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竜のドラフト10年史(3)~独立リーグから又吉克樹が参戦・2013年

竜のドラフト10年史(3)~独立リーグから又吉克樹が参戦・2013年

ドラフト会議には夢とドラマがある。1965年(昭和40年)に始まったプロ野球のドラフト会議は、2021年に57回目を迎える。球団創設85周年を迎えた中日ドラゴンズにも、ドラフトによって数多くの選手たちが入団し球団史のページを飾ってきた。2011年1位指名は高橋周平、そして2020年1位指名は高橋宏斗、奇しくも「高橋から高橋へ」となったドラゴンズ最近10年間のドラフト史をシリーズで探訪する。(敬称略)

美しいフォーム鈴木翔太

高校球界屈指の左腕・松井裕樹を1位指名したものの抽選で逃したドラゴンズは、静岡県にある聖隷クリストファー高校の鈴木翔太投手を1位指名した。背番号は「18」、期待の表れだった。最初その投球を見た時、何とフォームがきれいな投手なのだろうと思った。しなるような右腕から投げられる150キロの直球。マウンドでの立ち姿も美しく、こういう投手が先発する試合を球場で観たいものだと、その成長を願った。しかし、残念ながらけがも多く、コンディションは万全ではなかった。2017年に5勝をあげたのが自己最高で、2020年シーズンオフにドラゴンズを去った。

ルパン又吉が勝利を呼ぶ

活躍し切れなかったドラフト1位の分まで頑張っているのが2位指名された又吉克樹。
ドラゴンズの春季キャンプ地である沖縄県の出身で、四国アイランドリーグで活躍していた。独立リーグからプロ野球入りした選手の中、2位指名は最上位だった。又吉の魅力はボールのキレとひょうひょうとした投球スタイルだろう。タフな選手である。ルーキーだった2014年シーズンから67試合登板、いきなり9勝を挙げた。その上でセーブ2、ホールド24も記録しているのだから、大車輪の活躍だった。同点などで登板すると、その直後に味方が逆転して勝利投手になることも多かったため「勝ち星を盗んでしまう」と有名な“怪盗”的に「ルパン又吉」とも呼ばれたりしたが、それは逆に「同点までで失点を止めて、逆転させない」勝負強さの裏返しでもある。

2013年ドラフト総括

ドラゴンズはじめ5球団が1位指名で競合した松井裕樹(桐光学園高校)は、東北楽天ゴールデンイーグルスが獲得した。松井には背番号「1」が送られた。プロ野球の場合、投手が背番号「1」を背負うことは珍しい。それだけ期待の左腕であり、先発から転向したクローザーとして着々とセーブを積み重ねている。今や広島東洋カープのエースとなった大瀬良大地(九州共立大学)にも3球団が1位指名、カープが獲得したが、この10年間、良い投手をきちんと補強しているカープを象徴するドラフトだった。この他、前年の藤浪晋太郎(阪神に入団)と大阪桐蔭高校でバッテリーを組んで甲子園で春夏連覇を成し遂げた捕手・森友哉は埼玉西武ライオンズが1位指名した。人気漫画『ドカベン』の主役・山田太郎がライオンズに入団したストーリーとダブらせたファンも多いはずだ。

竜指名選手の現在地は?

「中日ドラゴンズ2013年ドラフト指名選手一覧表」(C)CBCテレビ

2013年のドラフト指名選手、現在もチームの中心で活躍している。5位指名の祖父江大輔は2020年に最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得、リリーフ「勝利の方程式」の一員である。3位の捕手・桂依央利も2021年シーズンは開幕から1軍ベンチに入った。
そして又吉は東京五輪が開催された2021年シーズン、ドミニカ代表参加のためにチームを離れたライデル・マルティネスに替わって、クローザーを務めた。交流戦だけでの7セーブは期待以上のものであり、今や竜の勝ちパターンを投げるリリーフ陣に欠かせない存在である。FA権を取得したが、是非チームに残ってほしい投手である。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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