相続人が不在!遺産を渡したい相手に相続させるには?

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。3月5日の放送では「法定相続人」がいない場合の遺言書作成の事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友信託銀行 名古屋営業部 財務コンサルタント林恒弘さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く親しい従兄弟に財産は残せるのか?
今回林さんが解説するのは、法定相続人がいない方の遺言書作成の事例。どのような状況だったのでしょう?
林「お客様は60代の女性Aさんです。独身でお子様はおられず、ご両親を数年前に亡くされており兄弟もおられない一人っ子であるため『相続人不存在』となっています」
所有している財産は自宅および金融資産と、一般的なもの。
Aさんは「近所に住んでいる親しい従兄弟に財産を残したい」と望んでいました。
林「従兄弟に財産を遺すには遺言書が必要になることをご説明し、遺言の相談が始まりました」
「相続人不在」とはどういうこと?
どのような場合に「相続人不存在」となるのでしょうか?
林「民法では、相続人の範囲と順位が定められています。亡くなった方の配偶者は常に相続人になります」
こどもがいる場合はそのこどもが、先に亡くなられている場合はそのこども…つまり孫が相続人になります。
また、こどもや孫がいない場合、親や祖父母が健在であれば相続人となります。親や祖父母がいない場合は、兄弟が法定相続人になります。
林「このような法定相続人にあたる方がおられない場合や、法定相続人全員が相続放棄をした場合などに『相続人不存在』となります」
北野「従兄弟は相続人にはならないんですね?」
林「そうです。相続人にあたるご兄弟が先に亡くなられていた場合、そのご兄弟のお子様である甥・姪が法定相続人になります」
しかし両親の兄弟のこどもである従兄弟は、どんなに親しくしていても法定相続人になることはないそうです。
「相続人不存在」の場合のお金の行方は
では、「相続人不存在」の場合、財産はどうなるのでしょうか?
林「亡くなった方が保有していた財産は、一定の手続きを経て最終的には国庫に帰属、つまり国の財産になります」
北野「おひとり様がまあまあいるので、最近は相続人不存在にあたる方が増えていませんか?」
林「そうですね。一昔前と違って、ご兄弟の人数が少なくなっていますし、ご結婚されない方やお子様がおられない方も多くなっています」
林さんも仕事を通じ、10年前と比べて相続人不存在の方が増えていると実感しているそう。
ちなみにメディアによると、相続人不存在によって国庫に帰属した財産は2023年度に初めて1000億円を超えたとのデータがあるそうです。
林さん曰く「今後も相続人不存在の財産が増えていく可能性が高い」とのこと。
自分の思いに沿った遺言書を作る
最終的に、どのような遺言書になったのでしょうか?
林「付言事項(ふげんじこう)と言うんですが、『自宅の片付けなど、私が亡くなった後のことをよろしくお願いします』とのメッセージを遺言書に記載し、自宅は親しくしている従兄弟に託されました」
金融資産は従兄弟と他の親族の方に配分するとともに、ある団体へ遺贈寄付をする内容の遺言になったそうです。
林「ご自身がお亡くなりになられた後のことを、どなたかに託したいとのお気持ちをお持ちの方は多いと思います」
そのような時、法定相続人にあたる方がいない場合でも遺言によって、自分の思いに沿って財産を遺すことができるので検討してほしいと促す林さんでした。
(野村)
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