起源は日本じゃなかった!「寿司」の歴史を紐解いてみた
日常の食事から慶事まで、日本の食卓には欠かすことのできない「寿司」。定番の握り寿司から巻き寿司、いなり寿司、ちらし寿司まで、その種類は多岐に渡ります。1月13日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、日本人と切っても切れない「寿司」について特集しました。「すしの第一人者」と言われる愛知淑徳大学教授、日比野光敏先生が、知られざるその秘密を解説します。聞き手はつボイノリオと小高直子アナウンサーです。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴く寿司の歴史を辿る
最近はインバウンド需要が高まり、海外からの観光客が増えていますが、「寿司」はそんな旅行者にとってのお目当てのひとつ。
まずはそんな寿司のルーツのお話から。
日比野「そもそも日本で生まれたものではないんですね」
いきなり衝撃の事実が明らかになりました。
つボイ「よく『フジヤマ、スシ、ゲイシャガール』なんて言われましたけどね」
現在一般的な酢を使った握りスタイルの寿司は日本の発祥だそうですが、そもそもの寿司は酢を使う料理ではなかったそうです。
塩漬けした魚をご飯に漬け込み発酵させ、長期保存するための加工方法であったため、発酵後のご飯は捨てられていたのだとか。
日比野「これは実はタイの北東部やラオス辺りが発祥の地だと言われておりまして、それが中国を伝ってやがて日本に伝来したという流れがあるんですね」
日本でお馴染みの寿司は、実は東南アジアからやって来たものでした。
魚と米が馴れることから
小高「発酵させたお寿司っていうと、『なれずし』っていうのがありますよね」
つボイ「琵琶湖の『鮒ずし』に似てるよね」
なれずしは先ほどの方法で魚を発酵させた料理で、日本各地に郷土料理として残っています。
つボイが触れた「鮒ずし」も、なれずしのひとつ。独特な風味と匂いがあるのが特徴で、保存食として食べられるほか、特別な日のご馳走としてもふるまわれてきたのだとか。
小高「私たちが『お寿司』と聞いたときに一番最初にイメージする握り寿司っていうのは、ずいぶん後にできたってことなんですか?」
日比野「寿司の仲間の中では一番新しくて、だいたい今から200年くらい前の江戸の町で生まれたものです」
つボイ「ここから日本人の工夫が始まるわけですね」
江戸時代になって米酢の生産や流通が盛んになったことをきっかけに、酢を使った寿司が誕生したようです。
ちょっと酸っぱい
なれずしは乳酸で発酵させた食品なので、どことなくチーズやヨーグルトなどと似た酸味を感じさせる香りが特徴です。
少し癖のある味がするようなので、人によっては好みが分かれるかもしれません。
つボイ「東南アジアとかあっちの人たちは、なれずしも抵抗なく食べられるんでしょうか?」
日比野「食べられるんですよ。実際に鮒ずしを買ってあちらの方へ持って行って食べていただきましたが、美味しそうに食べてましたよ。田舎の方へ行きますと今でもたくさん作ってますし、スーパーでも売ってます」
なれずしのように発酵させたお寿司は、現在の日本ではメジャーではありません。郷土料理として、文化に親しむ意味合いで食べられることの方が多いかもしれません。
東南アジアでは今でも、なれずしがポピュラーなものとして食べられているようです。
地域の特色
リスナーからは、この地方ならではの「寿司」について投稿が届せられました。
「僕の生まれ故郷の岐阜の中津川では、寿司といえば『朴葉寿司』でした」(Aさん)
各地域で伝統的に作られてきた、昔ながらのお寿司がもっと親しまれていたようです。
つボイ「僕らの小さい頃は箱寿司や押し寿司を食べてましたね」
つボイの故郷である愛知県一宮市では、川で採れる魚などを使った箱寿司が食べられていたそう。
小高「私は祖父母の家が徳島ですけど、お寿司にはスダチの酢が使われてて。甘酢じゃないから甘さが一切ないの。こども心にはあんまりおいしくなかったな(笑)」
すだちは徳島県を代表する果物で、江戸時代からすでに食酢用の果実として栽培されていました。
回転寿司が普及する前は、それぞれの地域で採れる素材や食材を生かした個性豊かな寿司が作られていたようです。
海外からの技術をもとに、長い年月をかけて日本を代表する食文化として定着した寿司。
ルーツをよく知ることでより美味しくなるかもしれませんね。
(吉村)