AI開発競争が複雑化!78兆円vs低コスト、広がる開発の対立軸
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世界でAIの開発競争が激化しています。トランプ大統領は就任後、OpenAI、オラクル、ソフトバンクグループによる総額78兆円規模の「スターゲイト計画」への支援を発表。一方で中国のスタートアップ企業「Deepseek(ディープシーク)」が最新の生成AIモデルを発表しました。2月10日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が、激化するAI開発競争とその影響について解説しました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くAIの起源と生成AIの進化
「人工知能(AI)」という言葉は、1956年アメリカのダートマス大学で開催された研究者会議から生まれました。
この会議で「Artificial Intelligence」という用語が提唱され、その頭文字を取って「AI」と呼ばれるようになりました。
当時からコンピュータによる情報処理システムとして、記憶、計算、学習など、それまで人間にしかできなかった作業を機械で実現することを目指していました。
その後2022年には「生成AI」という新しい概念が生まれました。これは単なる計算処理を超えて、新しいコンテンツやアイデアを自ら生み出す能力を持つAIのことを指します。
代表例として、OpenAI社が開発したChatGPTが広く知られています。
日米首脳会談でAIが主要議題に
日米首脳会談では、液化天然ガスや投資、買収、USスチールなど様々な議題が取り上げられました。
その中で「AI」も重要なテーマとなり、共同宣言に盛り込まれています。
トランプ大統領と石破総理の共同会見では、両首脳がAIや半導体分野での協力について話し合ったことを強調。トランプ大統領は以前から「全てのAI技術はアメリカが作る」として、アメリカのリーダーシップを主張してきました。
AIが日米関係において重要なキーワードであることは間違いありません。
巨額投資か低コストか?
こうした中で、「スターゲイト計画」が浮上しています。
これは4年間で5000億ドル(約78兆円)をAIの基盤整備に投資する計画で、ソフトバンクグループの孫正義会長、OpenAIのアルトマンCEO、オラクルが進めています。
この計画について、イーロン・マスク氏は「彼らにそんなお金は集められない」と批判し、スターゲイト計画の資金調達能力に疑問を呈しています。
この背景には、AI開発には巨額の資金が必要であるという現実があります。
しかし、中国のスタートアップ企業「Deepseek」は、OpenAIに匹敵するモデルを低コスト・短期間で開発したことを、同時期に発表しました。
Deepseekの低コスト戦略
「Deepseek」は、公開されているモデルやノウハウを基に、新たなAIモデルを開発したと説明しています。
「蒸留」という手法を用い、公開モデルを改良することで、従来の10分の1以下のコストで開発できたとしています。
これは、巨額の投資が必要とされてきたAI開発の常識を覆す画期的な手法といえます。データセンターの建設や電力消費の負担が軽減されることから、この発表は大きな衝撃を与えています。
しかし、「Deepseek」の手法には各国から懸念の声も上がっています。
本当にオープンなモデルのみを使用しているのか、不正なデータ取得が行われていないか、疑問視する声もあります。
さらに、中国製AIの使用により、情報流出のリスクも指摘されています。そのため、一部の国では政府機関での利用を制限する動きがあり、日本でも同様の対応が進んでいます。
市場が示す懸念
中国「Deepseek」の発表は、株式市場にも影響を与えました。
興味深いことに、株価が下落したのはAmazonやGoogleではなく、NVIDIA(エヌビディア)やブロードコムなどの半導体・データセンター関連企業でした。
これは、AI開発における巨額投資の持続可能性に対し、市場が疑問を抱いたためと見られています。
進化するAI、深まる課題
「AIで変わる世界」は、もはや単純な米中対立の構図では説明できません。そこには複数の対立軸が存在します。
例えば、「巨額投資が必要なのか」「Deepseekのような低コスト開発で十分なのか」といった投資規模を巡る対立。また、クローズドな開発とオープンソース活用のどちらを選ぶかという方向性の違いもあります。
さらに、AIには「嘘をつく」という課題も指摘されています。
専門用語では「ハルシネーション(幻覚、でたらめ)」と呼ばれ、AIの出した答えが本当に正しいのかわからないという問題です。
進化するAIと社会の対応
近い将来、自己進化する可能性のあるAI「AGI(汎用人工知能)」の実現が見込まれており、まさにSFの世界が現実になりつつあります。
パリで開催されたAIサミットでは、技術開発と規制のバランスが重要な課題として議論されました。
企業や国によってAIへの向き合い方は異なりますが、AIが変えていく世界の状況と課題は、徐々に明確になりつつあります。
(minto)
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