書店員の実話が集結!松原タニシ推薦モキュメンタリーホラー『書店怪談』

9月30日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』では、事故物件住みます芸人の松原タニシが、8月6日に発売された小説『書店怪談』(講談社)を紹介しました。全国の書店員から実際に集めた怪談話を紡いだモキュメンタリーホラー小説の魅力と、そこに隠された書店の不思議について語りました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く書店イベントで聞いた不思議な話
小説家・岡崎隼人さんが書いた『書店怪談』は、リアルとフィクションの境界が曖昧なモキュメンタリーホラー小説です。
岡崎さんは前作の小説作品を書いた時に、書店のイベントでサイン会やトークショーをしていました。
岡山県のとある書店でイベントをした際、店内に盛り塩が置かれているのを見つけ、店長に尋ねると「いやね、最近ちょっと色々ありましてね」との返答が。別の書店でのイベント時には、店員さんから「実はこの店出るんですよ」という話もありました。
岡崎さんは元々怪談を集めている方ではなかったものの、こうした経験から「書店には怖い話が集まりやすい」ということに気づいたそうです。
モキュメンタリーホラーの誕生
この発見をきっかけに、岡崎さんは担当編集者と相談しました。
怪談本がブームになっている中、「書店の怪談」という本はまだ存在しないことに着目。全国の書店から怖い話を募集すれば多く集まるのではないかというアイデアが生まれました。
『書店怪談』の冒頭部分では、まさにこの企画が生まれる過程が描かれています。実際に集まった怪談話が散りばめられ、それらがひとつに繋がって、ある怖い事実にたどり着く構成です。
最終的に小説として完成していますが、集められた怪談話はほとんど実話だといいます。
巧妙なマーケティング戦略
松原が、今年出版した『事故物件怪談 恐い間取り4 全国編』のイベントで全国の書店を回った際、複数の書店員から「『書店怪談』に投稿して採用されました」という話を聞いたそうです。
書店員から話を募ることで、投稿した書店員は自分の話が載っている本を売りたくなるという効果があります。つまり、この本自体の売り場面積も増えるのではないかという、マーケティング的な側面もあるのです。
編集者とのやり取りも本の中に書いてあり、本屋さんがプッシュしてくれる企画になるのではないかという会話も含まれているそうです。
さらに、書店員には作家志望だった人も多いため、文章力の高い投稿が集まったことも、この本の特徴のひとつだといいます。
4階に現れる謎の店員
松原は自身が全国の書店を回る中で聞いた怪談話も語りました。
店を開ける前と閉めた後に物音がするという現象が特に多く、築50年以上の古い書店ほど起きやすいといいます。閉店後にこどもの声やパタパタという足音が聞こえるのも、書店怪談の定番だそうです。
特に印象的だったのは、ある6階建ての書店での体験談です。開店前の朝礼で店員が1階に集まる時間、4階のレジに髪の長い女の子が立っていました。書店員のエプロンをしていたため、文芸担当者が「今から1階で朝礼があるから早く降りなさい」と声をかけたそうです。
しかしその女の子は、ヘッドバンキングのように髪をバサバサと振り続けるばかり。新人かと思い先に1階へ降りると、出勤している店員は全員そろっていたのです。
再び4階を確認しても誰もおらず、他の店員から「あの子はたまに現れる」と聞かされたという話でした。
書店と神社の共通点
『書店怪談』には、著者の岡崎さんとプライベートで親交のある神社の神職も登場します。この神職の方は、集められた怪談話を読み、宗教者の立場から興味深い考察を述べています。
神職によると、書店は神社や仏閣と似た要素を持っているといいます。印刷技術が生まれる前、知識や情報が集まる場所は教会、神社、寺院でした。文字や紙、書物は庶民の手に届かず、一部の権力者や宗教者のもとに集約されていたのです。
その後、活版印刷の発明により庶民も本を手にできるようになると、神社や寺院に集中していた書物が全国へ広がっていきました。書店は、かつての神社仏閣のように情報や思い、念が集まる場所になったのではないか。だからこそ不思議な現象が起きるのではないか、という考察が述べられています。
実際に書店を回った際、多くの店で「書店で働いているからわかります!」といった共感のポップが書かれていたそうです。松原は「読み進めていくとすごく面白い。皆さん、ぜひ読んでみてください」とコーナーを締めくくりました。
(minto)
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