開幕3連戦で見えた!立浪ドラゴンズ2年目「新たな変化」と「残された課題」

開幕3連戦で見えた!立浪ドラゴンズ2年目「新たな変化」と「残された課題」

それは逆襲への号砲だった。立浪和義監督が率いる2年目の中日ドラゴンズ、2023年シーズンは、先頭打者である岡林勇希選手のセンターを抜ける3ベースで幕を開けた。東京ドームでの讀賣ジャイアンツとの3連戦には、屈辱の最下位から逆襲をめざす大いなる変化があり、しかし一方で、積み残された課題も浮き彫りになった。

今年のドラゴンズは違うぞ!

開幕戦での勝利、その立て役者は、先発の小笠原慎之介投手であろう。トップバッターとして躍動した岡林選手、2000安打に向けて猛打賞のスタートを切った大島洋平選手、新4番として早々にタイムリーを打ったアリスティデス・アキーノ選手、激走でホームインした代走の高松渡選手(※「高」は「はしごだか」)、そして、9回に劇的な再逆転タイムリー2ベースを打った高橋周平選手ら、続々と名前が浮かぶ。2年間、先発で好投しながらも勝てなかった勝野昌慶投手にも、わずか1球で待望の勝ち星がついた。

しかし、小笠原投手こそ、この試合のヒーローだろう。145球の熱投と涙、ドラゴンズファンの多くは、惜しみない拍手を送ったはずだ。そして思っただろう「今年の竜は違うぞ」と。それは勝利への執念を、はっきりと見せてもらったからである。

小笠原の涙が勝利を呼んだ

「サンデードラゴンズ」より小笠原慎之介投手©CBCテレビ

早くから開幕投手に名乗りを挙げていた小笠原投手。3月3日のWBC日本代表チーム侍ジャパンとの試合での好投に象徴されるように、その投球は大きく進化してきた。この試合後に立浪監督によって“正式に”開幕投手に指名されたのだが、立浪監督自身、早い段階から「開幕は小笠原」と思い描いていたことを明らかにしている。

3月31日の開幕マウンド、小笠原投手が発散するオーラは「必ず勝つ」という力強いものだった。ひとつひとつの仕草に、並々ならぬ気迫があふれていた。中田翔選手にホームランを打たれたが、7回を1失点に抑えた。

120球を投げたので交代かと思ったら、8回もマウンドに向かった。145球目を中田選手に打たれて逆転を許して降板。その目には涙があったが、大きな拍手が背番号「11」を包み込んだ。この悔しさに、長きにわたる低迷から変わろうとするチームの意地を見た。

ビシエドの名前が消えた

小笠原投手の悔し涙は、9回に4点を奪って再逆転し、見事に開幕戦勝利を飾ったことから感動の涙に変わった。しかし、ここまでの苦投を強いてしまったのは、ヒットを積み重ねながらも「あと1本」が出ない打線だった。

8回までに10安打ながら得点は2点。さらにエラーもあった。勝利しながらも、立浪監督は大いなる危機感を持ったに違いない。開幕2戦目では、ショートの龍空選手を、新たな戦力であるオルランド・カリステ選手に入れ替えた上、打順も変更した。試合は、こちらも新たに先発陣に加わった涌井秀章投手が7回を2点に抑えながらも完封負け。

すると3戦目、立浪監督はさらに大胆に打線の変更に着手した。昨シーズンまで主に4番に座ってきたダヤン・ビシエド選手を外した。スタメンどころではなく、ベンチ登録からも外したのだった。けがなどによる体調不良やビザ問題での渡航以外で、ビシエド選手の名前が消えたことは、ドラゴンズでの過去7年間でもなかったことだ。同時に、この試合は大島選手もスタメンではなかった。

固められなかった二遊間

「サンデードラゴンズ」より田中幹也選手©CBCテレビ

開幕の3試合を戦って、先発オーダーの顔ぶれはすべて異なっていた。指揮官は積極的に動いた。最下位に終わった直後から「勝てる選手を使う」と公言してきた通りだった。しかし、同時にそれは、春季キャンプ、そしてオープン戦を通して、“不動のオーダー”を固定できなかったことの裏返しでもある。

最も大きな誤算は、二遊間である。セカンドとショート、これを固めて、センターラインを安定させることこそ、シーズン終了と同時に、立浪監督が着手した最重要課題だったはずだ。1年前の開幕スタメンだった阿部寿樹選手と京田陽太選手をトレードで放出する、大胆な変革に着手した。

そして、開幕セカンドにはドラフト7位ルーキー福永裕基選手、ショートには期待の3年目である龍空選手で開幕戦に臨んだのだが、2戦目で早くもショートは交代した。開幕セカンド確定だったルーキー田中幹也選手が、オープン戦後半に肩を負傷する痛い離脱があったのだが、竜の二遊間は“浮遊”したまま、ペナントレースに突入した。それを安定させることこそ、今シーズンの戦いを左右する宿題であろう。

本拠地で勝つぞ!シン・立浪竜

開幕3連戦は東京ドームで1勝2敗。これは1年前と同じである。そして、バンテリンドームに、リーグ連覇中の東京ヤクルトスワローズを迎える。エース大野雄大投手、新選手会長として進境著しい柳裕也投手、そして侍ジャパンで世界からも注目され始めた高橋宏斗投手(※「高」は「はしごだか」)、3人の好投手が先発マウンドを託されるはずだ。課題はひとつ「点を取ること」。本拠地の大声援の中、去年までとは違う「シン・立浪ドラゴンズ」を見せてほしい。
                            

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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