「胃カメラ」を発明した日本の技術を誇りたい!世界の人々の命を救う開発の歩み

「胃カメラ」を発明した日本の技術を誇りたい!世界の人々の命を救う開発の歩み
内視鏡」提供:オリンパス株式会社

人の身体の中を直接見ることはできないか?この願望は、古代ギリシア・ローマ時代からあったと伝えられている。それを医療という分野において実現したものが「胃カメラ」。今では健康診断に欠かせない内視鏡を発明したのは、実は日本の技術だった。

胃カメラ発明を語る前に、そこにいたるまでの世界史を紹介する。古代都市ポンペイの遺跡から、今日の内視鏡の原型とも見られる医療器具が発掘されたこともあって「人体の内部を見る」という試みには長い歴史があったと推察される。記録によると、生きている人間の胃を初めてのぞいたのは、ドイツ人医師クスマウルさんと伝えられている。1868年、日本では明治元年。50センチ弱という長さもだが、直径1.3センチという太い金属管を、人の喉から突っ込んで胃の中をのぞいたと言う。クスマウルさんがそれを試す相手として選んだのが大道芸人。観客の前で剣を飲みこむ芸を披露していたと言うから、なるほど適役だったかもしれない。

「国産第1号ガストロカメラ『GT-I』1952年」提供:オリンパス株式会社

開発チームの挑戦が始まった。「極小レンズ」「強い光源」「管の柔らかな材質」など手探りの中で、翌1950年には試作品ができた。先端に付けた小型電球によるフラッシュ撮影とワイヤーによる巻取り方法によって、世界で初めて、胃の内部の撮影に成功した。しかし課題はまだ多かった。レンズと管を入れることによって人体に危険はないか、いかに負担の少ない短い時間で胃の中を撮影できるか、鮮明な内部映像を撮影できるか。さらなる改良を重ねた結果、1952年(昭和27年)に世界初の「胃カメラ」が誕生した。

開発の道は続く。ファイバースコープ付き胃カメラが登場し、それまでは撮影したフィルムの現像まで待たなければならなかった診察も、リアルタイムで可能になった。2002年には、ハイビジョン内視鏡システムが誕生。高画質、高品位な画像によって、粘膜の微妙な色の変化も見逃さないような“電子的な画像拡大”も可能になった。先端に付いた「処置具」によって病変の採取もできる。胃の中だけでなく、食道、十二指腸、さらに大腸など、人体の観察部位は飛躍的に増えていき、「胃カメラ」は現在「内視鏡」と呼ばれるようになった。胃カメラ発祥の日本では「胃カメラを飲む」という言葉が使われてきたが、その表現が懐かしく思われるほど、技術の進歩はめざましい。内視鏡によって、がんの5年生存率は格段に改善されて、早期発見(I 期)の場合、胃がんも大腸がんも9割以上になった。現在、オリンパスの内視鏡は消化器分野で世界シェア70%に到達した。

「内視鏡の日」提供:オリンパス株式会社

古来、医療に携わる人たちには「人体の中を直接見たい」という願望があった。「医者の本能」とも言える思い。世界の医療現場に「胃カメラ」という画期的な発明を届けた日本の光学技術によって、今日までどれだけ沢山の命が救われてきたことだろうか。
日本生まれ・・・「胃カメラ(内視鏡)は文化である」。
          
【東西南北論説風(250)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿のコレ、日本生まれです」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして紹介します。

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