増加するSNSでの誹謗中傷。被害に遭ったらどうすればいい?
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昨今SNSでの誹謗中傷が大きな社会問題となっています。自身が加害者になってしまった場合、あるいはうっかりそうした内容を投稿してしまった時、どうしたらいいでしょう?2月4日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、宮部和裕アナウンサーが「SNSへの誹謗中傷」について、アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生に伺います。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く誹謗中傷は犯罪になる
SNSへの誹謗中傷は、法律上どんな罪として扱われるのでしょうか?
正木「誹謗中傷という形で直接定めているわけではないですが、書き込みの内容がどんなものか、どんな影響を与えたのか、ということでさまざまな犯罪になることがあります。
よく言われるのが名誉棄損罪や侮辱罪です。事実があったことを書いて社会的な評価を貶めるのが名誉棄損罪。事実を書かないで自分の評価だけを書くのが侮辱罪となります。
その他、生命、身体にかかわるような、例えば爆破予告などは脅迫罪になったり、会社の仕事ができなくなるということになると威力業務妨害罪になったりします。
『粗悪品だ』とか、嘘や噂を流した場合には偽計業務妨害や信用棄損罪。さまざまな法律に触れてくる可能性があるのが誹謗中傷です」
条例はあるが理念法
法律とは別に自治体などが条例を設けている例はあるのでしょうか?
正木「各地でさまざまな条例は設けていて、この地方では愛知県が『愛知県人権尊重の社会づくり条例』、三重県では『差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例』というものが設けられています。
内容は人権に対する考え方やその自治体がどのような取り組みをするのか、被害者にこういう支援をする、などを定めた理念法で、これに反すると何か罰則が与えられるというものではないです。
だから他の地域に関しても、条例違反で摘発されるということは基本的にないものとなっています」
法律で規制できないの?
条例をもっと厳しくする、あるいは法律で誹謗中傷罪を作るなどして、罰則を厳しく設けることはできないのでしょうか?
正木「理論的には可能ですが、まず誹謗中傷罪というものを作ることに関しては、技術的な問題もあります。
犯罪を定めるには、どのような行為をするとどんな罪になって、どんな刑罰が科されるのか、具体的にはっきり定めなくてはいけない。そうでなくてぼやっと定めると、国民はどんな行為をしたら犯罪になるかわからないので、国民行動が委縮します。
理論的にはそこをクリアした誹謗中傷罪を作ればいいのですが、誹謗中傷の内容とか害される権利はさまざまです。それを全部一緒にしたものを作るというのは労力としては大変だと思います。
また、憲法上定められている、言論の自由とか表現の自由もありますので、公がどこまで規制関与するのか、どういう定めをするのかまで考えると、規制の内容に関しては一定程度の配慮が必要になると思います」
もし被害にあったら
もし自身が誹謗中傷を受けている場合、逆に、誹謗中傷してしまったかなという場合、どうしたらいいでしょうか?
正木「被害を受けた場合は、おおまかに3つ手段があります。
1つ目、誹謗中傷の投稿を消してもらう削除の請求。2つ目、犯罪にあたるということで警察に被害届や告訴をする。3つ目は加害者に対する損害賠償請求をする。
初動で重要なのが削除の依頼になります。書き込みをした相手がわかれば、直接連絡して削除してもらうということも十分可能ですが、再度トラブルになる可能性もあるので、サイトの管理者や運営会社に対して削除の依頼を出すのが原則となります。
もしそれで対応してもらえない場合は、裁判所に対して削除請求の申し立てをして、削除命令を出してもらったり、仮に誰かわからない場合であっても書き込みが誰かを特定して、削除の請求や損害賠償請求をすることができます。
ただ手続きが複雑なので、お悩みの方は弁護士の他、相談窓口があります。
削除方法を教えて欲しい場合は、総務省に『違法・有害情報相談センター』があります。
削除要請を代わりにやって欲しい場合は、法務省の人権相談、セーファーインターネット協会の『誹謗中傷ホットライン』といったさまざまな相談先があります。
まずは専門家に相談して、ひとりで悩まないようにしていただきたいです」
誹謗中傷をしてしまったら
正木「もし誹謗中傷してしまったという場合には、匿名の書き込みであろうが、誰がどこで書き込んだかわかります。
なので、まずは書き込みを消しましょう。法的リスクを減らすことが第一です。
ただ自分で削除が難しいという場合には、弁護士に相談して削除の手続きを進めて欲しいです。
もし相手から何か請求をされたときは、真摯に謝罪をして解決に向けて話し合いを進めてください。
最後に、発信する前にそれが正当な批判なのか、誹謗中傷なのか、しっかり区別した上で発信をするということを心掛けて欲しいです」
SNSでの誹謗中傷などに悩んでいる場合、相談先がいくつかあります。
・「#いのちSOS」電話番号0120-061-338 24時間365日受付可
・「いのちの電話」電話番号0120-783-556 毎日午後4時~9時の受付
他にもLINEやチャットを使った相談窓口もあります。厚生労働省の電話相談、SNS相談のページをご確認ください。
(みず)