“クローザーになりたい。ライデルを超えたい”という大きな目標。この日のゲストコメンテーター、川上憲伸さんから実現するための貴重なアドバイスが松山投手へ授けられた。
川上氏「ストレートでも変化球でもコントロールが(ストライクゾーンの)枠から抜け過ぎることが多い。それが一球ぐらいなら問題ないですが、あまり続けないように」
川上さんの提言通り、ピッチングの質が向上した時、ライデルにまさかのアクシデントが生じても、松山投手がマウンド上で仁王立ちしていよう。もちろん、その時の合言葉は“絶好調!”
がんばれ松山!
がんばれドラゴンズ!
燃えよドラゴンズ!
竹内 茂喜