関税500%?米議会がロシア産エネルギー購入国への制裁法案を提出

アメリカ連邦議会でロシアに対する追加制裁を求める声が高まっています。ロシアがウクライナとの速やかな停戦に消極的な姿勢を示していることを受け、ロシア産石油や天然ガスを購入する国に最低500%の関税を課すという2次制裁の法案が提出されました。6月2日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、パーソナリティの光山雄一朗アナウンサーとCBC論説室の石塚元章特別解説委員が、この法案の背景と狙いについて詳しく解説しました。
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2022年にロシアがウクライナに侵攻した際、ヨーロッパ各国などはロシア経済を弱体化させるため、ロシア産原油やガスの購入量を減らしました。しかし一方で、中国やインドは国内のエネルギー需要を賄うため、ロシア産原油やガスの輸入を増やしており、実質的にロシアを助けてきた側面がありました。
今回の法案を主導している議員は「この法案はロシアを貿易で孤立状態に追い込む。中国やインドが石油の購入をやめればプーチンの軍は機能しなくなる」と主張しています。
今回の法案が仮に施行されれば、ロシア産ガスを輸入しているヨーロッパ各国や日本も制裁対象になる可能性があり、世界経済への影響が懸念されます。
石塚によると、これはロシアへの直接制裁ではなく「セカンダリーサンクション(2次制裁)」にあたるといいます。ロシアを事実上支援している第三国に関税を課すもので、特に中国を意識した動きだと指摘しました。
制裁が始まった2022年、ロシアは原油を売りたいがヨーロッパが買ってくれなくなりました。一方で中国やインドは今までより安く買いたたけるため「変なウインウインの関係」があったのです。
議会からトランプ大統領への圧力
まだ法案提出という段階ですが、賛成議員の数を見ると可決の可能性は高いとみられています。
ドナルド・トランプ大統領は追加制裁には慎重な姿勢を示していますが、石塚はこの動きについて「第三国に対してのプレッシャーであると同時に、トランプ大統領に対するプレッシャーでもある」と分析しました。
石塚によると、トランプ大統領はどちらかというとプーチン大統領といずれ話をつけてウクライナ攻撃をやめさせられると信じていた節があるといいます。しかしプーチン大統領はそんな甘い相手ではないと世界中が理解している中、議会の方が先に大統領に対して圧力をかけているということです。
「タコトレード」という皮肉
トランプ大統領を巡って、アメリカでは「TACO(タコ)トレード」という造語が生まれました。これは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)」の頭文字を取ったもので、トランプ大統領の関税政策を皮肉った言葉です。
大風呂敷を広げておきながら、最終的に関税を引き下げたりする動きを指しており、ウォール街やSNSで話題となっています。
実際に記者がトランプ大統領本人に「タコトレードと言われていますが」と質問する場面もあり、トランプ大統領は「ビビってるだって、そんなの聞いたことないよ」「二度とそんなこと言うな、意地悪な質問だ」と苛立ちを見せたそうです。
「チキン」は臆病者を意味し、チキンレースのように「俺は行くぞ」と言っておきながら、まずいと思った瞬間に逃げ出すイメージ。石塚によると、トランプ大統領はそういうことが多いと批判されており、その批判について聞かれるとまたムッとするのがトランプ大統領らしいということです。
「日本でもいうね、『このタコ』ってね」と石塚。奇しくも、日本語で愚かな人を意味する「タコ」と、アメリカで生まれたトランプ批判の造語「TACO」が同じ音になっているのは、なんとも皮肉な偶然です。
関税500%という衝撃的な数字の法案提出により、ロシア制裁を巡るアメリカ議会とトランプ政権の温度差が浮き彫りとなっています。
(minto)
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