“新生ビシエド”がチームの柱になる 野球人生で初の不振をビシエドは脱却できるのか
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
野球人生で初めての不振、ビシエドの苦悩
ビシエド選手が“野球人生で初めてだ”と語るほどの不振に今苦しんでいる。
ビシエド選手「正直にいって今のところ成績も出ていないし、難しい状況だなと感じている。でも、このまま終わるわけにはいかないのでもっと練習して後半戦に向けて頑張っていきたい」
2016年に来日しドラゴンズに入団したビシエド選手は、開幕戦から3試合連続ホームランというデビューで始まり、2018年には首位打者と最多安打のタイトルを獲得、チームの方針に合わせたバッティングをしながらも結果を出していた。
だが、2023年のビシエド選手は例年に類を見ないような打撃不振に陥っており、開幕から15試合時点で打率.236、打点0と振るわず二軍降格となった。若手選手の台頭もあり、8年目34歳にして2度の二軍調整を命じられた。
ビシエド選手「とにかく自分の仕事をしようと思って今年もやってきたけど、確かにあの時は自分の調子も良くなかった。二軍では安定したスイングをできるようにすることとタイミングの取り方、この2つはバッティングの基本になる部分なのでそこを調整しようと思っていた。でもまだ自分の理想までは来ていないというのが現状だね」
2度目の二軍調整を終え5月23日に一軍昇格を果たした。そして、その2日後に69打席目にして待望の今季1号ホームランが、さらに6月13日のマリーンズ戦では、日米通算200号となるホームランが飛び出した。ベンチでもビシエド選手を慕うブライト健太選手がファンを代表するかのように雄叫びを上げて全力で喜び、球場全体が祝福に包まれていた。
ビシエド選手「バンテリンドームに来てくれたドラゴンズファンの前で打てたし、ヒーローインタビューでも大きな声援をもらって本当に嬉しかった。良い時も悪い時もあるけど、ファンの皆さんはいつも応援してくれて感謝している」
ビシエド選手の言葉からは、日米13年のプレーの積み重ねとファンに対する真摯な気持ちが感じ取れる。やはり、その実績ある選手が結果を出すことがドラゴンズには必要なんだと感じさせられた。
和田コーチ&森野コーチが徹底したフォーム指導
開幕当初に比べると復調のきっかけとなる材料は少しずつ集まっているはずだが、現状39試合出場で打率.227、得点圏打率.128、打点7、HR2本というのは中軸を担う選手として物足りない成績である。その現状を和田一浩打撃コーチはこう分析する。
和田コーチ「構えた状態からすぐピッチャー方向に倒れてしまうので、しっかりテイクバックを取ることと、左足のつき方がドンとつくので、ゆったりつけば前に行くことがなくなるので、その辺りを微調整しながらやっています」
さらに、一軍の遠征に帯同せず異例の居残り練習を敢行し、森野将彦打撃コーチとマンツーマンでフォームの修正を行なった。その努力の甲斐あってリーグ戦再開後は5試合連続ヒットを放つなど、成果が徐々に現れている。
6月25日のスワローズ戦でタイムリーを放った際にベンチにいる立浪和義監督が見せた嬉しさが溢れんばかりの笑顔から、一つ課題を乗り越えたような手応えを感じた。和田コーチも、チームにとって必要不可欠なビシエド選手に期待する役割についてこう話す。
和田コーチ「若手とベテランが噛み合えば絶対に打線は上がってくると思っているんで。そういう意味でもビシエドの力は絶対に必要なので、しっかりクリーンアップを打ってもらいたい」
ビシエド選手自身もチームの中での自分の役割についてこう語る。
ビシエド選手「今年は若手も素晴らしい活躍をしているし、自分も頑張っているところ。今チームの状態がいいとは言い切れないけど、今後しっかり練習をして最後まで諦めずに頑張っていくので引き続き応援をお願いします!」
フォームの改造によって突っ込まずにボールが見られることから四球を選びやすいなど新たなメリットも出てくる。また、打順も4番だけを背負わないことで新しいスタイルのビシエド選手として活躍すればチームはもっと強くなるだろう。この試練を乗り越えて新生ビシエド選手がチームを支える柱になってほしい。
筆者の感想まとめ
ファンから見たビシエド選手は、球場で最も盛り上がるビシエドチャンテ(ビシエド選手のチャンス時のテーマ)、ホームランを打った後のファンに向けたポーズをしてくれるサービス精神、ピンチのときにマウンドでしっかりと声掛けできる人柄、安定した守備や魅力的な打撃力…と枚挙にいとまがないほど好きになる要素が詰まった選手なのである。だからこそ、この不調がファンとしても心苦しくなっている。
しかしインタビューによると、ビシエド選手自身、未曾有の不振に陥ってからも周りを見つつ気を強く持って日々改善し続ける努力をしていた。現状、ポジションの大半以上が若手選手で構成されるなかで、チームが力をつけていくにはベテラン選手の実績や経験が必要となってくるだろう。ブライト選手も、二軍で一緒になったタイミングで試合に対する気構え、準備などのアドバイスを積極的に貰っていたと語っている。そんなエピソードから、共に苦境を乗り越えていくこともチームが成長する大事な経験になるのかもしれないとビシエド選手は思わせてくれる。
ビシエド選手がその山をしっかりと越えたら、周りの選手も、チームもまた一層強く成長し、何度も何度も大きな声援が響き渡るだろう。
「勝負強さ煌めき、エルタンケ打て!」
澤村桃