人手不足だけではない?交番や駐在所が減少している理由

地域の生活や安全を見守る交番と駐在所の数が、年々減っているそうです。現在のペースで減少が続くと、2050年代前半には2000年代始めと比べ4割も減ってしまうという推計もあります。警察庁は各地の交番や駐在所で警察官の勤務形態を変えるなどして、運用の見直しを進める方針を決めていますが、そもそも数が減少している背景は何でしょう?3月5日放送『CBCラジオ #プラス!』では、なぜ交番や駐在所が減っているのかについて、ジャーナリストの北辻利寿さんが解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーと三浦優奈です。
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まずは、交番や駐在所の歴史です。
交番ができたのは、今から150年以上前の1874年(明治7年)で、警視庁が誕生した年でもあります。
もともと街のパトロールにあたっていたのは邏卒(らそつ)と呼ばれる警察官で、後に巡査と名前が改められました。
その巡査が見張りの拠点とする場所が「交代で番をする」ところから「交番」と名づけられました。つまり交番は日本発祥のものなのです。
一方で警察官が住んでいる場所を「駐在所」といい、交番は主に都市部、駐在所は郊外や山間部、島に配置されています。
1960年(昭和35年)には、全国に交番と駐在所を合わせ1万8千500ヵ所ありました。
ところが昨年4月の統計では1万2千ヵ所まで減少。このペースは加速しているとのことです。
犯罪の舞台がネットに
減少が進む原因はなんでしょうか?
施設の老朽化や交番勤務の警察官が減っていることもありますが、最大の理由は時代とともに犯罪の形が変わってきたこと。
約20年前まではひったくりや車上狙いなど、街で起きる犯罪が多く、当時は全国で年間300万件近くと過去最多を記録していました。こうした犯罪が一昨年は70万件にまで減少しています。
近年は犯罪の舞台がインターネットの世界に移っています。サイバー犯罪は、2000年は検挙数が1千件を割っていた程度でしたが、2021年には1万2千200件と桁違いに増えています。
そのため、昨秋には警察庁は24時間体制だった交番や駐在所の運用見直しを決め、都道府県の警察本部に指示しています。
東海3県では、岐阜県がいち早く、県下に226ヵ所ある交番や駐在所を、8年後に170ヵ所へ統廃合する方針を発表しています。
新たな交番の形態を検討
とはいえ、街で起きている犯罪は今なお70万件あります。
今後見直しにより夜間無人になる交番が増える一方で、治安を守るための新しい対策も検討されているとのことです。
例えばワゴン車による移動交番や、時間帯を決めて警察官がいるようにする臨時交番といった形態が検討されているそうです。
また、過去の犯罪データをAIで分析して警戒を強化する地域を予測したり、山間部ではドローンによるパトロールも検討されているようです。
本当は犯罪が減ることが一番良いのですが、ここでも人手不足などに対応した工夫が必要なようです。
(岡本)
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