連敗の夜、与田監督に呼ばれた加藤匠馬。小田幸平が伝える、桑田・清原から学んだ「捕手の心得」

連敗の夜、与田監督に呼ばれた加藤匠馬。小田幸平が伝える、桑田・清原から学んだ「捕手の心得」

2019年のセ・パ交流戦開幕、パリーグの打者からの被弾が続くドラゴンズ投手陣。初戦から2試合で8本塁打をまねいた加藤匠馬捕手は、連敗の晩、福岡の宿舎で与田監督に呼ばれ、部屋の扉をノックした。

与田監督の立場からすれば、はらわたが煮えくり返るであろう状況にもかかわらず、つとめて冷静に話し掛けられたという。

「捕手という仕事が、すぐに上手くできるなんて、俺は監督として、最初から見てないよ。だから加藤、お前にとって今は、正念場でもなんでもない。全然、失格でもない。捕手として良くできていることも多い」

「ただ、ひとつだけ。同じ失敗を繰り返すな」

与田監督は丁寧に言葉を続けたようだ。

「初めての一軍で、開幕から約2か月。プロの怖さも知っただろう。でも、その怖さは、ずっと消えないよ。無くならないよ。お前の現役生活、ずっと付いてまわる。だからこそ、その中で、いかに同じ失敗を繰り返さないか。まずは、そのための準備をしていこう」

絶妙なタイミングでのアドバイス

監督から直々に言葉をもらい、部屋を出た加藤捕手は、すぐに中村武志バッテリーコーチの指導の下、考え、行動を改め始めた。これまでも相手データは頭に入れてきた。しかしそれは、あくまで過去の数字。それに加え、いかに味方投手の変化に気付き、相手打者を観察できるか、それが次の成功への第一歩と。

この連敗の晩の宿舎での出来事に、「監督から、神のひと言をもらったと受け取るべき」と断言するドラゴンズOBがいる。

現役時代『やりました!』の名言でお立ち台でファンの心を鷲掴みしたODAこと小田幸平元捕手だ。小田さんは、今季から四国アイランドリーグplusの愛媛マンダリンパイレーツでコーチを務めている。公式戦の無い時期は、評論家活動も継続。先週末は、ナゴヤドーム北駐車場で土日に開催されているCBCドラゴンズグルメパークのトークイベントに参加。ステージ上で、自身の経験が少しでも活きるならばと、力説してくれたのだ。

「まずもって、与田監督は、チームの守護神として抑え投手を務めた方だから、試合のラストの1点の重みを痛感している方。例えば、サヨナラ本塁打の一球は取り返しがつかない。だから、加藤捕手が実質一年目だから仕方がないじゃ済まされない。ならば、今後何をすべきか。そのために、今回は、絶妙のタイミングで部屋に呼ばれてアドバイスされたと受け止めるべきですね」

桑田・清原から学んだ「捕手の心得」

中日・中村武志バッテリーコーチ/加藤匠馬捕手©CBCテレビ

そして、小田さんは、ジャイアンツ時代の貴重な経験を教えてくれた。

「正直、ボクは捕手として若い頃、敵よりも、味方ベンチと野球をしていた。こんな配球をしたら、ベンチへ帰ってどう怒られるのかとね」

「でも、その怖くて仕方がなかったベンチで、あの桑田真澄さんや清原和博さんが、僕に声を掛けてくださった。桑田さんは、僕が入団した最初のキャンプの初日、ブルペンで桑田さんのカーブを上手くキャッチングできなかった。膝にゴンと当てちゃって。桑田さんに申し訳なくてビビッていたら、ポンと肩をたたかれた。振り返ると桑田さん本人。意外な言葉をもらったんだよ」

「君はディフェンス型の捕手として生きていきなよ。捕球の時、大きな体を丸めて的が一つに見えて、投げやすい。目とミットの位置を一直線上にしていてくれな」(桑田さん)

「それを心がけ続けたら、翌年以降、毎年、海外自主トレにも呼ばれたんだ」

さらに小田さんの人間力の凄さは、桑田さんと同時に、清原さんにも愛されたということ。

「キヨさんに、ある日の試合中、ベンチ内で手招きされたのよ。この席で、この角度から相手捕手の動きを見て、学べって。しかも、その盗むべき相手捕手というのは、当時、横浜の谷繁さん。そのシゲさんとは、のちに同じドラゴンズのユニフォームを着て学べたんだから、ボクは捕手としてほんとに幸せ者」

小田さんは、この二人のお陰で、周りの仲間の変化に気付くことの大切さを知ったという。

加藤へ感じる、ひとつだけ解せないこと

「現役時代は、球場で全ての選手に一日一回は声を掛けるようにしていたよ。些細なことでも、なんで俺のそんなとこ見てるの、知ってるの、ってなるだけで信頼に繋がる」

「だから、カトちゃん(加藤捕手)が今ね、交流戦の戦いをたとえベンチから見るのでも、大事にしてほしい。パリーグの打者は、2ボールノーストライクからファウルでストライクが取れるんだとかね。それを次の出番をもらった時に活かせばいいじゃん」

そして最後、小田さんは楽しそうに。

「ただ、ひとつだけ解せないことがある。イケメンのカトちゃんねえ、福岡遠征後、リフレッシュで丸刈りにしたって聞いたけど、それはどうかなって思うのよ。だってボクなんか、何十年ずっと丸刈りですから!」

今こそ、加藤捕手とチームに、『やりました~!』ODAの明るさと細かな観察力が求められるのではないだろうか。燃えよ!ドラゴンズ!

【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週水曜午後4時放送)他、ドラゴンズ戦・ボクシング・ゴルフなどテレビ・ラジオのスポーツ中継担当。生粋の元少年ドラゴンズ会員。山本昌ノーヒットノーランや岩瀬の最多記録の実況に巡り合う強運。早大アナウンス研究会仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。】

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