歯の詰め物治療がたった1回で完了! 「歯が生える薬」の実用化も間近 進化する歯科治療の最前線を調査
虫歯の治療といえば、削ったり、抜いたり…。痛くて、時間がかかるのが一般的なイメージ。1回で終わり、痛くない!さらにはもう一度歯が生えてくる!?歯科治療の常識が今大きく変わりつつあります。今回は、歯科医療の最前線を調査しました。
歯の詰め物治療が1日で完了!日帰りで治療できる最新技術とは
名古屋市・中村区にある「かすもり・おしむら歯科」。詰め物や差し歯の作成に、従来は型をとりその型に合わせて手作業で仕上げるため、1週間ほどかかっていました。しかし、この歯科医院では…
(かすもり・おしむら歯科・押村憲昭院長)
「1時間ほどお待ちいただけると、ここでかぶせ物を入れて帰ることができる」
この日訪れた50代の男性患者。歯の詰め物が取れたため、新しく作り直すために来院しました。使うのは、型ではなく「3Dスキャナー」。歯をスキャンするとわずか1分足らずで精巧なバーチャルの歯型が出来上がります。このデータは、院内の歯科技工士へ転送され、パソコン上で詰め物の形をデザインします。
(歯科技工士・水野知里さん)
「ここ(のくぼみ)に今回、詰め物を作ります。ここの部分がよく見えるように、バーチャル上の模型を分割していきます。どこの部分に詰め物がいるか、線を引いて作っていきます」
約30分で画面上にかみ合わせも考慮した詰め物が完成。詰め物に使う素材は、人工ダイヤモンドとも言われる、圧倒的な強度や耐久性を持つ『ジルコニアセラミック』の塊です。これを機械にセットすると、工作機械が全自動でパソコンのデザイン通りに詰め物を削り出していきます。さらに、専用の機械を使い、約30分1500℃で焼いて完成です。
出来上がったものは、男性患者の歯の欠けた部分にピッタリ! この1回限りで治療は終了しました。保険適用外なので治療費は高めですが、今は半数以上の患者がこの治療を選択しています。
肉眼では見られなかったところも最新のマイクロスコープで!再発防止にも効果的
虫歯の神経を抜いて根っこを治療する「根幹治療」では、目視による手作業の場合、神経や膿の取り残しで再度治療というケースが半数近くに上るという調査もありました。
(かすもり・おしむら歯科・押村憲昭院長)
「今までは、このようにのぞき込んで(歯の)根の中にうみがないかとか、(肉眼で)見ていたんですけど。顕微鏡があることで、根の先の方まで汚れがあるかどうか見えるので、より(治療の)精度も上がると思います」
使うのは、心臓や脳の外科手術用と同じくらいの倍率や解像度を持つ、最新のマイクロスコープ。この顕微鏡で細さ0.1ミリにも満たない歯の根っこ部分を直接見ながら処置できるため、確実な治療が望めますが、保険適用で1本2万円程度の金額がかかります。
(かすもり・おしむら歯科・押村憲昭院長)
「(注射の)針も細いのを使っているので、痛みも少ない」
治療を受けた患者からは、全く痛みがなかったと好評でした。
虫歯の超早期発見に、歯が生えてくる薬!?進化を続ける歯科治療
最も大切なことは、虫歯がひどくならないようにすること。名古屋市・千種区にある「愛知学院大学歯学部付属病院」では、超早期に虫歯を見つけ出す技術も進んでいます。
(愛知学院大学 歯学部・辻本暁正 主任教授)
「目に見えない、あるいはエックス線に写らない虫歯を、レーザーを用いて検出する機械です」
実際に、病院内にいた学生の口腔内で実験しました。
歯にレーザーを照射し、数値を計測します。この数値は、虫歯菌が出す特殊な物質の量をレーザーで検出したもの。およそ10~30の値で虫歯がある可能性があります。一見きれいに見える右の奥歯ですが、数値を測ってみると…。
(愛知学院大学歯学部・辻本暁正主任教授)
「値にすると30以下ですけども、(歯を)削る必要はありませんがフッ素などの塗布をして、虫歯にならないように処置の必要な歯になります」
目に見えないような初期の虫歯は、フッ素を塗ることで進行を抑えられると言います。
さらに、実用化間近という驚くべき研究も進んでいました。
大阪府・大阪市にある「北野病院」。研究開発中の技術は、なんと「歯の生える薬」です。
研究チームによると、ヒトは乳歯と永久歯の他に「第三の歯」のもとを持っていますが、普段は生えてこないよう抑制されています。この抑制を外すことで、もう一度だけ新たな永久歯が生えてくると言います。
人間と歯の構造が似通っているフェレットを使った実験では、新たに歯を生やすことに成功しています。実用化の見通しは2030年と、それほど遠い未来ではありません。虫歯予防が一番大切なのはもちろんですが、歯科治療も劇的に変わりつつあります。
CBCテレビ「チャント!」10月21日放送より