歴史のある老舗旅館の承継がとん挫した理由は
少子高齢化などにより、後継者難が中小企業や小規模事業者の大きな経営課題の一つとなっており、元気なうちに資産の管理や次世代へのスムーズな承継を考えるための資産の終活を専門家に聞いてみました。12月11日放送の『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツ」では、関西の老舗旅館の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が、三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。
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今回藤原さんは、関西の老舗旅館の承継事例を紹介しました。どのような旅館だったのでしょう?
藤原「関西の有名温泉街にあり、創業は100年以上の老舗旅館」
100年以上の歴史を持った旅館がなぜM&Aをしたのでしょう?
藤原「オーナーさんには息子さんも娘さんもいらっしゃったんですが、お二人とも事業を継承しないという意思を明確に示されていた」
北野「小さい時からずっと見てきて、しんどいの分かっているからね(笑)」
藤原「部屋数も10室をきるくらいなんで、ちょっと小ぶりなんですよね」
以上のような理由から3年ほど前から承継先を探していたそうです。
北野「そこで、(藤原さんの所属している団体)経営承継支援に相談が?」
藤原「そうなんです」
藤原さんはオーナーと初回面談を経て、預かった老舗旅館の資料を基に、旅館の事業や財務の状況を買い手に伝えるため案件概要書を作成し、マッチング活動に入りました。
売り手と買い手の相違点
買い手はすぐに見つかったのでしょうか?
藤原「最初は、有名な温泉街というのもあって大手ホテルチェーンさんが興味を示して、トップ面談まで進んだ」
ホテル業界でもトップ企業であったため、資金面において懸念もなくブランドとしても申し分なかったので売手にとっても非常に期待値が高い案件だったそうです。
北野「では、そのホテルチェーンさんが買い手に?」
藤原「ところが、小規模であったため一度取り壊し、買手が運営する高級ブランドの旅館に作り直す構想だったので買収後の計画立案などを含む社内検討に相当の時間を要しました」
最終的に敷地面積などが問題で採算見通しが立たず、見送りとなったのです。
北野「売り手もショックやな」
老舗ならではの問題
その後、老舗旅館の承継問題はどうなったのでしょう?
藤原「なかなか個人が買うには値段が張っていたので、見送りから1年が経とうとしていたところ、今回の買い手となった」
関西の不動産会社が、対象旅館に強い関心を持ったので、トップ面談を行い「話を進めたい」との意向をもらえたと藤原さん。
北野「そのあとはスムーズにいったんですか?」
藤原「はい。最終的に成約となりました」
とはいえ一方で、売手のオーナーが温泉街の組合の重役を務めていたこともあり、温泉街の老舗旅館を営むオーナーとして、「半端な買手へ譲り渡すことはできない」という考えから、周りとの調整や取り決めなどがあり、すんなりと契約できたというわけではなかったようです。
北野「老舗だからこその大変さはあったんですね。でも成約となってよかったですね」
今回は、温泉街特有の取り決めなどで頓挫しましたが、承継時にはさまざまな交渉事が出てくるものです。なるべく早めに相談してほしいと促す藤原さんでした。
(野村)