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問題視する声が続出!「食料供給困難事態対策法」が危険とされる理由

問題視する声が続出!「食料供給困難事態対策法」が危険とされる理由

昨年6月に可決成立した食料供給困難事態対策法が来月から施行されます。異常気象や国際情勢の悪化などにより米や麦の主要な食料が不足した場合、その深刻度によって生産や出荷の調整を要請、指示できるというものです。ABEMA TIMESによれば、この法律への反発がSNS上で巻き起こっているとのことですが、どのような点が問題視されているのでしょうか?3月22日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、国会審議で参考人として意見を述べた近畿大学農学部名誉教授の池上甲一先生が、この法律について解説しました。

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食料供給困難事態対策法とは

池上先生はまず「食料供給困難事態対策法」がどのような法律なのかを説明しました。

これは食料の供給量が少なくなってしまった場合、政府が対策本部を設けて安定供給を確保するというもの。
食料供給が減りそうな兆候がある段階と、大幅に減った困難事態という2つの段階に分けて対策を考えます。

対象となる食料は米や小麦、大豆に加え、政令には油や砂糖、生乳、肉類、卵なども含まれています。

農協や販売業者、輸入業者、農家や農業法人、食品企業などが法律の対象となっている一方、現状では花や果樹は対象外となっています。
しかし施行規則では対象が「農林生産物生産可能業者」と規定されているため、結果的に対象となる可能性があります。

法律が制定された背景

このような法律を制定した社会的な背景として、一般的に日本の地政学的リスクが挙げられています。

ロシアのウクライナ侵攻により小麦の国際価格が上昇しましたが、それ以外でも大きな山火事や干ばつ、洪水などといった災害、コロナ禍で物流が止まるなど、さまざまな外的要因が挙げられる中、食料不足のリスクが高まっています。

しかし、この法律で最も批判されている点について、池上先生は「計画の指示に従わない場合は罰金。報告を拒否すると科料が課せられるのが問題」と指摘しました。

法律の大きな問題点

日本国憲法の第22条には職業選択の自由が規定されています。
その中に営業の自由が含まれると考えられるため、食料供給困難事態対策法は憲法に抵触するのではないかという意見があります。

そのため、農林水産省は「自発的な意思を尊重する」と答えているものの、罰金や科料が設定されている以上、実際には従わざるを得ないのではないかという懸念があります。

さらに池上先生は、コロナ禍の時に営業していた飲食店に批判が殺到していた時と同じようなケースが起こりかねないと指摘します。
例えば「こんな事態なのに食べ物を作っていない農家はけしからん」といった批判が起きかねないといいます。

法律のメリット・デメリット

さらに現在の日本では有事法制に食料不足への対処は記載されておらず、食料供給困難事態対策法がそれを補うものとして利用する危険性も指摘しました。

現在の米不足はどこで流通が止められているのが原因かわからないということがあります。そこでこの法律によって立ち入り検査や流通統制などがしやすくなり、流通の状況を押さえやすくなるメリットはあります。

ただ、池上先生は「営業への介入や配給などといった危険性はある、ということを知っておいていただきたい」と続けます。

法律が発動しないためには

この法律に対して池上先生は参考人として国会審議に出席されましたが、法律が成立した今、どのように感じられているのでしょうか?

池上先生「本当は廃止が一番いいんですけど、でも今できてしまっているので。そうすると、この法律を発動しないようにすることが一番大事だと思うんですね」

池上先生はあらためて平時に国内でしっかり生産を強化することが大事と説きます。
減反政策の方針転換や農家への支払をしっかりと行なうこと、そして消費者側からすると安く買えることを期待しすぎずにムダを出さないことなどが大事とまとめました。
(岡本)
 

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