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認知症?高齢者のうつ?見分けるポイントとその対処法

認知症?高齢者のうつ?見分けるポイントとその対処法

高齢化社会により、身近な人がうつになっていたり、認知症ではないかと心配する人が増えています。この二つは症状はよく似ているため、どちらかわからないケースが多いようです。2月21日放送の『北野誠のズバリ』では、リスナーから寄せられた質問に、心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が答えます。

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高齢うつ?

今回は45歳の女性から質問が寄せられました。

「75歳父のことで質問です。父は昔から家族みんなでを重視する人で、旅行、外食、買い物に出かけるときも誰かが欠けることを嫌う人でした。

しかし、2年程前から家族旅行に行っても、『途中でもう疲れたから喫茶店でコーヒーを飲んでるわ。好きなところを見てこい』と離脱しがちになり、このお正月は伊勢神宮への初詣に誘っても『並ぶのが嫌だから二人で行ってこい』と家に残りました。

高齢なので体力面で外出がしんどくなるのは仕方ないと思う一方、高齢うつなどの話題を耳にすると不安になります。多少無理をしても連れ出した方がいいのでしょうか?
高齢うつの見分けるポイントはありますか?ちなみに父はまだ細々と仕事をしていますので、接客や買い出しは自分でやっています」

倦怠感、疲労、食欲の低下など

吉田「高齢者のうつは、今とても増えています。しかも認知症と勘違いされることも多く、見極めとか対策についてよく知っておいていただきたいです。

若い人のうつだと気分が落ち込むなど、心理面に症状が真っ先に出てきますが、高齢者のうつは、気分の問題よりも身体の症状を強く感じる場合が多いのが特徴です。倦怠感、疲労、食欲の低下、眠れない、夜中に目が覚めるといった睡眠障害、頭痛、めまいなどです。

理由は、高齢になると脳の神経細胞が老化して、ノルアドレナリン、セロトニンなどの脳内ホルモンの量が減って、また脳の前頭前野の一部が委縮してしまって、それによって身体的な症状が出やすいのです」

うつは急激に悪化

これらの症状は認知症と被る点が多いようです。

吉田「高齢者のうつは見落とされやすいのですが、見極めるポイントがいろいろ見つかっています。最も重要なのが症状の出方です。

年齢による老化でもこういった現象が出ますけど、この場合は数年かけてゆっくり症状が出てきます。
が、高齢者のうつは急激に症状が悪化するのが特徴です。数週間、せいぜい数か月といったスパンで一気に悪化した場合は、高齢うつの可能性があります。

あと、倦怠感、疲労、体力や筋力の低下は、老化の場合は休めば回復しますが、高齢者のうつは何をしても疲れるし、休んでも回復しないことが多いです。

意欲の低下にしても、長時間の外出がきついのは普通の老化ですが、以前は楽しかった外出や趣味自体にまったく興味がなくなったというと、これはうつの可能性が高いです」

うつと認知症は似ている

今回の相談者のお父様はうつの可能性が高いのでしょうか?

吉田「文面だけ見ると、うつと断定はできませんが、年齢的に可能性は否定できませんので、一度医療機関で診察を受けていただきたいです。おすすめするのは精神科です。

高齢者のうつは認知症と症状が似ていて、ごくごく初期の認知症、あるいは、認知症一歩手前の軽度認知障害の可能性があります。
実際、精神科では“あるある”ですが、うつだと思って病院に行ったら、実は認知症だったということがあるし、逆もあります。

軽度認知障害の段階だったら、すぐ治療を開始すれば認知症へ進むのを防げる場合は多いです。そうでなくても、うつの傾向があるだけで、脳への刺激が減ってしまって、それで認知症の発症を促進してしまうことが多いです。
高齢者のうつは認知症とセットで予防することが大事です」

軽く誘うのが大事

とにかく家に閉じこもるようになると、よくないようです。

吉田「高齢者のうつも認知症も、脳や身体の普通の老化現象も、家に閉じこもっていると加速してしまうことは具体的にわかっています。

ただ75歳になると、体力的に疲れるというのは当然のことです。無理をさせるとそのストレスによって逆にうつを加速させてしまうので、無理はしないこと。

ポイントは短時間の外出にしぼって言葉も軽く誘ってあげる。例えば『近所のスーパーにちょっと行こうか』とか、そのくらいがベストです」

家庭内の役割

家族が高齢の方の健康のために心がけることは何でしょうか?

吉田「家族がこれをやったら予防に役立つというのは、うつにも認知症にも共通していることがあります。それは家族の中で高齢の方に役割をもたせてあげることです。

仕事をリタイアすると、それがきっかけで『自分は役に立たない存在になったな』と自己評価を落としてうつになることが多いです。
リタイアして他の人のために頭を使う必要がないと考えてしまうことで、認知症が加速してしまうということも見つかっています。

その対策として、例えば庭の手入れとか、孫の送り迎えとか、家庭の中で何か具体的な役割を決めて任せる。役割を果たしてくれたら、心の底から『ありがとう』と感謝を伝えると、役割の喪失感がなくなり、うつの予防にも認知症の予防にも役立ちます」

過剰にそっとしておくのはダメだそうです。

吉田「一から十まで家族がやりますよ、というのは逆によくないです。何時に送り迎えして、あれやってこれやってと家族が指示を出すのではなくて、本人の裁量に任せることが大事です」

昔の自慢話

吉田「高齢うつと認知症の予防で共通していることがあります。昔の体験談を聞いてあげて欲しいです。特に自慢話です。これは効果が大きいです。
若い頃活躍した話などすると、自己肯定感が一気に回復しますので、高齢鬱の予防に役立ちます。

また思い出してしゃべるときに脳の側頭葉という部分を使っていますが、そのときに自己肯定感が高まっていると、脳の神経のネットワークが心地よく働いてドーパミンが分泌される。それによって認知症の予防効果も高まります。

これを治療に取り入れたものを回想療法と言います。

この効果を高めるときには聞いている人のリアクションが大事で、例えば膝を叩くなど、身振り手振りをまじえて反応するとドーパミンがたくさん出ますので、それでうつの予防効果と認知症の予防効果が出ます。

ちなみに、健康な人の脳でも身振り手振りは効果があるという論文があるので、ぜひ取り入れてください」
(みず)
 

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