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中日・加藤匠馬はベールを脱ぐのか?2人の助言を胸に勝負の5年目が始まる

中日・加藤匠馬はベールを脱ぐのか?2人の助言を胸に勝負の5年目が始まる

沖縄の太陽が加藤匠馬の肌を焦がす。キャンプ1軍スタート。ただ、まだ第1クール。過酷な生存競争は始まったばかりだ。

あれは底冷えのする1月のナゴヤ球場だった。加藤が静かに覚悟を口にした。

「毎年ですが、今年ダメならクビだと思っています」

2015年、加藤は青山学院大学からドラフト5位で中日に入団。当時の落合博満GMがその鉄砲肩に惚れ込んだ。しかし、プロ4年間で1軍出場はわずかに5試合。ヒットも打点もない。

同い年のキャッチャー、甲斐拓也

去年、ソフトバンクが日本一に輝いた。日本シリーズMVPは甲斐拓也。広島の機動力を封じた甲斐キャノンは見る者の度肝を抜いた。加藤は自宅でテレビ観戦していた。

「単純に凄いなと。甲斐は同い年のキャッチャーですが、面識もないし、話したこともありません。遠い存在です」

実は加藤と甲斐は6年前に出会っている。

「僕が大学3年生の時でした。ソフトバンクの3軍と練習試合をしたんです。キャッチャーがとにかく俊敏で強肩で。でも、背番号が3桁でした。こんな選手が育成って、プロはどれだけレベルが高いんだと驚きました。今思えば、あれが甲斐でした」

去年、捕手の肩が注目された。ゆえに加藤もスポットライトを浴びるようになった。「肩は負けていない!」「竜キャノンだ!」「加藤バズーカだ!」と中日ファンの期待は高まった。

しかし、肩だけで飯が食えないことは逆に本人の4年間が証明している。加藤は冷静だ。

「甲斐とは全く比べる立場にないです」

大島洋平に弟子入り

足元を見つめ、現在地を把握し、弱点を整理し、強みを伸ばす。そのために加藤は決断した。

「なりふり構わず、教えを請おう」

1月5日から22日の18日間。加藤は大島洋平に弟子入りした。ナゴヤ球場以外で自主トレをするのは初めてだった。大阪の日本生命グラウンドには松井佑介、遠藤一星、高橋周平も集結。他球団の選手も数多く参加した。

「チームで最も試合に出続けているのは大島さん。どんな練習をしているのか、何を意識しているのか、その全てが勉強になる。プラスはあってもマイナスは絶対ない。そう思い、11月のファンフェスタの日にお願いしました」

午前7時に起床。朝食を食べ、8時にホテルを出発。9時にグラウンドへ到着し、各自でアップ。トレーナーが全選手のウィークポイントを分析し、個別メニューを作成している。10時から全員でトレーニング。11時からは野球の動きを取り入れ、キャッチボール、ノック、打撃練習と濃密な時間が続く。

「バッティングは大島さんに教わりました。わざわざ動画を撮影して、分かりやすくアドバイスしてくださいました」

加藤の最大の悪癖はバットが遠回りすることだという。

「改善点は左膝でした。打ちに行く時に左膝が割れる(開く)んです。すると、バットが最短距離を通らず、体から離れる。それでは打球が弱い。徹底的に直しました」

巨人・小林誠司からの助言

キャッチャーミット

キャッチャーとしての助言は巨人の小林誠司からもらった。

「僕のキャッチングの欠点は低めの捕球。どうしても捕った瞬間にミットを上げてしまうんです。小林さんに静止するコツを教えて頂きました」

遠慮なく商売道具のこだわりも聞いた。

「形や材質など色々と尋ねましたが、驚いたのは紐の話。親指から人差し指にかけてのウエブの下の部分。そこの紐は締めた方がミット全体の張りにつながると」

去年、加藤のウエスタンリーグ盗塁阻止率は4割2分9厘。通算でも2軍で4割9厘。誰もが認める強肩という武器はこれからも伸ばす。加えて、大島から教わった打撃、小林から伝授された捕手としての技術を磨き、弱みを克服すれば、硬く分厚かった殻をようやく破れるのではないか。

「今年は1軍で1試合でも多く出たいです。そして、感謝し切れない、お世話になりっ放しの大島さんとセンターラインを組みたい」

加藤はベールを脱ぐのか、それとも、ユニフォームを脱ぐのか。陽光降り注ぐ北谷で、勝負の5年目が始まっている。

【CBCアナウンサー若狭敬一
CBCテレビ「サンデードラゴンズ(毎週日曜午後0時54分放送)」、CBCテレビ「スポーツLIVE High FIVE!!(毎週日曜午後1時24分放送)」、CBCラジオ「若狭敬一のスポ音(毎週土曜午後0時20分放送)」、CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週金曜午後6時放送)ほか、テレビやラジオのスポーツ中継などを担当】

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